【2017年6月1日 ジュネーブ/ニューヨーク発】
ユニセフ(国連児童基金)は今月1日、専門誌「子どもの虐待とネグレクト(Child Abuse & Neglect)」*の中で、世界各地の施設で暮らす子どもの数は少なくとも270万人に上るという新たな推計を明らかにしました。しかしながらこの数値は、氷山の一角にすぎず、大半の国々では、公式のデータと実際の数との間に、おおきな隔たりがあると考えられます。
© UNICEF/UN064131/Paleykov |
「児童養護施設や孤児院などの施設では、家族と離れてすでに弱い立場に置かれている子どもたちが、暴力や虐待、そして認知的・社会的・感情的発達への長期的な影響を受けるリスクが高まります」と、ユニセフ本部・子どもの保護部門チーフ(局次長)のコーネリアス・ウィリアムズは指摘します。「最も優先すべきことは、子どもたちをそのような施設ではなく、家族と一緒に暮らせるようにすることです。幼少期の子どもにおいては特にそうです」
ユニセフの最新の推計は140カ国のデータに基づいています。中央・東部ヨーロッパ地域は、10万人中666人の子どもが施設で暮らしており、これは世界で最も高い割合です。世界の平均が10万人中120人なので、比較すると5倍以上に上ります。次に高い割合は、先進国(10万人中192人)、続いて、東アジア・太平洋地域(10万人中153人)となっています。
ユニセフの調査は、多くの国々では未だに、社会的養護の下にある子どもの数について、正確な数値を把握する機能的なシステムが欠如していることを強調しています。多くの国々が公式のデータとしているのは、施設で暮らす子どもの実際の数のほんの一部です。民間の施設で暮らす子どもたちは、その数に含まれていないことがよくあります。
「公式のデータを実態に沿う数値に改善するためには、子どもを擁護する施設すべてを網羅した、より正確で包括的なリストを政府が把握すること、そして、定期的に、施設で暮らす子どもの数の徹底的な調査を行うことが不可欠です」と、ユニセフの統計専門官で、本調査に携わったクラウディア・カッパは述べています。「そうすることで、この問題の広がりを把握し、政府とともに効果的に対処することができます」
調査はまた、子どもが施設で暮らすことになる主要なリスク要因として、家庭崩壊、健康面の問題、障がい、貧困、社会的サービスの提供が不十分であること、などを示しています。
各国政府は、可能なかぎり家族が別々になることを防止し、また、里親家庭など家庭的な環境を提供するなどして、施設で暮らす子どもの数を減らすことを求められています。ユニセフは、コミュニティを基盤とした家族への支援プログラムへの投資も必要だと指摘しています。
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日本でも、社会的養護を必要とする子どもたちに、家庭的環境での養育を推進するための取組が進められています。この目的のために2016年4月に設立された「子どもの家庭養育推進官民協議会」の発起団体の一つとして、当協会は、同協議会による政策提言等に参加しています。
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*専門誌「子どもの虐待とネグレクト(Child Abuse & Neglect)」Vol.70の記事「Estimating the number of children in formal alternative care: Challenges and results」(英語)は、こちらのサイトにてPDF版のダウンロードが可能です(2023年6月現在)。
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