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日本ユニセフ協会
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世界の子どもたち

タイ
人里離れた山間部の子どもたち
移動図書館で子どもたちに本を届ける

【2015年12月8日  メーホンソーン県(タイ)発】

タイ北部の人里離れた貧困地域で暮らすほとんどの家庭が、子どもたちのために本を購入する余裕がありません。自宅に限られた本しかない子どもたちがより多くの本と触れられるよう、ユニセフは移動図書館プロジェクトを実施しています。子どもたちはいつも、とても熱心に学んでいます。

* * *

移動図書館がやって来た!

移動図書館で本を借りる子どもたち。

© UNICEF Thailand/2015/Prommarak

移動図書館で本を借りる子どもたち。

タイ北部のメーホンソーン県メーラーノーイ郡にそびえ立つ山々の間に建てられたバン・フエ・ピュン小学校に通うアピシット・スリポーンルマートくんにとって、今日は特別な日です。1,200冊以上の子ども用の本を乗せ、移動図書館が学校にやって来るのです。

車のクラクションの音が鳴ると、アピシットくんを含め何十人もの子どもたちが興奮を抑えきれずに校庭へと駆け出しました。学校の前に駐車した移動図書館を一目見ようと、子どもたちが押し合い、背伸びをしながら教室の窓から顔を覗かせます。

「移動図書館が学校に来てくれて、とても嬉しいです」と、小学校3年生のアピシットくん(9歳)が話します。「本を読むのが好きだけど、家には本が1冊しかありません」

これは、アピシットくんに限ったことではありません。

ユニセフの支援を受けて2012年に国家統計局が実施した複数指標クラスター調査(MICS)によると、タイの5歳未満の子どもの半数以上が、自宅に子ども用の本が3冊以上ありません。タイ全土でも、自宅に10冊以上の本がある子どもは14.2%に留まっています。

「子どもたちの創造性や言語能力を養い、社会性を養うには、興味深く、想像を掻き立てるような、年齢に合った本を読むことが必要です」と、ユニセフ・タイ事務所のビジャヤ・ラジハンダリ代表が語ります。「しかしタイでは、あまりにも多くの子どもたちがこのような機会を得ることなく、成長しています。結果として、子どもたちが成長し、自分たちの可能性を開花させていくために必要な読解力が十分ではないのです」

子ども用の本が手に入らない

メーホンソーン県の人里離れた地域に本を運ぶ移動図書館。

© UNICEF Thailand/2015/Prommarak

メーホンソーン県の人里離れた地域に本を運ぶ移動図書館。

MICSの結果によると、農村部の子どもたちより都市部の子どもたちの方が子ども用の本へのアクセスが多いことが分かりました。都市部では50%以上の5歳未満児が3冊以上の本を持っていますが、農村部では38%に留まっています。メーホンソーン県などの人里離れた県や山間部では、この違いがとても顕著に現れています。

「このあたりの家庭は、子ども用の本をほとんど持っていません」と、クン・ヤン教育支援地域地区にある小学校のダララット・ピワーン校長が語りました。「クン・ヤン地区には、本屋すらありません」

貧困も、子どもたちから本を遠ざけている原因の一つです。これらの山間部で暮らす家庭のほとんどが少数民族出身で、農業で生計を立てています。「生きていくために、食糧や生活必需品の購入にお金を使わなくてはいけません。子ども用の本を買う余裕などないのです」と、ダララット校長が話します。

ユニセフはメーホンソーン県教育支援地域事務所や地元のコミュニティ、民間企業、パートナー団体と協力し、移動図書プロジェクトを開始しました。このプロジェクトのもとで、現在3つの移動図書館を運営しています。曲がりくねった山道を走り、山を越え、森の中を走らせて、メーホンソーン県の山間部で暮らす少数民族コミュニティのため、ユニセフが支援する33校の公立学校の子どもたちに本を届けています。この移動図書館で貸し出されている本は、子どもたちの意見を取り入れて選ばれ、地元の教育担当官によって認定されたものです。

「子どもたちのもとへ本を届ける移動図書館プロジェクトは、滅多によい本を読むことができない人里離れた地域で暮らす子どもたちに、解決方法をもたらしました」と、ダララット代表が話します。「そして移動図書館の恩恵を得られるのは、1校だけではありません。訪問する何十もの学校の子どもたちのためになる、非常に価値のある支援だと思います」

家族も一緒に学べるように

移動図書館で借りた本を読むアピシットくん。「本を読むのが好きだけど、家には1冊しか本がないんだ」

© UNICEF Thailand/2015/Prommarak

移動図書館で借りた本を読むアピシットくん。「本を読むのが好きだけど、家には1冊しか本がないんだ」

移動図書館が学校に到着すると、訓練を受けたスタッフが本を並べ、子どもたちの読書を促すアクティビティを行います。子どもたちが幼い頃から読書の習慣を身につけるには親たちが重要な役割を担っているため、親たちもアクティビティへの参加が促されます。

移動図書館は、1回の訪問で3~7日、それぞれの学校に留まります。その間、子どもたちは好きな本を借り、自宅に持ち帰ることができます。そうすることで、兄弟や両親も本を読むことができるようにするためです。

「移動図書館がこの学校にも来てくれて、うれしいです」と、クン・ヤン地区のバン・フエ・ピュン小学校に6年生の娘をふたり通わせているスリー・サコプライさんが話します。「読書は、娘たちの読む力を高めます。子どもたちは私や夫に本を読み、物語のストーリーについて質問するのが好きです。娘たちが読み書きをできるようになって、とても誇らしいです」

読書は学びの基礎

「読書は読むという能力だけを身につけるものではありません。子どもたちにとって、読書は世界について学ぶ方法であり、好奇心を発達させ、さまざまな価値を学ぶための方法の一つなのです」と、ユニセフ・タイ事務所のヒュー・デラニー教育部門チーフが語ります。

デラニー教育部門チーフは、「読書は学習の重要な基礎であると指摘します。読み書きが容易にできる子どもたちは学校での成績がよく、自らの持つ可能性を最大限に引き出すことができる傾向にあります。読書は特に社会的に不利な立場にある家庭やコミュニティ出身の子どもにとって、言葉に触れ、言語能力を高める力となります」

2015年、このプロジェクトは700人以上の生徒たちと1,400人の親たちに恩恵をもたらしました。アピシットくんのように、より多くの子どもたちに読書を楽しんでもらえるよう、ユニセフはより多くの人里離れた子どもたちのもとに移動図書館の支援を届けるべく活動しています。

「僕の学校にも移動図書館がたくさん来るようになればいいな」とアピシットくんが語ります。将来は警察官になるのが夢です。「たくさん本を読みたいです。本を読むと、賢くなれるからね」

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