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公益財団法人日本ユニセフ協会
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エボラ出血熱緊急募金 第22報
エボラ出血熱・リベリア
一軒一軒訪ね歩いて住民の元へ
命を守るため、予防法を広める“サポーター”

【2014年8月27日 リベリア発】

エボラの予防法に関するポスターを見る女の子たち。(リベリア)
© UNICEF/NYHQ2014-1020/Jallanzo
エボラの予防法に関するポスターを見る女の子たち。

エボラの感染拡大が続くリベリア。ユニセフ・リベリア事務所広報官のキャロリン・マリエ・キンデランが、感染拡大を阻止するためにコミュニティレベルで行われている啓発活動を紹介しています。

* * *

リベリアの首都・モロンビアにある、人口密集地域ニュー・クル・タウン。雨季の激しい雨が降る中、アンソーニー・ヴォークポールさんは長靴を履き、エボラ啓発用のポスターと冊子を手に、今日も町を訪れます。

住民の“サポーター”

リベリアでは今年3月以降、エボラの死亡者が1,000人以上に上っています(9月5日時点)。エボラと闘う最前線の支援従事者は、感染者が多数報告されている地域で、感染拡大を阻止するための重要な役割を担っています。エボラの予防手段を身につけられるように住民を支え、後押しをするアンソニーさんのようなボランティアは、住民の“サポーター”と呼ばれています。

“サポーター”のアンソニーさん(右)と啓発活動を行った若者のリーダー、リー・ウェレーさん(左)。(リベリア)
© UNICEF/ Liberia/2014/Carolyn Marie Kindelan
“サポーター”のアンソニーさん(右)と啓発活動を行った若者のリーダー、リー・ウェレーさん(左)。

感染の中心地となっているロファとモンセラードでは、現在100を超えるサポーターや啓発活動を行うスタッフが一軒一軒訪ね歩き、戸別訪問を実施しています。これらのチームはコミュニティと協力して、住民の認識の向上、話し合いの促進、恐怖の緩和、誤解の解消、予防法の普及を行っています。

“サポーター”は、情報を伝えているだけではありません。住民が十分に情報を理解することができているか、確認も行っています。住民がサポーターの質問に正しく答えることができない場合、理解が得られるまで繰り返し説明を行います。サポーターは数カ月間、同じコミュニティで活動を行います。そうすることで同じ家庭を繰り返し訪問することができ、重要なエボラの啓発メッセージを覚えているか、エボラから身を守り、感染を予防するための習慣や行動を取っているかなど、各家庭の様子を確認することができるのです。

一軒一軒足を運んで住民のもとに

感染が再び拡大した5月末以降、リベリアの15県中12県で、1,300人以上の感染の確認・推定・疑いが報告されています。エボラは国民や子どもたちに甚大な影響を及ぼす病であることを踏まえ、ユニセフは保健福祉省と密接に協力し、感染拡大を阻止するための支援に尽力しています。

技術的な専門知識や必要不可欠な物資の提供に加え、エボラに関する噂や誤解を解消するための支援が緊急に必要とされています。そのためには、コミュニティレベルでの活動が必要不可欠です。ユニセフはリベリアの各コミュニティに啓発チームを派遣し、一軒一軒訪ね歩いてエボラに関する啓発教育を行うため、より幅の広いパートナー団体の協力を得て活動をしています。コミュニティ開発の支援を行う団体に所属するアンソニーさんも、そのうちのひとりです。

「感染が拡大するまで、エボラについて知りませんでした」と、ニュー・クル・タウンの若者のリーダー、リー・ウェレーさん(19歳)が語ります。「保健省の職員が、町の若者のもとに話をしにやって来ました。若者の間でエボラの認識を高めるためです。職員の話を聞いて理解した人もいましたが、『エボラはリベリアでは起こっていない』と、信じない人もいました。その後、“サポーター”の人たちがやって来ました」

サポーターの協力の下、リーさんを含む若者のリーダーたちは、エボラの感染は現実に起きていることなのだと、地域の若者たちに説得することができました。アンソニーさんは、ユニセフによって制作されたエボラ啓発用ポスターと冊子を利用することで、啓発活動を効果的に行うことができると語っています。啓発用の冊子では、エボラの症状や感染経路、個人や家族を感染から守るための予防法などが、イラストや簡単なリベリア英語を使って説明されています。

人と人とのコミュニケーションを通じて

エボラ啓発用冊子を手にするニュー・クル・タウンの住民。(リベリア)
© UNICEF/ Liberia/2014/Carolyn Marie Kindelan
エボラ啓発用冊子を手にするニュー・クル・タウンの住民。

サポーターは、住民と一緒にこの冊子に一枚ずつ目を通し、命を守るための情報を伝えています。住民のコメントや質問にも丁寧に答えていくため、時には1時間以上かかることもあります。

この徹底した一対一の心が通ったコミュニケーションが、サポーターが活動をするコミュニティに変化をもたらしています。長い間ニュー・クル・タウンで暮らしているビクトリア・ウェッシェさんは、初めてニュースでエボラについて知った時、恐怖を感じるとともに、エボラが本当に存在するとは信じられなかったと言います。サポーターが3回以上ビクトリアさんの家を訪問して話をした結果、ビクトリアさんの不信感を拭い去ることができました。ビクトリアさんは、サポーターが命を守るための具体的な予防法を教えてくれたこと、そして彼らの粘り強い活動がきっかけで、考えを改めたと語ります。

「サポーターの人たちは、私たち家族をエボラから守るための方法を詳しく教えてくれました。そして、恐れず、診療所に行くように勧めてくれました。サポーターの活動が、私の心の中の疑念の気持ちを晴らしてくれたのです」

感染拡大阻止の鍵

適切な啓発活動と、人と人との触れ合いを通したコミュニケーション、そしてコミュニティで活動を行う勇敢なパートナーたちが、エボラの感染拡大を阻止する、大きな力になるのです。しかし、感染者数は増加の一途をたどっており、これらの活動をより拡大させる必要があるのは明らかです。

活動の経験をもとに、ユニセフは保健省やパートナー団体と協力して、戸別訪問で啓発活動を行う政府・非政府ネットワークを構築・コーディネートしています。そうすることで、リベリア中の人里離れた地域やエボラへの拒絶が残る地域に、住民の命を守るためのメッセージを伝えることができるようになるのです。

ユニセフは関係省庁と協力して、6県で1,250人の政府のコミュニティ保健ボランティアを訓練し、啓発活動を実施する予定です。エボラに感染した患者のための医療ケアが依然として限られ、治療法が確立されていない中、ボランティアによる国規模で行われるエボラの啓発教育が、エボラの感染拡大に終止符を打つ鍵となることでしょう。

■ 参考情報:エボラ出血熱感染者数ならびに死者数

WHO(世界保健機関)発表による情報です(2014年9月5日時点)。

ギニア感染合計812名 (確認604、推定152、疑い56)、死者517名
リベリア感染合計1,871名(確認614、推定888、疑い369)、死者1,089名
シエラレオネ感染合計1,261名(確認1,146、推定37、疑い78)、死者491名
合計感染総計3,944名、死者総計2,097名、致死率53%

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