【2017年4月21日 マンゴチ(マラウイ)発】
干ばつの継続と食糧不足により、マラウイの人々が飢餓の危機に苦しんでいます。シャミンさん(18歳・仮名)は、息子を食べさせるために売春を始めました。ユニセフとパートナーは、シャミンさんのような人々を支援し、子どもと青少年を守るための長期的な解決策を模索しています。
© UNICEF Malawi/2017/Eldson Chagara |
マラウイ湖の沿岸に、あふれる雨期がやって来ました。干上がっていた大小の川にも、濁った水が流れ始めます。農場の小屋ほどの背丈があるトウモロコシが、側を走り去る子どもたちの背丈を超えてそびえ立ちます。
そのような光景の陰で、マラウイは、2015年から2016年にかけて続いた、厳しい干ばつにより引き起こされた飢餓の危機の影響を今なお受けています。
シャミンさんは、マラウイ湖の南端にある小さな村に住んでいます。3年前、15歳のときに妊娠しました。恋人の男性はモザンビークに働きに出てしまい、妊娠を恥じた両親は、シャミンさんを家から追い出しました。シャミンさんは学校を辞め、トウモロコシ農園やたばこ農園で働いて生活のやりくりしようとしました。
干ばつに襲われ食料不足が起こると、お腹を空かせた人々は、食糧支援を頼るようになりました。シャミンさんが働いていた農園も、息子が生まれて一年後に経営が立ち行かなくなり、どうにか生活をやりくりするため、シャミンさんは、村の年配の男性たちに身体を売り始めました。一回、たったの500マラウイ・クワチャ(1米ドル未満)の値段でした。
© UNICEF Malawi/2017/Eldson Chagara |
「男性に誘われたら、息子へのお金を求めます」とシャミンさんは言います。「売春したくはなかったけど、他に手段がありませんでした。必死だったのです。干ばつの影響で息子を育てるお金がなく、手放そうとも考えました」
「ひどい仕打ちをする男性もいました。避妊を拒んだり、明日お金を払うと言って、結局払ってくれなかったり。HIVになるのではないかと、とても怖かったです」
地元の学校に、ユニセフの支援を受けてNGOが運営する、少女たちを支援するプログラムがありました。このプログラムでは、少女たちが抱える問題について互いに共有する後押しをし、根底にある原因を探ることで解決策を見出します。必要に応じて、一対一のカウンセリングも行っています。
「プログラムは、本当に助けになりました。同じような女の子たちと話すことで、他にも生きる手段があると気づきました。自分の人生をやり直したいです」とシャミンさんは話します。
シャミンさんは、カウンセラーのアドバイスに従い、クリニックでHIVのテストを受けました。結果は陰性で、自分の人生に変化を起こすという決意がさらに強くなりました。
「もう売春はしないと決めました。トウモロコシ農園に戻って働き始めたのです。村の女性たちに代わり、洗濯もします。資金援助をしてくれる人が見つかれば、学校にも戻りたいです」
シャミンさんは自分の人生を取り戻し、子どもの未来のことも考え始めました。「息子は、話をしたり走ったりするようになり、ボールで遊ぶことが大好きです。大きくなったら、学校に行って教育を受けてほしいです。もう、息子を手放そうとは思いません」
© UNICEF Malawi/2017/Eldson Chagara |
村で売春をする少女は、シャミンさんだけではありません。結婚持参金のために、家族に売られる子どもたちもいます。
ユニセフ緊急支援専門官のウィリス・オウマ・アグツは、「自給自足農業に頼る多くの家族にとって、この2年はとても厳しいものとなりました」と話します。「続く干ばつと食糧不足で、普段は手を出さない、売春や児童婚に追い込まれてしまったのです。飢えが続くにつれて、負の連鎖が広がっていきました」
ユニセフは、飢餓の危機の影響を受ける子どもたちに、必要な支援を届けるために活動しています。栄養不良の診断と治療、安全な水や衛生用品の提供、予防接種の実施、暴力からの保護、教育の提供などを行っています。パートナー団体と協力して行うプログラムでは、主に性的虐待と児童婚から少女たちを守り、社会心理的サポートを提供し、学校に戻れるよう後押ししています。国内の61の学校で展開し、3,000人以上の子どもたちを支援しました。
さらにユニセフは、シャミンさんのような少女たちが直面する問題に対して、長期的な解決にも取り組んでいます。ユニセフの子どもの保護官カシム・サイティは「匿名で報告された問題を、村長や宗教団体などのコミュニティリーダーとも共有しています。地域ごとの規則と、子どもを守るための行動規範が整えられ、18歳未満の女の子と性行為を持てば警察に通報されるようになりました」と語ります。
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