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ネパール大地震緊急募金 第22報
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4月、5月と2度の大地震に見舞われたネパール。何千もの人々が家を失い、保健所は廃墟と化しました。ユニセフは緊急に避難場所や医療ケアを必要とする若い母親たちのために支援を行っています。
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© UNICEF Nepal/2015/Sokol |
19歳のプレッティ・タミンさんと8カ月の娘、ラシミちゃん。 |
4月25日、19歳のプレッティ・タミンさんは、すぐ近くにあるお店で食べ物を買うため、ほんの少しの間、8カ月の幼い娘を寝かせたまま家を出ました。
ちょうどそのとき、最悪の事態が起こりました。
マグニチュード7.8の地震に見舞われ、プレッティさんが暮らすカトマンズ東部のドラカ地区、アランパー村に甚大な被害をもたらしたのです。プレッティさんは崩れようとするお店から駆け出し、赤ちゃんを助け出すために自宅まで全力で走りました。
「今までの人生で、一番怖い思いをしました。建物が揺れるなか2階に駆け上がり、泣き叫ぶ娘を見つけました」と、地震があった日を思い出しながらプレッティさんが話します。
プレッティさんは赤ちゃんを抱きかかえ、家から急いで逃げだそうとしましたが、外に出る前に、瓦礫が落ちてきて怪我を負いました。
そして数秒後、アパートが崩れ落ちました。
「どうやって逃げ出したのか、ほとんど記憶にありません。赤ちゃんを胸に抱き寄せて逃げ惑っていたところ、近所の人たちを見つけました。近所の人たちは私たちが死んだと思い、嘆き悲しんでいました。私には、子どもを守るという大切な使命があります。自分のことはどうなっても構いません。しばらく、傷を負っていることにも気づかず、痛みも感じませんでした」(プレッティさん)
その夜、更なる地震や地滑りを恐れ、プレッティさんは夫と娘と一緒に村を後にしました。暗闇の中3時間歩き、助けを求めてドラカ地区の最大の町、チャリコットに辿り着きました。
プレッティさん一家は、3日間バスの中で寝泊まりしなくてはいけなかったといいます。しかし、赤ちゃんが寒さで震えはじめ、病気にかかってしまいました。そこで、ビニールシートでテントを作ったといいます。
地震で亡くなった甥の葬式に参加するために夫が村に帰ったときには、プレッティさんと赤ちゃんは二人きりで過ごさなくてはなりませんでした。
© UNICEF Nepal/2015/Sokol |
生後6カ月の娘を抱く24歳の母親とユニセフが支援する避難施設で話をする18歳の看護師。 |
1カ月近く屋外での生活を強いられたプレッティさん。その後、ドラカ地区保健省の敷地内に設置されたユニセフが支援する避難施設に身を置くことができました。
プレッティさんが身を寄せているのは、4月25日と5月12日の地震で最も甚大な被害を受けた地域にユニセフが設置した、22の避難施設のうちの一つです。合併症を伴う妊婦や授乳中の母親、病院から退院したものの、帰る場所を失った母親や新生児のための施設です。
20歳のアユシャ・カーナルさんは、この避難施設で看護師として働いています。地震が発生した4月25日、アユシャさんはモンモハン記念教育病院で働いていました。「あの日のことは、決して忘れないでしょう。地震の被害に遭った人たちが、何百人も助けを求めて押し寄せました。残念ながら、救うことのできなかった命も多くありました。午後の1時〜4時の3時間で、少なくとも20人が死亡しました」
2度目の地震後、アユシャさんは大きな決断を下しました。「ドラカ地区でボランティアの保健員を探しているという情報を、フェイスブックで目にしました」と、アユシャさんが語ります。アユシャさんはユニセフのパートナーである公衆衛生省に連絡を取り、ボランティアで働くことを申し出ました。
「地震で最も甚大な被害を受けた人たちの力になりたかったのです」と、アユシャさんが語ります。
ダラカ地区の避難施設では、4人の若い看護師がボランティアで働いています。4人共、首都のカトマンズからやって来て、今はテントで暮らしているといいます。「後悔は一切ありません。とても多くのことを学んでいますから。私自身、自信が付いてきましたし、母親たちが自信を取り戻すための役に立てていると思います。この経験を、決して忘れないでしょう」(アユシャさん)
© UNICEF Nepal/2015/Sokol |
「ここにいると、守られていると感じます。赤ちゃんも安全です」とプレッティさんが語ります。 |
ユニセフは避難施設のためのテントを提供するだけでなく、家具や毛布、衛生キットや医療キットも提供しています。
「現地の保健員や訓練を受けた女性のコミュニティ保健ボランティア、社会啓発活動者によるネットワーク、そして、避難所で安全に過ごせる場所を必要としている若い母親たちの特定や照会の基本的な役割を担う国内・国際パートナー団体とともに活動を進めています」と、ユニセフ・ネパール事務所のインディラ・コイララ事業計画担当官が語ります。
「ここにいると、守られていると感じることができます。赤ちゃんも安全です。地震で何もかも失いました。でも、何よりも大切な、娘を守ることができました。私たちは命を失うことなく、安全な場所に身を寄せることができています。ですから、生活を建て直すため、どのようなことも乗り越えることができると思います」と、プレッティさんが話します。
すべてゼロからのスタートとなったプレッティさんですが、「光」という意味の名を持つ娘のラシミちゃんから、前に進むための大きな力をもらっています。
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