【2018年2月3日 ダッカ(バングラデシュ)発】
ユニセフのマーティン・ワース 水と衛生(WASH)担当チーフは、これまでにいくつもの人道危機下の人々の支援に携わってきました。現在、バングラデシュのコックス・バザールでのロヒンギャ難民支援に携わるワース担当チーフは、「厳しい現場をいくつも経験していますが、ここの状況はより深刻です。現在の悲惨な状況が、さらなる大参事に発展する可能性もあるのです」と語ります。
© UNICEF/UN0161902/Modola |
これからやって来るサイクロンの季節に向け、どのようにしてロヒンギャの子どもたちの安全を確保し健康を守るのかが、現在、ワース担当チーフの最優先事項です。
バングラデシュではサイクロンの季節が3月に始まります。例年のこの季節は状況が急激に悪化するため、多くの厳しい出来事に耐えてきた子どもたちや家族にとって、さらに残酷な仕打ちになる可能性があります。
昨年8月以降、100万人以上のロヒンギャ難民が、ミャンマーでの悲惨な暴力から逃れるため、国境を越えてバングラデシュにやって来ました。その半数以上が子どもたちです。懸念されることの一つが、現在、仮設テントや一時受け入れ施設に滞在する多くの人々が不衛生で密集した環境で暮らしていることです。
「短期間に避難してきた多くの人たちは、防水シートで覆った簡素な小屋で雨風をしのいでいます。非常に密集しており、感染症流行の潜在的なリスクが非常に高いです」とワース担当チーフは話します。
ロンドン南部に生まれ、2人の子どもの父親であるワース担当チーフは、過去に、南スーダン・ケニア・パキスタン・エリトリア・ヨルダンでの支援活動に従事していますが、それらの中でも、ロヒンギャ難民の置かれた状況は最も複雑だと感じています。
「非常に懸念しています」とワース担当チーフは言います。「私たちにとっても大きな試練になるでしょう。サイクロンの季節が到来すれば、現在の難民への対応に加え、自然災害にも対処しなければならない可能性があります。私たちは、事前の準備を十分にすることでそうした事態に対応できるよう出来る限りのことをしています」
© UNICEF/UN0164442/Nybo |
サイクロンの季節が近づく中、緊急支援チームの支援活動は時間との闘いです。ユニセフはパートナーとともに、洪水に覆われた地域やその周辺で暮らす家族を見つけ、安全な場所に移動してもらい、安全な水と衛生的なトイレを確実に利用できるよう、支援を提供しています。
「これはチームの力があってこそできることです。難民が必要とする人道支援を届けるためには、ユニセフの水と衛生チームの努力だけでなく、他の国連機関・NGO・政府関連パートナーとの密接な協力関係が不可欠です」
洪水の発生リスクが高い場所に設置されたトイレや給水所の特定と撤去も、支援活動のひとつです。汚物等によって水が汚染されると、コレラや急性水様性下痢症のような感染症拡大の可能性が高まります。「想像するに心地のよいものではありませんが、排泄物によってキャンプのあちこちが汚染されれば、それだけ感染症発生のリスクが高まるのです」とワース担当チーフは話します。
急性下痢症疾患であるコレラに感染した子どもは、治療を受けることができなければ、数時間で命を落としてしまいます。安全な水と衛生的な環境の確保は、コレラをはじめとする水を媒介する感染症の感染を防ぐために重要なのです。
© UNICEF/UN0185009/Sokol |
ロヒンギャ難民の人たちにとって、安全な水の不足が問題になっています。ユニセフは、井戸の設置や、地下水の採取が難しい場所への水の輸送回数を増やすなどして、安全な水の供給能力を高めています。
「様々な側面から問題に対応しています。水質を改善し、家族への研修も行います。新しいトイレの建設だけではなく、病気の感染経路や予防法を人々に知ってもらう必要があるのです」(ワース担当チーフ)
ユニセフの緊急衛生キットには、折り畳みが可能な10リットルの水容器、子ども用のおまる、基本的で不可欠な石けんなど、衛生習慣の改善と安全な水を得るために必要なすべてのものが含まれています。
「石けんを使った手洗いで、病気のリスクを大幅に下げることができます」とワース担当チーフは話します。
キャンプに設置されたクリニックや保健センターは、コレラや急性水様性下痢症などの水を媒介する感染症治療のための準備を整えています。特別な訓練を受けたスタッフがセンターに滞在し、経口保水塩(ORS)と亜鉛などで子どもたちに治療ケアを提供します。
ワース担当チーフが率いるユニセフのチームは、昼夜を問わず活動しています。「対応方法は熟知しているし、準備も十分できています。最善の状況を望みながら、最悪の場合に備えているのです」
【関連ページ】
シェアする