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日本ユニセフ協会
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米国への移民
おとなの同伴ない子どもへの保護強化を ユニセフ報告書

【2021年2月26日  ニューヨーク発】

ユニセフ(国連児童基金)は本日、新たな報告書『すべての子どものための架け橋(原題:Building Bridges for Every Child)』を発表し、おとなの同伴者のいない移民の子どもや保護を求める子どもたちが米国で適切に受け入れられ、ケアや支援サービスを受けられるようにするためには、新たなアプローチが必要であると訴えました。

おとなの同伴ない子どもへの保護強化を

報告書『すべての子どものための架け橋(原題:Building Bridges for Every Child)』

報告書『すべての子どものための架け橋(原題:Building Bridges for Every Child)』

この報告書は、生まれた場所や子どもだけで到着した理由などの背景に関わらず、すべての移民の子どもがケアと支援を受けるための助言を提示しています。

「毎年、何千人ものおとなの同伴者のいない移民や保護を求める子どもたちが、暴力や貧困から逃れ、もしくは家族と再会できることを願って米国に渡ってきています。これらの子どもたちは希望と可能性に満ち溢れていますが、世界で最も弱い立場にある子どもたちでもあります。

私たちの報告書は、米国政府とそのパートナーが、同伴者のいない子どもの受け入れ、ケア、保護のための長期的なビジョンを策定するために、米国および世界での経験をどのように活用できるかを示すロードマップを提供しています」とユニセフ本部プログラム局長サンジェイ・ウィジェセケラは述べました。

世界中で移動する多くの子どもたち、特に同伴者のいない子どもや保護者と離れ離れになった子どもたちに、子どもに配慮した適切な受け入れとケアを提供することは、世界的な課題であり、ユニセフにとっても重要な優先事項です。2020年1月、ユニセフと米国ユニセフ協会は、国際的な子どもの権利と保護、移民、米国内の児童福祉の世界を一つにするために、協働して「架け橋イニシアティブ」を立ち上げました。この取り組みは、ユニセフの世界的な専門的知見と、米国において世界の子どもの保護ニーズについてアドボカシーをして意識を高めてきた米国ユニセフ協会の経験を組み合わせたものです。

家族が一緒にいることを優先

グアテマラからニューヨーク州・ヘンプステッドまで移動した14歳のアナさん(左)、15歳のジェニファーさん(中央)、マリアナさん(右)三姉妹。母親と離れ離れになってから5年後に再会することができた。(2020年11月撮影)

© UNICEF/UN0373317/Murphy/Principle Pictures

グアテマラからニューヨーク州・ヘンプステッドまで移動した14歳のアナさん(左)、15歳のジェニファーさん(中央)、マリアナさん(右)三姉妹。母親と離れ離れになってから5年後に再会することができた。(2020年11月撮影)

米国には、保護を必要としている子どもたちを受け入れてきた長い歴史があるだけでなく、子どもたちが家族の保護下に置かれるように提唱してきた歴史があります。この新しい報告書とその助言は、保護を求める家族が一緒にいることを優先させるために米国政府が最近進めている措置と一致しています。

本報告書は、米国の政策立案者や実務を担う人々が、移民の子どもや保護を求める子どもたちにも同じレベルのケアと保護を拡大することで、その伝統を生かしていくよう後押しするものです。また、各国政府に対しては、子どもの移民の拘留を止め、米国内および地域全体で、家庭や地域社会に根ざした子どもの受け入れ、ケア、支援サービスを拡大することを強く求めています。

報告書は、米国および世界各地からの実践的な解決策と有用な実践例に焦点を当て、国際的な子どもの権利と保護、移民および国内の子ども福祉の世界をつなぐことを目指しています。また、米国および地域全体における、同伴者のいない移民の子どもたちの受け入れ、ケア、サービスが、それぞれの子どもたちの最善の利益のためにどのように構築されるかを説明しています。

また報告書では、中米北部から米国に単身で渡る子どもたちが入国し、受け入れとケアシステムを経て地域での暮らしに入っていくその旅路を追っています。

家族と安全に再会するため

10歳の時、ホンジュラスからニューヨーク州・ブレントウッドへ移動してきた16歳のジーソンくん。(2020年11月撮影)

© UNICEF/UN0373316/Murphy/Principle Pictures

10歳の時、ホンジュラスからニューヨーク州・ブレントウッドへ移動してきた16歳のジーソンくん。(2020年11月撮影)

「ギャングの暴力、恐喝、蔓延する貧困、学習や収入を得る機会の欠如は、中米北部の何百万人もの子どもたちや家族にとって日常のことです」とウィジェセケラは述べています。「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックやハリケーン「イータ」や「イオタ」を含む最近の自然災害は、状況をより厳しいものにしています。だからこそ私たちは、米国で子どもたちが保護を求め、家族と再会するための安全で合法的な経路の拡大を求めているのです」

報告書では、8つの包括的な政策提言を示しています。

  1. 公衆衛生上の予防措置を講じつつ、すべての子どもの守られる権利や、移民として保護を求め、家族と離れ離れにされず、また再会する権利を擁護すること。これには、正当な手続きなしにすべての子どもたちを押し戻し、強制的に追放することをやめることが含まれる。
  2. 子どもに配慮した国境および受け入れプロセスを強化する。
  3. 移民の拘留や施設でのケアに代わるものとして、家庭や地域社会に根ざしたケアとケースマネジメントを優先する。
  4. ケアにおける包括性、非差別性、公平性を確保し、ケアと保護の一貫した基準を確保するために、同伴者のいない子どものプログラムと、米国保健福祉省児童家族局(HHS/ACF)が監督する他の子ども向けプログラムとの連携を強化する。
  5. おとなの同伴者のいない子どものための制度の中核的な要素として、子どもの最善の利益をふまえた決定を確立し、そうした子ども一人ひとりが独立した子どもの権利擁護者であることを保証する。
  6. すべての子どもが、年齢と成熟度に応じて、居場所、ケア、サービスへのアクセスを含めた自分自身に影響を与えるすべての事項の意思決定に参加できるよう支援する。
  7. おとなの同伴者のいない子どもが家庭や地域社会での暮らしに移行する際に、それぞれの子どもが継続的なケアを受けられるように、受け入れ後のサービス、ケース管理、統合的な支援を拡大する。同伴者のいないすべての子どもが、入国手続き中の法的代理人制度を無料で利用できるようにする。
  8. 母国に戻ることが安全で最善の利益となるすべての子どものために、子どもに配慮した帰還・社会復帰支援を確保する。

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