【2016年4月1日 パナマシティ発】
©UNICEF/BRZ/Ueslei Marcelino |
蚊が媒介し「小頭症」との関連性が疑われる感染症「ジカ熱」が、ブラジルのみならず中南米地域全体に広がっています。ユニセフ(国連児童基金)は、影響を受けている各国の現地事務所を通して、感染リスクを伝えるコミュニケーション活動や、コミュニティ支援を実施し、これまでにラテンアメリカ・カリブ地域の1,610万人の人々を支援してきました。
©UNICEF/BRZ/Ueslei Marcelino |
2016年3月24日時点で、ジカウイルスの感染が疑われる、または確認された事例は19万2,000件以上。これは、3月16日時点の14万5,000件に比べ、32パーセントの増加にあたります。またブラジル国内で、2015年10月22日から2016年3月19日までに小頭症または中央神経系の異常の疑いがある事例は6,671件報告され、3月16日時点の5,909件からさらに増えました。同時に、ブラジル、コロンビア、エルサルバドル、ホンジュラス、スリナム、ベネズエラでは、神経疾患の一種「ギラン・バレー症候群」の増加も報告されています。
ブラジルのシレネイデさんは、妊娠4か月の頃、胎児のイアネちゃんに先天的異常があることを知り、生後8カ月の時に小頭症と知らされました。「私の人生のすべてはイアネのためにあります」とシレネイデさんは話します。「娘が話したり歩いたりできるようになるかどうか、医者はまだはっきりとしたことは言いません。でも、何が起ころうとも、娘と私はいつも一緒にいます」
イアネちゃんは、パライバ州カンピナグランデのペドロ市民病院内の特別診療室で治療を受けている44人の乳幼児のひとりです。カンピナグランデは、ブラジル半乾燥地帯で、ユニセフ「シール・イニシアティブ(子どもの生活改善を行う自治体に対する認証キャンペーン)」を通じて子どもの権利を守るための取り組みを行っている、1,134の自治体のひとつです。ブラジル保健省によると、カンピナグランデはネッタイシマカによる感染リスクの高い状況にあります。
©UNICEF LACRO |
ユニセフ・ラテンアメリカ・カリブ地域事務所のサポートのもと、ユニセフ・ブラジル事務所をはじめとする19のユニセフ現地事務所が、ジカ熱の感染予防に関する情報提供や研修活動を行っています。以下がその活動の一例です。
ユニセフは、各国でのジカ熱の感染予防を効率的に進めるため、情報収集や分析において最新の技術を用いています。
昆虫、疫病、気象、移動に関するリアルタイムのデータを用いて、ジカ熱の感染拡大の特定を助けるツール。これを用いることで、ある一定の期間内に高リスクとなる地域に対して、予防対策や予防のためのコミュニケーション活動を集中的に実施できます。このツールは、緊急事態およびその影響の把握や対応に関して、さまざまなパートナー団体から集められた情報を格納したデータベースを通して、作られています。ブラジル、コロンビア、パナマのユニセフ現地事務所が、試験的な運用に参加しています。
グローバル・イノベーションセンターによるサポートと、IFRCとのパートナーシップにより、「ジカウイルスU-REPORT (ツイッターやモバイルアプリ等を通したコミュニケーションキャンペーン)」を7カ国(ブラジル、ボリビア、コロンビア、エルサルバドル、グアテマラ、ホンジュラス、ペルー)で開始。ネッタイシマカへの対応において、特に若者、青少年、保健関係者の参加促進を目指しており、予防のための情報、および、ベクター・コントロール(媒介蚊の制御)キャンペーン参加促進のための情報共有に用いられています。U-REPORTを通じて意見を交換したりアンケートに回答したりするU-Reporter(ユー・レポーター)の募集が、2016年3月28日に開始されました。
ラテンアメリカ・カリブ地域全土で国レベルで実施されているコミュニケーションキャンペーンの改善のため、ユニセフ・ブラジル事務所と共同で日次モニタリングを実施し、活用するデータを収集しています。
ユニセフは、ジカ熱への対応に必要な計1,380万米ドルの支援を要請しています。これには、ラテンアメリカ・カリブ諸国における緊急対応に必要な880万米ドル、予防や研究開発に関する世界規模での支援の取り組みに必要な500万米ドルが含まれています。
ラテンアメリカ・カリブ諸国における880万米ドルの要請額に対し、ユニセフ・ラテンアメリカ・カリブ地域事務所はこれまでに199万米ドル(30.6パーセント)を確保しています。さらに、子どもたちと家族の緊急の人道支援ニーズに応えるため、通常予算から71万1,000米ドルの予算を割り当てています。しかし、ジカウイルスの爆発的な感染拡大に直面している各国の緊急対応を支援するためには、追加の資金が必要とされています。国や地域ごとにさまざまな課題やニーズを抱えているといった複雑な事情から、それぞれに沿った支援を柔軟に提供するための資金が不可欠です。
【関連ページ】
シェアする