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エボラ出血熱緊急募金 第60報
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© UNICEF Liberia/2015/Ryeng |
リベリアのモンロビア郊外に位置するディスコ・ヒルの共同墓地。2014年12月の設立以来、この地に350人以上のエボラ犠牲者が安全に埋葬されている。 |
「タワー・ヒルを越え、ロバーツフィールド高速道路沿いに走ります。アンブッシュ・カーブを過ぎたらすぐに 右折。そのままディ スコ・ヒルまで数百メートル進むと、間もなく見えてきます」
そこはリベリアの最も新しい共同墓地、350人以上が尊厳と安全性をもって埋葬されている場所です。
遺体安置所のテントでは、防水シートで覆われた3台のベッドと患者昇降用のホイストが、設置されています。そこに、リベリア赤十字のサインを付けた白いトラックが到着しました。降りてきたのは、頭からつま先まですっぽりと覆われた白い防護服、三重の手袋、分厚いゴム製のブーツとゴーグルをまとった6人のチームです。彼らは、エボラで犠牲となった30歳の男性の遺体を包み込んだ特別な袋を、ホイストを使って丁寧に持ち上げ、ベッドの上にそっとのせます。手袋をした手で、袋のしわを整えます。
© UNICEF Liberia/2015/Ryeng |
遺体をトラックから遺体安置所のテントまで搬送する準備として、 埋葬チームのメンバーが防護衣類の着用を手伝ってもらっている。 |
遺体を聖なる大地に埋葬する慣習は、リベリア文化と深く根付いています。しかし、この埋葬儀式のなかで人々が遺体と接触するため、エボラ感染を広める大きなリスクとなっています。
エボラ流行のピーク期には、埋葬場所の不足とエボラ・ウイルスの感染リスクのため、リベリア政府は、全ての遺体を埋葬ではなく火葬にするよう命じました。
すると、秘密裏に行われる埋葬の数が増加しました。埋葬される遺体にはエボラの犠牲者も含まれていたため、同時に、エボラ・ウイルスの感染も広がりました。伝統的な慣習にのっとり、尊厳をもって、遺体を洗って身なりを整えることを行った親族らが、エボラに感染したのです。
遺体を隠して、秘密裏に埋葬を行う慣習をやめさせるたった一つの方法は、安全かつ統制の取れた方法で、遺体の埋蔵を公に再開することでした。リベリア政府は、遺体の埋葬は、特別に訓練を受けた埋葬チームによって実施されなければならない、と命じました。ディスコ・ヒル地域は、その土地の一部を最後の安息の地として差し出したのです。
遺体を埋葬するための安全な場所の確保は、最初の一歩にすぎません。安全な埋葬を進めるにあたって絶対的に必要なのは、人々がエボラの感染原因を認識し、家族のだれかが病気になったり亡くなった時に、保健施設に確実に連絡を入れてもらうことなのです。
ユニセフは、だれかが亡くなった時に支援を求めることの重要性や、安全な埋葬の必要性、そして、いつどのように安全な埋葬が行われるかを発信していく取り組みを、共同で主導しています。
ユニセフは、リベリア全土の人々の認識を向上させるため、戸別訪問をして啓発カードを配る啓発活動を支援しています。ユニセフ制作の安全な埋葬についてのラジオドラマ2本も、ラジオ局で放送されました。
努力は実ってきています。だれかが亡くなった際に埋葬チームに連絡を入れる家族の数は増加し、埋葬の慣習に因るエボラ感染に歯止めがかかっています。秘密裏に行われていた埋葬は依然として行われてるため、ユニセフはこれからも引き続き安全な埋葬を促進していきます。
© UNICEF Liberia/2015/Ryeng |
埋葬チームが遺体を最後の安住の地へと搬送する。チームの後ろには、地面を塩素スプレーで消毒する者が控える。 |
パーゴラ(木製の日陰棚)下の待合所から、新しく掘られた墓所に家族が導かれます。腕を激しく動かしながら泣き叫ぶ女性の肩を、年配の男性が支え、その男性も静かにすすり泣きしています。埋葬チームが遺体の入った袋を持ち上げ、注意深く、埋葬用の穴の中に入れている様子を、家族が周りで見守っています。埋葬チームの一人は、チームが歩いてきた地面を塩素スプレーで消毒しています。
埋葬チームは埋葬用の穴の中に丁寧に遺体を置くと、家族が別れの時間を過ごせるよう、後ろに下がりました。その後、他の埋葬チームが場所を埋めることになります。
安全な埋葬は終わりました。家族は愛する者に尊厳をもって眠りにつかせることができ、男性を死に追いやったウイルスは、悲しみに暮れる家族を攻撃することなく封じ込められたのです。
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