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公益財団法人日本ユニセフ協会
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東日本大震災復興支援 第241報
復興するまちの「大切な場所」

【2014年8月2日 大槌町発】

岩手県の山奥から、県東半部を中心に広がる北上山地にほぼ並行して太平洋に注ぎ込む大槌川と小鎚川。このふたつの川が形成する緑豊かな大槌の里山全体を「子どもたちの遊び場」をしてしまう「さとやままるごとプレーパーク」。その企画第一弾の「冒険遊び場」が、8月2日(土)、小鎚川沿いの私有地をお借りして開催されました。

深刻な遊び場不足

© 日本ユニセフ協会

震災直後、深刻化したのが子どもたちの“遊び場”の問題です。新たな宅地や商業地の確定すらままならない被災地の多くでは、発災から3年半を迎えようとしている今も遊び場が足りず、深刻な状態が続いています。

“遊び”は、子どもたちにとって、単なる“余暇”ではありません。“遊び”は、子どもたちが人として成長するために、他人や社会との関係を学ぶために欠かせないものなのです。

日本ユニセフ協会では、「子どもが“遊び”をつくる遊び場」=プレーパークや、子どもが“遊び”をつくる道具を載せたワゴン車=「プレーカー」の出前活動 などを通じて、全国各地で子どもたちに遊びの機会づくりの活動を続けている日本冒険遊び場づくり協会と協力。2012年から、岩手県の被災地などで、常設 の遊び場を失った子どもたちに遊べる場所=子どもたちの居場所を提供する活動を続けています。

大槌町での取り組み

2012年5月、大槌地区と小槌地区2カ所の仮設住宅団地のサポートセンター隣接地に完成した遊び場。
© 日本ユニセフ協会
2012年5月、大槌地区と小槌地区2カ所の仮設住宅団地のサポートセンター隣接地に完成した遊び場。

岩手県大槌町では、地域整備部管理用地課が中心となり、公園(遊び場)づくりを推進。日本ユニセフ協会も滑り台などの遊具を提供し、2013年までに、小規模ながら、3カ所に遊び場が整備されました。こうして確保された貴重な子どもたちの居場所ではありましたが、新たな遊び場は、全て仮設住宅や駐車場に隣接。家も園舎も校舎も商店街も、身の回りのものが全て「仮」の姿の中での生活を強いられ続けている子どもたちに、もっとおもいっきり遊びまわれる場所を作りたいと、地域の方々が中心になって、何カ月も掛け場所や企画を検討。町(行政)との協議を重ね、「さとやままるごとプレーパーク」の開催が実現しました。

里山に突然現れた“遊び場”

© 日本ユニセフ協会

第1回「さとやままるごとプレーパーク」の舞台となったのは、岩手県遠野市を拠点に活動するボランティア団体が、地域の方々とつくっている農園と、河川敷・道路を挟んで農園の向かい側にある木工所。農園には、木からロープと板をぶら下げたブランコや、木立を丈夫なロープで結んで作った巨大な蜘蛛の巣状のネット、川から水を引いて作った小さなプールなど、すべてボランティアさんたち手作りの“遊び道具”が用意されました。

© 日本ユニセフ協会

里山に突然現れた“遊び場”。今日は、どんなに大きな声を出しても、走り回っても、泥だらけになっても、水浸しになっても、誰からも怒られません。「どんな場所なんだろう?」と、ひとりで探検し始める子もいれば、いきなり友達と走り回り始めたり、木工所の木材で作ったコマで、おとなとの真剣勝負に挑む子も。川では、ビニールボートで川下り。ちょっと疲れたら、木陰で、手作りの木製ゲームを相手に、ちょっと一休み。午後は、焚火を囲んでパン作り。そのうち、近くの仮設住宅からお散歩に出ていらしたお年寄りも足を止め、「私もハンモックで寝てみたい」「楽しそうだな」と、子どもたちと笑顔でお話をされる姿もありました。

夏休みのひと時、思い思いの遊びに興じた20名を超える幅広い年齢の子どもたち。お父さんに連れられ、“オープン”と同時に弟とやってきた男の子は、終了時間が過ぎても遊びをやめようとしません。「もう、ここに住もうと思った」なんて言ってくれるほど、この場所と時間を気に入ってくれたようです。

復興するまちの「大切な場所」になるように

© 日本ユニセフ協会

「ブランコ」と「蜘蛛の巣」は、今回、敷地所有者の許可を得て、そのまま残しておくことになりました。「『今日遊んだ子どもたちが、今度はお友達を連れてまた遊びに来て、それを地域のおとなが見守る』、そんな姿を取り戻したい」と、地元の方は話します。

大槌町の「さとやままるごとプレーパーク」活動は今後も継続されます。次回は10月。そして12月には、大槌に古くから伝わるお正月飾り作りをメインメニューにした企画が準備されています。

日本ユニセフ協会も、子どもたちがおもいきり安心して過ごせる場を提供するこの活動が、一過性のイベントに終わらず、復興していく大槌にとって、何よりも大槌の子どもたちにとって“大切な場所”となるよう、地域の方々の取り組みを支えてまいります。

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