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シリア緊急募金 第144報
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© UNICEF Syria/2014 |
早すぎる結婚の劇を演じる少女たち。 |
物静かで控えめな印象のアイシャ(仮名)さん。しかし、一度話をし始めると、信念を持ったアイシャさんは、機知に富んだ会話でその印象を一変させます。
10月11日の「国際ガールズデー」にヨルダンのザータリ難民キャンプで行われた式典にあわせて、アイシャさんははっきりと「もう少しで母親に結婚させられるところでした。必死に抵抗して、ここにいる先生たちの力を借りて闘いました。そして、婚約パーティの前日に、ようやく結婚を免れたのです」と語りだしました。
アイシャさんと友人たちはこの式典で、難民キャンプで暮らす幼い少女たちが日々経験している言葉の暴力や近隣での差別、児童労働、早すぎる結婚に関する意識啓発の活動を行いました。テーマは「暴力の連鎖を断ち切るために、10代の少女に力を」−子ども・家族センターで行っている活動と連動した内容です。
15歳のアイシャさんは、紛争でシリアから逃れ、ヨルダンの難民キャンプに身を寄せている何千もの少女のひとりです。キャンプに暮らす家族の中には、娘に早すぎる結婚をさせることが、娘と家族の尊厳を守る唯一の手段となっています。
結婚のために学校を中退しなければならないという現実に直面し、アイシャさんは絶望的な気分になりながらも、なんとか自分の置かれている状況を切り抜けられないか考えました。そのとき、「子どもと青少年にやさしいセンター」で参加した講座のことを思い出したのです。
「先生の一人が、権利と責任についてくわしく話していたのを思い出したんです。先生のところに行き、母に教育の重要性について話してほしいとお願いしました」と語るアイシャさん。
相談を受けたシャサ・アフマッド・アル・マシャクベフさんは「アイシャさんの母親を訪ねて話をしましたが、激しく抵抗されました。長い時間をかけて、早すぎる結婚がもたらす負の影響について話し、理解してもらいました。早すぎる結婚をしたアイシャさんの姉二人が、結婚生活に慣れるのに苦労していることも、指摘せざるを得ませんでした」と語りました。
アイシャさんは、ユニセフの支援を受けてザータリ難民キャンプでNGOが運営する14の「子ども・家族センター」のひとつに通っています。毎日、各センターには100人ほどの子どもたちがやってきます。午前中は少年たち、午後や放課後は少女たちが集います。
センターは、学校以外で子どもたちが安心して過ごせる場所を提供していることに加え、子どもたちの心のケアや、基本的な読み書きや計算などの公教育外教育のプログラムも行っています。
ユニセフ・ヨルダン事務所の子どもの保護専門官フランク・ロニは「すべてのセンターでは、子どもたちが日々直面する問題の対処法に関する知識やライフスキルを伝え、子どもたちが力をつけるために、意識プログラムや勉強会を行っています。これはとても重要なことです」と述べました。
難民キャンプで子どもの保護に関わっているシリア難民のボランティアによる子どもの保護委員会の支援を受けて、子ども・家族センターは「学校に戻ろう」キャンペーンも実施し、少女たちに早すぎる結婚を受け入れずに、学校へ通うよう呼びかけました。キャンペーンに積極的に参加したアイシャさんと友人たち。アイシャさんは「私たちのメッセージはとてもシンプルです。幼い少女の最大の武器は教育です。教育は銃よりも強し、です」と話しました。
ユニセフがヨルダンで最近行った早すぎる結婚に関する調査によると、シリア危機によって、特に学校に通っていない少女たちは、早すぎる結婚を強いられる状況にあることが明らかになりました。
アイシャさんは、将来エンジニアになって、いつの日かシリアに戻り、国の再建に携わりたいと考えています。その目標に向かって、すでにアイシャさんは歩み始めています。