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公益財団法人日本ユニセフ協会
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エボラ出血熱緊急募金 第71報
シエラレオネ
妊娠中にエボラ感染、回復し無事出産
国の将来を築く、ユニセフの栄養支援

【2015年4月7日フリータウン(シエラレオネ)発】

生後1カ月のモーセちゃん。モーセちゃんがまだおなかの中にいたとき、母親がエボラに感染した。
© UNICEF Sierra Leone/2014/Romero
生後1カ月のモーセちゃん。モーセちゃんがまだおなかの中にいたとき、母親がエボラに感染した。

ぽっちゃりした健康的な体つきと大きな目が特徴のモーセちゃんが、笑顔でお母さんを見つめています。未来への可能性に満ち溢れたこの男の子は、まだお母さんのおなかの中にいた5カ月前、命の危険に晒されていました。母親のイサツさんが、エボラ出血熱に感染してしまったのです。

「エボラに感染していると告げられ、不安に苛まれました。家族みんなが心配していました。寒気を感じ、体中が痛くてたまりませんでした。おなかの中の赤ちゃんもエボラに感染してしまうのではないかと、心配でした」と、イサツさんが話します。

イサツさんが不安に感じるのも、無理はありません。エボラに感染した妊婦とおなかの中の赤ちゃんの両方がエボラから回復を遂げたというケースは数件しか報告されておらず、特に絶望視されていたのです。

たとえエボラで命を失うことがなくとも、次なる課題が待ち受けています。エボラ・ウイルスは時として、エボラ回復者の母乳にも含まれていることがあるのです。そのため、母乳の検査が不可能な場合、8週間は母乳育児を控えなくてはいけません。人生の最良のスタートを切るために十分な栄養を必要とする乳幼児にとっては、健康を危険に晒す、深刻な問題です。

4カ月前に無事出産を終えたイサツさん。モーセちゃんはエボラに感染していませんでした。

豊かな国を築く、強い基盤

4カ月になったモーセちゃんと両親。エボラ回復者の母親は、モーセちゃんに母乳を与えることができなかった。
© UNICEF Sierra Leone/2015/Francia
4カ月になったモーセちゃんと両親。エボラ回復者の母親は、モーセちゃんに母乳を与えることができなかった。

よい栄養の基盤を築くことは、子どもたちの身体的、精神的、そして社会的発達に必要不可欠です。きちんと栄養を摂取することができた子どもたちは、学んだり、感染症に打ち勝つ力をつけることができます。これは、エボラという保健危機に直面している場合、特に重要です。幼少期の適切な栄養摂取は、子どもの頃だけでなく、おとなになってからもよい影響をもたらします。子どもの栄養は、よりよい国を築いていくためにも重要なのです。

「あらゆる国にとって、栄養は人的資本の発達の、最も重要な要素の一つです。子どもの栄養への支援は、保健や教育、そして質の高い労働力の確保という観点から見ても、後々の費用の削減に、大きな効果をもたらします。豊かで発展した国を築き上げるには、適切な栄養を摂取した健康な国民が必要です」と、ユニセフ・シエラレオネ事務所ファラジャ・チウィリ栄養部長が語ります。

エボラ危機下の子どもたちへの栄養支援

シエラレオネでは12.9%の子どもが栄養不良に陥っており、栄養に関する課題を抱えています。また、乳幼児の母乳育児は子どもに悪い影響をもたらすという考えも古くから伝えられています。

ユニセフはエボラで困難な状況に置かれている子どもたちに栄養面での支援を行うため、母親や赤ちゃんに対するさまざまな取り組みを行っています。ユニセフはシエラレオネ保健・衛生省の主要なパートナーとして、子どもの生存と発育に必要不可欠な支援を行うため、エボラ危機に対応するための政策の立案支援や保健員の研修に取り組んでいます。また、保健センターやエボラ待機センター、エボラ治療センター、隔離が必要な家庭に栄養支援物資を配布し、最も支援を必要とする子どもたちに支援を届けています。

エボラ危機への支援として、ユニセフは、16カ所のエボラ治療ユニット、47カ所のエボラ待機センター、7カ所のエボラ治療センター兼エボラ待機センター、12カ所の一時ケアセンター、31カ所の地域ケアセンターに、栄養支援物資を直接提供しています。

エボラのケアを提供するセンターや隔離されている家族、親を亡くしたり家族と離れ離れになった6カ月未満の子どもに支援を提供するため、地区の医薬品店に栄養支援物資が前もって備蓄されてました。ユニセフは今回の危機勃発直後から、すぐ口にできる乳幼児のための栄養治療食を278人の乳幼児に隔週で提供しています。

病院からの退院

モーセちゃんも、栄養支援を受けている子どもの一人です。イサツさんとモーセちゃんは病院から退院する際、2週間分の乳幼児用の栄養治療食を受け取りました。母乳育児が不可能な場合や、赤ちゃんが栄養を摂ることのできる安全な方法がない場合、この治療食が与えられます。

イサツさんは2週間ごとに保健センターに足を運び、栄養治療食を受け取り、モーセちゃんの身長と体重の測定を行っています。モーセちゃんが生後6カ月になる頃までには、健康に発育を遂げることができるよう、離乳食が開始されます。

「体調が回復して、とても嬉しいです。モーセも健康に成長しています」と、イサツさんが笑顔を輝かせました。

「モーセが長生きし、ずっと健康でいられるようにお祈りしています。私は教育を受けることができなかったので、モーセは教育を受けて、立派なおとなになってもらいたいです」

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