【2017年10月26日 ジュネーブ/ニューヨーク/アトランタ発】
ユニセフ(国連児童基金)は本日、世界保健機構(WHO)などと共同で報告書「Progress Toward Regional Measles Elimination — Worldwide, 2000–2016」を発表し、2016年にはしかによる死亡者数は推定9万人で、2000年の55万人以上と比較して84%減少したと指摘しました。世界のはしかによる死亡者数が年間10万人を切ったのは初めてのことです。
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「はしかの予防接種によって毎年平均130万人の子どもたちの命が守られているということは、信じがたいほどの成果であり、私たちの時代に「はしかのない世界」の実現が起こり得ると思えます」とはしか・風疹イニシアティブ (MR&I) 兼米国疾病予防管理センター(CDC)のDr. Robert Linkinsは述べました。「はしか・風疹イニシアティブ」は、2001年に米国赤十字社、米国疾病予防管理センター(CDC)、国連財団、ユニセフ、WHO(世界保健機関)が参加して開始しました。
2000年以降、推定55億回分のはしかワクチンが、定期予防接種および予防接種キャンペーンを通して世界の子どもたちに提供され、推定2,040万人の子どもの命を守ったとされています。
「過去20年以上ではしかによる死者数は激減しましたが、はしかの根絶に向けて、今後さらなる努力が必要です」と、WHOのジャンマリー・オクオ・ベレ医師(Dr. Jean-Marie Okwo-Bele)は述べました。「はしかの根絶は、世界中のすべての子どもがはしかの予防接種を受けることで、初めて達成されるのです」
世界の各地域におけるはしか根絶という目標の達成には、まだ程遠くあります。予防接種は2回のワクチン接種が必要ですが、1回目の接種を受けた人の割合は2009年以来ほぼ85%に留まったままで、はしか感染を止めるために必要とされる95%に比べてはるかに低い接種率です。2回目の接種を受けた人の割合は近年上昇しているものの、2016年はわずか64%でした。
2,080万人という多すぎる数の子どもたちが、いまだにはしかの初回接種すら受けていません。予防接種を受けていない子どもたちの半数以上が、ナイジェリア(330万人)、インド(290万人)、パキスタン(200万人)、インドネシア(120万人)、エチオピア(90万人)、コンゴ主共和国(70万人)の6カ国に暮らしています。はしかは感染力の高いウィルス性の感染症なので、大規模な流行はこれらの国に加えヨーロッパや北アメリカにも拡大し、子どもたちを肺炎、下痢症、脳炎、失明などの合併症を招き、死に至らしめることもあります。
はしか根絶に向けた前進は、はしか・風疹の予防接種キャンペーンなども資金面でサポートしている「ポリオ根絶のためのイニシアティブ」が、ポリオの根絶とともに縮小あるいは消滅することで、逆行する可能性があると指摘されています。最も多くはしかによる死亡者を出している国々は、最も強くポリオの資金に依存しているため、ポリオ根絶が達成された後、はしか根絶に向けた前進の逆行対して最も高いリスクを抱えています。
「はしかは毎日300人以上の子どもの命を奪い、子どもの死亡の重要な要因です」とユニセフ保健部門のシニアアドバイザーのロバート・ケザアラは述べました。「しかし、はしか根絶に向けて成し得たこれまでの前進は、私たちが努力を倍増することですべての命を守ることができる、ということを証明しています」
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