【2019年6月17日 イエメン発】
今なお続く紛争の影響を受けているイエメンでは、市民生活は限界に達しており、必要不可欠な公共サービスも全面的な崩壊の危機にあります。そうした影響をもっとも受けるのはいつも、子どもたちです。
© UNICEF/UN0318233/Aljaberi |
妊娠中に定期検診をうけたり、助産師さんなど専門技能者の付き添いのもと、あるいは、設備が整った施設で出産する機会は、紛争によって極めて減少しました。たとえ、産科のある施設に行くことができたとしても、そこでケアを受けられる保証はありません。スタッフや保育器などの設備が充分ではないと、医療従事者は報告しています。出産したばかりの母親、赤ちゃんと、妊娠している女性が、一つのベッドを共有しなければならず、感染症予防対策も不十分です。
紛争が長引くにしたがって、多くの母親と子どもの命が、重大な危機に晒されています。紛争地域および避難地域における妊産婦や新生児・子どもの死亡率は深刻なまでに高まっています。
ヤスミンさん(21歳)は子どもを2人、出産直後に亡くしています。
ヤスミンさんは、戦闘によってもっとも荒廃した地域のひとつである、フダイダ(Hudaydah)のAl-Dhahi区で、夫のスレイマンさんと一緒に暮らしています。スレイマンさんは懸命に仕事を探し、母親や兄弟たちを含む家族をなんとか養っています。世界銀行のデータによると、イエメンで紛争が勃発する前の2014年には49%だった貧困層の割合が、2018年には81%にまで増加しているといいます。
ヤスミンさんが初めて妊娠したのは2018年の初めのことでした。当時、ヤスミンさんは急性栄養不良に陥っており、そして今なお、栄養状態は良くありません。出産前検診をした地元の保健センターの医師はヤスミンさんに、安全なお産にするために、流動食をとり薬を飲むように言いました。
「妊娠8カ月のとき、帝王切開をする必要があると医師から告げられました」とヤスミンさんは振り返ります。けれども、栄養不良への治療費用も、必要な手術費用も、工面することができず、ヤスミンさんは自宅で出産することを決めました。
危篤状態で生まれた赤ちゃんを、病院に連れて行き3日間入院しましたが、その後は退院せざるを得ませんでした。治療と入院を継続するために必要なお金がなかったのです。そして、病院を出て1時間半後に、幼い命は失われました。
© UNICEF/UN0318419/Almahbashi |
二度目の妊娠時も、ヤスミンさんの栄養状況は依然として悪かったことから、生まれた赤ちゃんはか弱く、出産直後に亡くなってしまいました。今回は病院に連れて行く金銭的余裕さえなく、プライマリーケアを提供する村の保健センターには、極めて衰弱した赤ちゃんをケアするための設備が整っていなかったのです。
© UNICEF/UN0318415/Almahbashi |
ヤスミンさんの村の保健センターの保健員によると、妊婦の多くは病院代や交通費のためのお金がないため、フダイダの町にある病院に行くことができないといいます。「この地区内では、妊婦のわずか20%がかろうじて病院に通えていますが、多くの母親および新生児が、出産直後に亡くなっていると聞いています」と保健員は語ります。
紛争が勃発する前でさえ、出産の際に保健施設を利用した女性はわずか3人に1人でした。農村部では、必要な保健ケアサービスを利用できる妊婦の割合はさらに低く、100人中わすか23人しか、医療にアクセスできていませんでした。
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出典:ユニセフ・イエメン人道状況報告書(2018年12月)/ユニセフ・イエメン人道ニーズ概況報告(2019年)
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