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公益財団法人日本ユニセフ協会
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シリア緊急募金 第161報
ヨルダン:
家族のために働くシリア難民の子どもたち
代替的教育で、すべての子どもに学ぶ機会を

【2015年6月11日 ヨルダン発】

農場で働く子ども。
© UNICEF Syria/2015
農場で働く子ども。

辺り一面に広がる朝靄を太陽の光がかき消し、不毛の大地のなかの、緑あふれる農場を映し出しました。1年中作物が実るこのヨルダン渓谷は、ヨルダンの食糧供給を支える地域です。そしてこの肥えた土地が、多くの仕事を生み出しているのです。

家族のために働く子どもたち

シリア中心部にあるハマ出身の12歳の男の子、スルタンくんが、テントの外に設置されているプラスチック製の給水タンクから水を汲んでいます。スルタンくんが暮らす仮設テントは、農場のすぐ隣です。紛争による危険が自宅のすぐ近くまで迫っているのを感じ、家族と共にヨルダンに避難してきたといいます。

スルタンくんは学校に通い、友達と遊び、宿題をするなど、ごく普通の子ども時代を過ごしていました。しかし、紛争と避難生活で、その生活が一変したのです。2013年6月にヨルダンに避難し、学校を辞め、家族が生きていくために必要なお金を稼ぐため、農場で働いているのです。

「トマトを育てています。収穫したり、箱を運んだりします。働くのは好きではありません。学校に行きたいです」と、スルタンくんが語ります。ヨルダンで暮らす3万4,000人のシリア難民の子どもが、学校に通えていません。そして、その多くは家族のために働いています。農場やお店、レストランなど、低賃金の労働市場ができあがっています。

ユニセフが他団体と協力して実施した調査によると、ヨルダンで暮らす学齢期のシリア難民の子どもの約半数が働いていることが明らかになりました。「生活はよくありません。シリアでは学校に通っていました。また、学校で勉強したいです」と、スルタンくんが語ります。

農場で働く子ども。
© UNICEF Syria/2015
農場で働く子ども。

スルタンくんが稼ぐお金は、家族の毎日の生活に必要不可欠です。しかし、スルタンくんは仕事に望んで就いたわけではありません。選択の余地はなかったのです。ユニセフ・ヨルダン事務所子どもの保護チーフのマハ・ホンシは、問題は複雑だと語ります。「多くの子どもたちは、本来おとながすべき役割を課されています。まだ幼い子どもたちが、家族を支えるのは自分たちの責任だと感じているのです」

すべての子どもに学ぶ機会を

シリアの紛争や難民危機が4年以上続くなか、支援にはイノベーションや創造性が必要だとホンシ子どもの保護チーフが語ります。「仕事に就いている子どもたちのための、よりよい支援の方法を見つけ出さなくてはいけません。また、たとえ公式の教育という形ではなくとも、子どもたちを学びの場に戻すことが必要です」

スルタンくんが暮らす仮設の住居近くにテントや基本的な物資が提供され、コミュニティ出身の先生も配置されました。スルタンくんは今後、何らかの形で基本的な教育を受けられるようになります。ユニセフはパートナー団体と共に、公立の学校に登録することができない子どもたちのため、代替的な教育の機会を提供しています。

2015年、ユニセフはあらゆる子どもたちのニーズに対応することができるよう、包括的な支援を実施しています。ヨルダンに200以上ある支援センターで、10歳〜24歳の子どもや若者が心のケアや代替的な教育、ライフスキルを得る機会を得ています。

代替的な教育やヨルダンで働く子どもたちのための支援は、ヨーロッパ連合、ドイツ政府、米国国務省人口・難民・移住局、カナダ政府、英国国際開発省、そして日本による資金提供で実施されています。

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