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シリア緊急募金 第151報
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© UNICEF Syria/2014 |
ハレドくん(支援前) |
紛争が続くなか、一家は自宅からの避難を余儀なくされ、収入もなく、先の見通しが全く見えない中での生活を強いられました。ハレドくんの母親は、精神的なストレスを感じていました。
「生活が厳しくなり、母乳が出なくなってしまいました。とても心が痛みました。私たち家族の人生を一変させたこの危機を何とか乗り越えようとするなか、常に頭によぎるのは、この4人の娘と3人の息子をどうやって食べさせていったらいいのだろう、ということでした」と、母親が語ります。
母乳が出なくなり、必要最低限の食料さえも手に入れられないなか、ハレドくんは1年以上にわたって慢性的な下痢や脱水症状に苦しみました。両親はハレドくんの身体に何が起こっているのかも、誰にどうやって助けを求めたらいいのかも分かりませんでした。
3歳になったハレドくんの体重はたった6kgと、まさに骨と皮だけのような状態でした。適切な栄養を摂取し、避難生活によるストレスの影響を受けていないこの地域で暮らす子どもの体重は、13kgほどです。ユニセフのパートナー団体により、ハレドくんは重度の急性栄養不良であるとともに、慢性的な栄養不良、発育阻害に陥っており、命に関わる状態だと診断されました。
ユニセフのパートナー団体は7カ月以上にわたってハレドくんのケアを行い、母親には栄養面での支援や薬の提供、アドバイスなどを行いました。その結果、ハレドくんの体重は6キロから11キロにまで増加しました。
© UNICEF Syria/2014 |
ハレドくん(支援後) |
しかし残念ながら、ハレドくんのようなケースは稀だと言わざるを得ません。「終わりが見えない紛争のなか、危機以前から懸念されていたシリアの子どもたちの栄養状態は、悪化の一途をたどっています。栄養のある食料が入手できないことや食料価格の上昇、食料生産の崩壊が、シリアの子どもたちの栄養状態に壊滅的な影響を与えています。特に子どもたちと女性の健康状態や栄養状態は、ますます危うい状態になっています」と、ユニセフ・シリア事務所代表のハナア・シンガーが語ります。
最近発表されたシリア保健省の報告書によると、シリアの5歳未満の子どもの全体的な急性栄養不良率は7.2%となっています。そして、ユニセフが支援している、シリアの国内避難民の家族に関する調査では、22%ものシリアの子どもたちが発育阻害に陥っていることが報告されています。
2014年、ユニセフはアラブ首長国連邦などから支援を受け、50万人の子どもに栄養不良の検査を実施することができました。子どもたちへの早急な治療や、必要不可欠なビタミンやカルシウムが豊富に含まれる、すぐ口にすることができる栄養補助食の提供も行っています。また、母親を対象にした研修を行い、子どもの栄養不良を予防するための対応方法や食事の与え方などを伝えています。栄養不良に関する支援を必要する子どもの人数の増加に対応するため、パートナー団体を通して治療施設にも支援を届けています。しかし、通常の機能を果たせている病院は、全体の43%に留まっているのが現状です。