【2017年5月4日 南スーダン発】
テントが立ち並ぶ南スーダン・ボル(Bor)の文民保護区(Protection of Civilians (PoC) Site)。歩いていると、子どもたちが集まってきました。今日の案内役のサラ(コミュニティリーダー)はすかさず、子どもが手を洗っている絵が描いてあるプラスチックのサインボードを見せ、質問を投げかけます。子どもたちに手洗いの大切さを説明した後、今度は近くの日陰に集まっている母親たちに話しかけます。
@ UNICEF/Phil Hatcher Moore |
緊急時、最も厳しい状況に置かれやすいのは女性や子どもたち。紛争によってコミュニティを失い、女性や女の子は、身体的・性的暴力や搾取に特に遭いやすくなります。家を逃れる際、その多くが暴力によって深刻な被害をすでに受けています。女の子、妊婦や小さな子どもを連れた女性は、特に弱い立場に置かれ、比較的安全な難民・避難民キャンプに到着した後も、多くの深刻な問題に直面します。
南スーダンで現在も続く紛争によって、これまでに約190万人が国内避難民となりましたが、その大部分が女性と子どもです。同時に、160万人以上が安全を求めて隣国へ逃れました。保護区を歩いていると、女性や女の子が直面している問題に気づきます。この区域では3,500人以上が暮らし、その多くが、2013年に南スーダンでの紛争が始まった際に逃れてきた、女性や子どもたちです。ここで暮らす女性たちは、大きなストレスに晒されています。小さなテントに住み、子どもの面倒を見て、家族を食べさせ、家族の身体を清潔に保ち、正常な感覚や尊厳を維持しようと努めています。現在キャンプで暮らす多くの女性は、紛争によって男性たちを失いました。家族を養ってきた、夫、父親、息子や兄弟を亡くしているのです。今、残された女性たちは、力を合わせ、新しい役割を担い、サポートのためのネットワークを築いています。
@ UNICEF/Phil Hatcher Moore/ |
サラが6人の子どものうち一番幼い2人とともに保護区で暮らすようになって、3年以上が経ちました。彼女は、キャンプ内に設けられた水と衛生委員会の一員でもあり、キャンプで支援活動をしている団体によって女性や女の子の意見が聴かれ、行動として反映されるよう、働きかけています。水と衛生は、最も重要な問題のひとつです。水と衛生サービスへのアクセスの悪さの影響を最も大きく受けるのは女性だと、サラは言います。キャンプ内で、大家族の分の洗濯物を処理することは不可能。水の供給は限られ、給水所には通常長い列ができています。男女別のトイレがあるとは限らず、性的暴力の被害を受けるリスクが高まります。トイレに行けても、明かりが不十分であれば夜間の利用には危険が伴います。
毎朝、サラはキャンプで暮らす家族に話しかけ、悩みごとを聞いたり、コレラをどのように予防するかなど、さまざまなアドバイスや指導をして回ります。「最初に来た時は、とても悪い状況でした。ひどい衛生状態のために、初めの数カ月で80人以上の子どもが命を落としたのです」とサラは述べました。「そのためユニセフは、水と衛生の取り組みに従事できるよう、私たちのような者に研修機会を提供したのです」。ユニセフは、サラのようなコミュニティリーダーと協力し、水と衛生施設を改善し、蛇口を設置し、男女別のトイレを建設し、ソーラー式外灯の下、行く道が明るく照らされるよう取り組んでいます。
水と衛生の取り組みは、現地での他のユニセフの分野における活動にも良い影響をもたらします。例えば、安全で、男女別の個室のトイレや水場が学校で不足していることは、特に生理期間中において、女の子が授業を欠席する大きな原因の一つです。現在保護区の学校には、男女別のトイレが置かれ、新たな給水所の建設計画もあるため、暑い日の長い一日にのどが渇いても生徒たちが家に帰る必要はなくなります。
@ UNICEF/Phil Hatcher Moore |
「女性や女の子が水と衛生プログラムに全面的に参加することが、成功への鍵です」と、ユニセフ・南スーダンで水と衛生部門チーフを務めるLillian Okwirryは述べました。「プログラムの計画と管理において女性に直接関わってもらうことで、女性や女の子たちがこれらのサービスを利用するうえで直面している不平等の問題と向き合うことができるのです」「雨季が始まると、新たな課題が生まれます。洪水によって、ほこりっぽい道路は泥まみれの沼地となり、水を原因とする病気のリスクが高まります。トイレを高い場所に設置することで、下水が洪水の水と混ざることを防ぐことができます」
ボルに限らず、ベンティウやジュバにある大きな保護区での人道支援の中核をなすべきなのは、ほとんどすべてを失ってしまった女性たちのエンパワメントです。サラは、テントに戻る途中、なぜユニセフのような組織にとってコミュニティリーダーの女性との協力が非常に大切だと考えているかを教えてくれました。
「ここで暮らす女性たちにとって、自分たちが参加し、自分たちの声が届いていると感じることこそ、物事が良くなっていくだろうという希望になるのです。女性は、国を支える柱です。私たちは、次の世代、少年少女たちへの責任を担っており、私たちの未来が南スーダンの未来なのです」
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