【2017年7月25日 ジュネーブ発】
アフリカからヨーロッパに移動する子どもたちは、家を出ることを自らが決め、当初からヨーロッパに行くことを目的にしていたわけではない。そして半数以上の子どもたちは、家庭環境によるトラウマやリビアで虐待を目撃したり自ら経験したことが、彼らを危険な地中海中央ルートを渡ってヨーロッパに逃げることの原因となったとする、ユニセフ(国連児童基金)が監修しREACHが調査実施した最新の報告書が発表されました。
この調査の一環としてインタビューを受けた、イタリアに滞在する難民・移民の子どもたちの75%が、旅に出ることをひとりで決めたと言っています。子どもたちの旅路は驚くことに2年間あるいはそれ以上の期間を要しています。子どもたちが家を出た主な原因として挙げているのは家庭内暴力、そして搾取や紛争です。女の子の5人にひとりは、児童婚を強要されたことが家を出る主な理由としています。彼らのヨーロッパへの旅路の多くは、細分化され、目的地は旅の途中で何度も変わったと言います。
「この報告が衝撃的なのは、それまで理解されていたより、子どもたちが家を出る理由がはるかに多様であり、ヨーロッパへ引き寄せる要因は少なかったことを、初めて明らかにしていることです」とユニセフ中部・東部ヨーロッパ、独立国家共同体地域事務所代表兼欧州難民危機特別調整官アフシャン・カーンは述べました。
ユニセフとREACHが協力してこの調査を実施した目的は、政策決定者、パートナー団体や政府に対して、子どもたちが国や家から逃れるに至った動機の裏付けを提示することです。この調査では、ヨーロッパへの入り口であるイタリアとギリシャで、15歳から17歳の子ども850人にインタビューを実施しました。
© UNICEF/UN052612/Romenzi |
イタリアに滞在する難民・移民の子どもたちは口をそろえて、彼らの旅路の中で、リビアで過ごした時間が最もトラウマになっていると話しました。約半数(47%)の子どもたちは、リビアで身代金要求のために拉致され、4人にひとり(23%)が無作為に逮捕され、容疑もなく刑務所に収容されたと話しています。子どもの半数以上はサハラ以南のアフリカから来ましたが、中には遠く離れたバングラデシュから来た子どももいます。
「ヨーロッパを目指した子どもたちにとって、その魅力はより高い教育を受ける機会であり、権利の尊重であり、より良い人生を送ることでした。しかし、悲しいことに、彼らが一度ヨーロッパに到着し直面した現実はまったく異なるもので、期待は崩れ去ったのです」とカーンは言います。
ギリシャで実施した調査では、親あるいは知養育者の3人に1人が、ふるさとを後にしてヨーロッパに向かった主な理由として、子どもたちの教育を求めたことを挙げています。しかし、難民・移民の子どもの調査によれば、多くの子どもたちが、手続きの長期化や彼らの権利に関する混乱により、イタリアやギリシャの受入制度からこぼれ落ち、教育の機会を失い、虐待や搾取の高い危険に晒されていることを明らかにしています。
今年に入って6カ月の間にイタリアに辿り着いた1万2,239人の子どものうち、93%が独りで旅をしました。
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■難民・移民のプロフィールについて
イタリアとギリシャでは、辿り着く子どもたちのプロフィールが著しく異なることが、調査で明らかになりました。イタリアに辿り着いた子どもたちには、移動を自分で決断する傾向(インタビューした子どものうち75%)があり、そのほとんどがおとなの同伴のない16歳から17歳の男の子です。ギリシャに辿り着いた子どもたちには、移動を家族で決断した傾向があり、家族で到着しており(インタビューした子どものうち91%)、あらゆる年齢層の男の子と女の子のほぼ同数がいます。
■子どものための行動計画
ユニセフは、G7サミットおよびG20サミットにおいて、紛争、暴力や貧困によりふるさとを追われたすべての子どもたちを保護するために、「ふるさとを追われた子どもたちのための6つの行動計画」に沿って、難民・移民の子どもたちを保護するよう、各国政府に強く求めました。行動計画は各国政府に以下のことを求めています:
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