【2019年1月21日 ジュネーブ発】
ユニセフ(国連児童基金)は、欧州各国の政府に対して、ヨーロッパを目指して航海中および到着後においても深刻な危険と基本的人権の侵害に晒され続けている難民・移民の子どもたちへの保護を改善するために、地域全体の取り組みに合意するよう呼びかけています。
© UNICEF/UN0274758/Haviv VII Photo |
今年1月の2週間だけで、1日平均29人に相当する約400人の難民・移民の子どもが、ギリシャ、イタリア、スペインの海岸に到着しました。子どもたちは真冬の零下の寒さと荒れた海という特に危険な航海に耐えています。
先週末におきた地中海上での2件の難破事故により、推定170人が死亡あるいは行方不明となっていると報告されています。子どもや妊婦も乗船していたと報告されています。先週、家族でサモスを目指して地中海を航海していたイラク出身の9歳の女の子が溺死したと報告されました。
また今年のはじめには、地中海上で活動していた救助船Sea Watch 3の停泊が許可されず、少なくとも6人の子どもが船上で足止めされました。船上の子どもたちは、下船が許されるまでの間、長いと18日間、宙ぶらりんの状態におかれ、医療ケアなどの緊急に必要なサービスを受けられませんでした。
「子どもたちは毎日、安全とまともな未来を築く機会を得ることを求め、零下の寒さの危険な海を命がけで渡っています。この地域の取り組みは、その多くが長い旅路で搾取や虐待をすでに経験した子どもたちが、これ以上苦しむことを防ぎます」とユニセフ欧州地域事務所代表兼欧州難民危機特別調整官アフシャン・カーンは述べました。
© UNICEF/UN0274747/Haviv VII Photo |
2018年にギリシャ、イタリア、およびスペインに海路で到着した難民・移民の子どもは2万3,000人と推定され、そのほとんどは紛争、極度の貧困、または迫害から逃れてきています。
そのような子どもの1人、12歳のオサマさんは、イエメンの紛争から逃れてきました。オサマさんと彼の家族は、ギリシャのレスボス島モリアにある難民・移民受入・身元確認センター(一時収容所)からアテネに転移されました。オサマさんは家族でギリシャに向かって海を渡ったときのことを「もう終わりだと思った。もう死ぬと思った。こうやって僕の人生は終わると思った」とユニセフの職員に語りました。「イエメンでは将来が不安だった。医師やエンジニアになるための勉強も出来なかった。僕は医師になって、家族や他の人を助けたいんだ」
ユニセフは、弱い立場にある難民・移民の子どもたちのための保護を改善するために、救助船に可能な限り迅速かつ安全に下船を許可することができる地域全体の予測可能な取り組みを呼びかけています。子どもの権利を尊重した難民・移民受入・身元確認センターは、子どもたちが確実に、必要不可欠な保護、保健、心理社会的ケアを受けられ、難民申請手続きにおいても、法的支援が受けられるなど、公正で迅速な手続きを受けられるようにしなければなりません。
すべてのEU加盟国からの、子どもを最優先したさらなる再定住の確約、そしてより迅速な家族再統合手続きが緊急に必要とされています。
「今年は『子どもの権利条約』が採択されてから30周年です。これは、すべてのEU加盟国に、子どもたちが移民であろうと、すべての子どもたちの権利を保護する約束をしたことを思い起こさせる重要な機会となります」とカーンは述べました。
ユニセフは、難民・移民の子どもたちが、住居、心理社会ケア、及び教育を受けられるようにするための支援をすると同時に、各国の子どもの保護制度が、すべての弱い立場にある子どもたちに恩恵を与えられるよう強化する支援を行っています。
ユニセフは昨年、欧州における難民・移民の子どもの支援のために3,400万米ドルを要請し、現在までに合計1,500万米ドルを受け取りましたが、まだ必要な資金の55%が不足しています。
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