【2021年4月6日 ニューヨーク発】
ユニセフ事務局長ヘンリエッタ・フォアは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のワクチンの公平なアクセスの実現について、以下の声明を発表しました。
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© UNICEF/UN0435510/Keïta |
1年あまりの間に、世界の科学者、ビジネス界、政府、多国間機関等が力を結集し、これまでになかったことが実現しました。世界を停止させたウイルスに対抗するためのワクチンを作り、そのワクチンを記録的な早さで安全にテストし、輸送し、投与し始めたのです。これは驚くべきことです。
しかし、この闘いはまだ終わっていません。世界中で変異種が出現しており、そのたびに世界的に大規模な後退のリスクが生じています。
今のペースでは、需要に見合うワクチンが供給されないだけでなく、供給されたワクチンがあまりにも少数の人に集中しています。国民に複数回ワクチンを接種できるだけの量を契約している国があれば、まだ初回分さえ受け取れていない国もあります。これは、私たち全員を脅かすものです。このままではウイルスとその変異種が勝ってしまうのです。
ウイルスに先手を打ち、この状況を打開するためには、最前線で働く人々にワクチンを接種するという戦略をもとに、すべての人に公平なアクセスを真に可能にする方策を推進しなければなりません。ユニセフは、政府、ビジネス界、パートナーに対して、三つの緊急行動をとることを求めます。
© UNICEF/UN0434384/Hrant Marinosyan/Ministry of Health/Armenia |
第一に、知的財産権保有者による自主的かつ積極的なライセンス供与により、知的財産権を簡素化することです。しかし、これだけでは生産量は増えません。医薬品と異なり、ワクチンの製造は、複数の要素や段階を含む複雑な製造プロセスとなっています。知的財産権の保有者は、ライセンスに付随する技術パートナーシップを提供し、積極的にノウハウを共有し、不当な地理的・数量的制限なしに製造業者に下請けに出すべきです。この課題には、強制的なライセンス放棄ではなく、積極的なパートナーシップと協力が必要です。ファイザーとビオンテック、アストラゼネカとインド血清研究所(SII)、ジョンソン・エンド・ ジョンソン(J&J)とメルク、さらにJ&Jとアスペンなど、最近の製造業者とのパートナーシップは心強い例です。ユニセフは、製造能力の規模と地理的な多様性を高めるために、他の企業もこれにならうよう求めています。
市場だけではイノベーションがすべての人に恩恵をもたらすことを保証することはできませんが、自主的なライセンス供与、プールファンド、COVAXのような多国間メカニズムは、製品開発者とメーカーが協力してイノベーションを起こし、公平なアクセスを促進するための効果的かつ現実的な方法です。
第二に、ワクチンのナショナリズムをなくさなければなりません。各国政府は、COVID-19ワクチン、原材料、物資の輸出を妨げたり、制限したり、遅らせたりする直接的、間接的な輸出入規制措置を撤廃すべきです。ウイルスに国境はありません。私たちの母国でCOVID-19を打ち負かすことは、すべての人にワクチンと物資の安定した供給を確保することで、世界中でCOVID-19を打ち負かすことを意味するのです。
© UNICEF/UN0431831/Seng |
最後に、今年、成人人口全員にワクチンを接種するために必要な量よりも多くの将来接種分を受け取る契約をしている政府は、2021年分の余剰契約分の大部分またはすべてを直ちにCOVAXに貸与、引き渡し、あるいは寄付し、他の国に公平に割り当てられるようにしていただきたいと思っています。
さらに、製造されたワクチンが十分に供給されている国は、利用可能なワクチンの少なくとも5パーセントを直ちに寄付することを検討し、年間を通じて継続的に、供給量の増加に応じて寄付量を増やしていくことを求めます。このような寄付の約束をすることで、将来の予測可能性が高まり、公平なアクセスが促進され、世界のワクチン市場の安定化につながります。
パンデミックにおいては、すべての人が安全になるまで誰も安全にはなりません。しかし、COVID-19ワクチンへの公平なアクセスは私たちの手の届くところにあります。世界が結集すれば、考えられないようなことも実現できるとすでに証明されています。実現できたなら、私たちの生活も、子どもたちの生活も、元通りになるでしょう。
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