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日本ユニセフ協会
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南スーダン
情報を届ける、自転車メッセンジャー
大切な情報を、誰もが得られるように

【2020年6月24日  南スーダン発】

「情報はなくてはならないものです。危機が起きる前、起きている時、そして起きた後も」。

こう話すのは、マボワ・アジャンさん。「青い自転車メッセンジャー」のプロジェクト・リーダーです。

©UNICEFSouthSudan/Ryeng

「青い自転車メッセンジャー」のプロジェクト・リーダー、マボワ・アジャンさん。

正しい情報を、音声と多言語で伝える

「南スーダンでは、正確な情報を得ることがとても難しいのです」とマボワさんは言います。新型コロナウイルスの感染拡大が南スーダン国内でも広がっていることを受け、ウイルスについての正しい情報や、自分自身を守るための方法を伝えることはとても重要です。

さらに、南スーダンは道路の整備が進んでおらず、また、人口の3分の2が文字の読み書きができません。そのため、「自転車で各地を訪ねて、大切な情報やメッセージを音声で伝える」というこのアイディアは、とてもシンプルですが理にかなったものです。

拡声器を取り付けた自転車に乗ったボランティアの人々が、周辺の村々を回ります。拡声器からは、録音されたメッセージが、異なる5つの言語で流れます。

拡声器を取り付けた自転車。「青い自転車メッセンジャー」のロゴが入っている。

©UNICEFSouthSudan/Ryeng

拡声器を取り付けた自転車。「青い自転車メッセンジャー」のロゴが入っている。

自転車の利点を生かして、どこへでも

「誰も行くことができないようなところにも、私たちは行きます。自転車は手ごろな値段で入手でき、高価なパーツも必要ありませんから。

車では通れない狭い道や整備されていない道も、自転車だと通れますし、雨が多く降る雨季には、自転車を抱えて水たまりを渡ることができます。それに徒歩で向かうよりも疲れず、長距離を移動することができます。そのうえ、燃料もいりません。私たちが健康的な食事をすればいいのですから。体力を使うので、ジムに通う必要なんてありませんよ。」とマボワさんが笑います。

人々の相談役にも

「すでに持っているものを使って安全に生活する方法を、人々は知りたがっていますし、そうした情報を伝える必要があります」と話すのは、1年前からボランティアで「青い自転車メッセンジャー」に参加している、ダニエル・リールさんです。

©UNICEFSouthSudan/Ryeng

「青い自転車メッセンジャー」のボランティア、ダニエル・リールさん

現在、ダニエルさんが乗っている自転車の拡声器からは、新型コロナウイルスの予防に関するメッセージが流れています。一方的な情報提供にとどまらず、拡声器のメッセージを聞いた人々が、質問したり、心配事を相談するために、ダニエルさんに話しかけてくることもあります。

「新型コロナウイルスの感染拡大を予防するために多くの制限が設けられていますが、人々は不安がっています。自分の店を閉めることを強いられたり、建設現場の作業が止まったり、交通機関を利用する人も減少しています。その日暮らしの生活をしている人々は、どうやって暮らしていけばいいのでしょうか?」とダニエルさんは語ります。「辛抱強くいることと、警戒を怠らず必要なすべての予防策を講じることを人々に伝え、できるだけ元気づけようとしています。」

また、「どんな石けんを使えばいいの?」という質問をうけたとき、ダニエルさんは「手持ちの石けんで大丈夫。特別な石けんは必要ないです。」と答えています。些細なことですが、とても大切な情報なのです。

「青」はナイル川や空の色、誰もが情報を得られるように

拡声器を使うことで、最大で400メートル先まで音声が届くので、200世帯の家庭に情報を伝えることができます。自転車メッセンジャーの人々が活動する時間帯は、多くの人々が家の外にでて家事をしている朝と、人々が仕事場から自宅に戻る夕方です。

ユニセフ職員のアテム・ピーター広報官

©UNICEFSouthSudan/Ryeng

ユニセフ職員のアテム・ピーター広報官

ユニセフ職員のアテム・ピーター広報官は、青い自転車メッセンジャーの取り組みが始まった当初から関わっているスタッフのひとりです。「シンボルカラーを青色にしたのは、私たちの生活にとってとても大切なナイル川の水が青色だからです。水は私たちに命を与えてくれます。そして見上げる空も青く、どこまでも続いています。青色はそのような特別な意味を持っていると考えて、この取り組みのシンボルカラーにしました」とアテムさんはいいます。

「情報は人々の権利です。でも、南スーダンの人々にとって、自分たちの人生の選択をするための情報を得ることは、とても難しいのが現状です。だからこそ、私たちは「青い自転車メッセンジャー」を始めたのです」(アテムさん)

「情報共有」が広がることを願って

青い自転車メッセンジャーのボランティアのひとり、アニエール・マルアルさんは、「新型コロナウイルスの危機の中で、何か人の役に立つことをしたかったの」と、ボランティア参加の動機を語ります。

©UNICEFSouthSudan/Ryeng

青い自転車メッセンジャーのボランティアのひとり、アニエール・マルアルさん。

「私の文化では、女の子が自転車に乗ることはあまり良いとされません。けれど、必要なことなのであれば、喜んでやりたいと思っています。

人々に新型コロナウイルスに関する情報を伝えています。私にとって、この活動は単なる感染予防の啓発ではありません。私たちの国の課題である「情報共有」がもっと広がるようにする、長期的な取り組みでもあるのです」とアニエールさんは話します。

啓発活動を南スーダン全土で

南スーダンで、予防接種のために子どもを連れてきた母親たちに、コロナウイルス感染予防の方法について伝える保健スタッフ。

© UNICEF/UNI315509/Ongoro

南スーダンで、予防接種のために子どもを連れてきた母親たちに、コロナウイルス感染予防の方法について伝える保健スタッフ。

現在、この活動に使用している、拡声器を装備した自転車は5台あります。保健省からさらに10台の自転車が提供されましたが、拡声器は備わっていませんでした。目標は、南スーダンの50州すべてで、のべ500台の自転車を走らせることです。そのためには、ボランティアの人々の協力と、自転車購入やメンテナンスなどの運転資金が必要です。

ユニセフは南スーダンの保健省とともに、人々の安全を守るため、新型コロナウイルスに対する正しい知識と予防対策の普及を目指して、南スーダン全土で様々な啓発活動を展開しています。

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