【2020年5月14日 ジュネーブ発】
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)への対応として移民・難民の強制送還を行っている国が多くの地域で見られることを、ユニセフ(国連児童基金)もその一員である国連移住ネットワーク(United Nations Network on Migration;以下ネットワーク)は憂慮しています。ネットワークは、移民と地域社会の人々の健康を守り、難民・移民としての資格に関わらずすべての移住者の人権を守るために、パンデミック下の強制送還を中断するよう各国に求めます。人権を守ることなしに、パンデミックへの取り組みを成功させることはできません。
© UNICEF/UNI309688/Ölçer |
COVID-19の感染拡大を防ぐために一時的な国境封鎖と移動制限が必要であると考えられる場合、それは差別なく、かつ公衆衛生上の目標に応じる形で実施されなければなりません。基本的な権利を保証するためには、保健に関する手順を常に組み込む必要があります。
すべての人々の安全を守るということは、誰ひとり、命や人権が脅かされかねない場所に送還される危険に陥らせてはならないということです。そのためには、移民・難民や国境にいる庇護申請者を恣意的に送還するといった集団追放を止め、個別の保護ニーズを把握し、しかるべき法的手続きが守られなければならないことを意味しています。また、すべての子どもの最善の利益を含む、保護を優先するということです。これらは決して留保できない国際法上の義務であり、すべての人の利益のためにCOVID-19と闘うためには不可欠です。
© UNICEF/UNI285163/Orozco |
強制送還は、移民、当局職員、医療従事者、ソーシャルワーカー、受け入れ国と出身国双方のすべての人々に、深刻な公衆衛生上の影響を与える可能性があります。強制送還によって、帰還国にさらなる負担が及びます。保健システムの大部分はすでにひっ迫し、到着時の検査や検疫、家族を分離せず子どもたちの最善の利益を保証する隔離措置といった、帰還者とそのコミュニティを保護する能力が不足しています。帰還者は、適切な医療へのアクセスの欠如、不十分な水と衛生システム、交通手段の停止、さらなる移動制限、帰還先での激しい差別や偏見など、移動中や送還時に今以上のリスクに直面するおそれがあります。帰還者や庇護申請者は、COVID-19により長期にわたる避難、人身売買、極度の経済的困難に遭うリスクもあり、すでに多い失業者がさらに増える可能性があります。
ネットワークは、その資格に関わらずすべての移民・難民の人権を守り、命と安全を守るための協力を含む移住プロセスを改善するために、「安全で秩序ある正規移住のためのグローバル・コンパクト(Global Compact for Safe, Orderly and Regular Migration)」で各国が掲げた公約をあらためて訴えます。パンデミック下においてこの枠組みを移民対応の指針として活用しながら、ネットワークは、正当な法の手続きを保証し、人権が脅かされかねない場合に集団追放や強制送還の禁止を支持することで、本グローバル・コンパクトの目的21の達成を進めるよう各国に求めます。
ネットワークはCOVID-19の影響下において、母国外で暮らす個人の脆弱性を緩和すべきという国連事務総長の呼びかけをここに繰り返します。これには、移住者に一時的な居住を許可したり、強制送還を中断することが含まれます。
© UNICEF/UNI312750/Romenzi |
多くの国で、移民・難民がCOVID-19に対する包括的な対応の対象に含まれることを保証するための措置をとっています。これには、強制送還の停止、ビザや労働許可の延長、一時的な居住或いはその他の滞在資格の付与、そして、移住者を拘留から解放し、強制送還を求めるのではなく、安全で拘留のない滞在施設を提供することが含まれます。
ネットワークは、すべての移民の権利を実現し、すべての人々の健康を守るため、グローバル・コンパクトで掲げられた公約に沿って、各国の優れた慣行を適用し、さらに拡大していく上で国をサポートしていきます。
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