【2021年3月26日 ニューヨーク発】
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックは、過去1年間で世界の16億人の子どもたちの教育を中断させました。ユニセフ(国連児童基金)、ジョンズ・ホプキンス大学、世界銀行は、現在行われている世界の対応を測るため、共同で『COVID-19 - Global Education Recovery Tracker(COVID-19世界教育復興追跡ツール)』を立ち上げしました。
© UNICEF/UN0425441/Dejongh |
本日公開されたこのツールは、200以上の国と地域における学校再開および教育復興計画の取り組みを追跡することで、各国の意思決定を支援するものです。
このツールでは、4つの主要分野の情報を記録し、紹介しています。
本追跡ツールは、ジョンズ・ホプキンス大学がCOVID-19の症例、検査、ワクチン接種に関する質の高いデータを収集する上で重要な役割を果たしていることに加え、ユニセフと世界銀行がパンデミックの間各国への政策・実務支援において戦略的な役割を果たしていることを踏まえて開発されました。
© UNICEF/UN0423074/Grigoryan |
2021年3月初旬までのデータによると、51カ国では完全に対面式の授業に戻っています。一方で90カ国以上の国では、開校している学校もあれば休校している学校もあり、また多くの国では対面式とリモート式の混合型学習の選択肢が提供されているなど、生徒たちは複数の方法で指導を受けています。
地域的には、学習形態の変化が見られます。中東と北アフリカでは、ここ数週間で学校の多くが休校となり、リモート式学習が引き続き主流となっています。しかし、サハラ以南のアフリカでは、ほとんどの生徒が実際に学校に通っています。東アジア・太平洋地域では、ソーシャルディスタンスをとることを徹底しながらも、対面式の授業がほぼ再開されています。南アジア、中央アジア、ヨーロッパでは、インフラが整っているところでは、リモートと対面との混合方式が主にとられています。ラテンアメリカでは、リモート式、混合型、対面式など、さまざまなアプローチがとられています。しかし、大多数の学校では、対面式授業の一部またはすべてが中止されており、リモート式授業が最も多く利用されています。
© UNICEF/UNI395302/Raab |
世界銀行の教育担当グローバル・ディレクターであるJaime Saavedraは、「パンデミックから1年が経過し学校教育の中断が続く中、COVID-19以前の低・中所得国で53%であった学習貧困率(10歳児が年齢に応じた短い文章を読めない割合)は、63%まで高まる可能性があります。多くの国で、生徒と教師は緊急に支援を必要としています。各国がどのような取り組みを行っているのかについてのデータを収集・モニタリングすることは、今後必要な支援の規模を理解する上で極めて重要です」と述べました。
本追跡ツールは、学校の運営状況だけでなく、生徒がどのようにサポートされているかも追跡します。特に、初等教育における学校の年間スケジュールの変更、個別指導、補習などが含まれます。これらの対策は、全世界の学齢期の子どもたちの95%の学習と生活に影響を与えた1年を経て、教育の回復プロセスの重要な要素となります。
© UNICEF/UN0432407/COVAX/Fauzan Ijazah |
COVID-19ワクチンが入手可能な国では、優先グループとして教員が対象となるかどうかをツールで追跡しています。3月初旬の時点で、低・中所得国では、優先グループとしての教員の予防接種はほとんど行われていません。ワクチン情報が得られた130カ国のうち、3分の2以上の国では、現在、ワクチン接種の優先グループに教員を含めていません。
ユニセフ本部教育チーフのロバート・ジェンキンスは、「世界各地でワクチンの接種が始まっていますが、世界の何億人もの学齢期の子どもたちにとって、このパンデミックの影響がなくなるには程遠い状況です。私たちは学校の再開を優先しなければなりません。第一線の医療従事者やリスクの高い人々がワクチンを接種した後は、教師にCOVID-19ワクチンを優先的に接種するべきです。このような決定は、最終的には難しい選択を担う政府に委ねられますが、私たちは次世代の未来を守るために全力を尽くさなければなりません。そのためには、子どもたちの未来を拓く責任を担う人々を守ることから始めなければなりません」と述べました。
この追跡ツールは、COVID-19への対応に取り組む政策立案者や研究者にエビデンスを提供することを目的としています。過去数カ月間の取り組みの傾向を示す一方で、新たな問題に柔軟に対処できるようにつくられました。
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