【2021年5月25日 ニューヨーク発】
世界各地の紛争地で、水と衛生に関連する施設やそこに従事する人々が攻撃され、その結果何百万人もの子どもたちの命が危険に晒され、子どもや家族が重要な水・衛生サービスを利用できない状況が続いていると、ユニセフ(国連児童基金)は本日警鐘を鳴らしました。
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ユニセフが本日発表した報告書『戦下の中の水 第3部:武力紛争下の水・衛生サービスへの攻撃と子どもたちへの影響(原題:Water Under Fire Volume 3: Attacks on water and sanitation services in armed conflict and the impacts on children)』の中で取り上げた中東、アフリカ、アジア、ヨーロッパの9カ国*では、子どもを含む約4,800万人が安全な水と衛生サービスを必要としていると推定しています。
水・衛生サービスを守ることは、何百万人もの子どもたちの生存に不可欠です。不安定な状況にある国々では、5歳未満児が下痢性疾患で死亡する確率は、暴力で死亡する確率の20倍にもなります。
ユニセフ本部緊急支援局局長のマニュエル・フォンテーンは、「水へのアクセスは生きる手段であり、戦争の手段として使われてはならないものです」と述べました。「水・衛生インフラへの攻撃は、子どもたちへの攻撃です。水の流れが止まれば、コレラや下痢などの病気が山火事のように広がり、致命的な結果を招くことも少なくありません。病院は機能せず、栄養不良率が上昇します。子どもや家族は水を求めて外に出なければならず、特に女の子は危害を加えられたり暴力を受けたりする危険性が高まります」(フォンテーン)
© UNICEF/UN0432322/Volskyi |
本報告書では、武力紛争に苦しむ国々において、水・衛生インフラが攻撃されたり、破壊されたり、制御されたり、あるいは制限された場合に、子どもや家族が受ける甚大な影響を検証しています。またユニセフが対応しているほぼすべての紛争による緊急事態において、子どもたちの水へのアクセスが脅かされていることを明らかにしています。
ウクライナ東部: 今年はじめからすでに給水インフラへの攻撃が4回あり、2017年以降380回の攻撃が記録されています。約320万人が水・衛生サービスを必要としています。
イエメン: 長引く紛争が6年目に入った同国では、2015年3月から2021年2月までの間に、給水インフラへの空爆が122回行われました。およそ1,540万人が安全な水と衛生設備を緊急に必要としており、コレラの流行が続いていることで毎週何千人もの子どもたちが病気になっています。
パレスチナ: 2019年以降、パレスチナでは142カ所の水・衛生インフラに対して95回の攻撃が行われています。160万人以上の人々が、これらの基本的なサービスを利用できずに暮らしています。
イラク: 数十年にわたる情勢不安により、水・衛生インフラは甚大な被害を受け、185万人が命を守るための飲料水や安全な衛生設備への安定したアクセスを断たれています。
シリア: この10年の紛争でインフラが破壊されたことにより、約1,220万人もの人々が水と衛生設備へのアクセスを必要としています。
© UNICEF/UN0405701/Akacha |
紛争下にある子どもたちを早急に保護し、安全で十分な水へのアクセスを保証するため、ユニセフは以下のことを呼びかけています。
ユニセフは、紛争の影響を受けている国々で、子どもたちを保護し、安全な飲み水と適切な衛生サービスを提供するために、水システムの改善や修理、水のトラック輸送、トイレの設置、衛生習慣の啓発などを行っています。2020年には、ユニセフは120カ国で水と衛生分野の緊急対応を主導し、3,900万人に清潔な水を、700万人近くに衛生サービスを提供しました。
*9カ国: 中央アフリカ共和国、イラク、リビア、パレスチナ、パキスタン、スーダン、シリア、ウクライナ、イエメン
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