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公益財団法人日本ユニセフ協会

イエメン紛争
医療サービスが崩壊
壊滅的な人道危機に

【2015年6月18日 イエメン発】

新生児の世話をする保健スタッフ
新生児の世話をする保健スタッフ

イエメンの首都サヌアのアル・サビン病院では、連日、医師たちが多忙な日を過ごしています。マクタリ医師は、街の各地から搬送されてくる内科的合併症に苦しむ子どもや患者を治療するため、何時間も休憩をとらずに働き続けています。

病院に来られず、命を落とした妊産婦

「戦闘が勃発した最初の一週間で、出産時に合併症を発症したという連絡が3件もありました。しかしそのうちの2人は、戦闘や交通手段の欠如によって、すぐに病院に来ることができず、出血多量で亡くなってしまったのです」(マクタリ医師)

このような状況が、イエメン全土で起きています。医療サービスを求めるイエメンの人々が直面している困難は計り知れません。これまでに158の医療施設が閉鎖したことにより、47万人以上の5歳未満児が直接の影響を受けています。まだ業務を続けている医療施設でも、子どもたちの治療のための医薬品には限りがあり、絆創膏や注射器など極めて重要な医療物資が不足しています。病院や医療施設を維持するための燃料もほとんど残されていません。

「病院内では電力もありません。酸素ボンベもありません。このような状況下で、どうやって医療を続けられるのでしょう。麻酔薬はありますが、乳児用の保育器に酸素を入れることができません。機器を動かすための電力がない状況で、どうやって手術を行えるのでしょう?治療が必要な多くの患者を目の前にして、私はまるで腕を手を取られたような無力感に苛まれます」マクタリ医師は怒りを露わにしました。

壊滅的な人道危機

戦闘激化から3カ月近く経ち、イエメンは壊滅的な人道危機に直面している
戦闘激化から3カ月近く経ち、イエメンは壊滅的な人道危機に直面している

戦闘激化から3カ月近くが経った今、イエメンは深刻な人道危機に直面しており、人道支援を必要とする人の数は、2,100万人に上ります。ユニセフは、基礎的な社会サービスの急激な崩壊によって、250万人の子どもたちが下痢に、130万人が肺炎に陥る危機にあると発表しています。以前から中東地域で最も貧しい国の一つであったイエメンは、この紛争によって機能停止に陥りました。

「子どもたちは毎日、爆弾や市街地での戦闘などの、恐ろしい音によって目を覚ましています。さらに悪いことには、その子どもたちの多くが十分な食糧や安全な水が確保できずに栄養が不足しているにもかかわらず、本来であれば通うべき診療所や病院に行くことができていません」とユニセフ・イエメン事務所代表のジェレミー・ホプキンスが述べています。

3月以降、ユニセフはパートナー団体とともに、女性や子どもたちの命を守るため、不可欠な医療品や安全な水、衛生用品などの支援物資を定期的に届けています。そのなかには、手術用器具、注射器、医薬品、衛生キット、浄水剤などが含まれています。

しかしこれらは大海の一滴にすぎません。人道危機下で医療施設が続々と閉鎖されている状況では、国民の9割以上が求めている、燃料や食料品の商業目的の輸入制限が解除されない限り、数百万人の命が危険に晒されているのです。

戦闘による民間人の犠牲者が日に日に増加しているタイズ市にあるアルタウラ病院で、ここ数週間勤務しているアル・フサミ医師は、「この病院の産婦人科は、ほぼ日常的に行われる爆撃や戦闘による職員不足で、現在は閉鎖しています。しかしユニセフの支援によって、基礎的な医療用具を入手できているので、母親や子どもたちのケアをすることが可能となっています」と語りました。

* * *

イエメンの子どもたちやその家族の命を守るため、ユニセフは緊急支援として1億8,260万米ドルの資金を要請しています。要請額の内訳は、保健分野3,400万米ドル、水・衛生分野5,800万米ドル、栄養分野4,150万米ドル、保護分野1,260万米ドル、教育分野1,050万米ドル、緊急時の社会的保護分野2,600万米ドルです。

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