2022年3月15日ニューヨーク発
紛争下にあるウクライナから帰国したユニセフ(国連児童基金)広報官のジェームズ・エルダーが、ジュネーブで行われた国連の定例記者会見で報告した要旨を、以下の通りお知らせします。
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1分に55人の子どもが難民
2月24日以降、ウクライナでは本当に多くの子どもたちが殺されています。負傷した子どもたちの数は、さらに多くなっています。そして、150万人以上の子どもが国外への避難を余儀なくされています。
平均すると、ウクライナにおける紛争が激化してから、毎日7万5,000人以上の子どもが難民になっているということです。毎日です。さらに平均すると、衝撃的な数字が出ました。1分あたり、55人の子どもがウクライナから避難しています。つまり、1秒あたりほぼ1人のペースで、ウクライナの子どもたちが難民になっているのです。
この難民危機は、第二次世界大戦以降、類を見ないスピードと規模で広がっており、その勢いが衰える気配はありません。
子どもの保護を切実に必要
紛争によって故郷を追われたすべての子どもたちと同様に、近隣諸国への避難を余儀なくされたウクライナの子どもたちも、家族と離ればなれになったり、暴力、性的搾取、人身売買などの大きなリスクにさらされたりしています。特に、おとなの同伴者がいない子どもや家族と離ればなれになった子どもは、安全、安心、子どもの保護サービスを切実に必要としているのです。
この大惨事から最も安全かつ迅速に抜け出す方法は、一つしかありません。それは、この紛争を今すぐにでも終わらせることです。それまでは、民間人が暮らす地域や民間インフラへの攻撃は止めなければなりません。
人の命が奪われています。
膨大なニーズがあるにもかかわらず、人々は重要な保健・医療サービスを利用できません。
子どもたちは学校に通うことができません。
数百万人の子どもがウクライナの紛争地域に取り残されています。
西部リヴィウに逃れる人も
私はこの2週間、ウクライナ西部のリヴィウで、命からがら逃げてきた母親、父親、子どもたち、そして彼らを助けようと最前線にいる人々に話を聞きました。
キエフの病院から一晩で60人もの子どもを受け入れたリヴィウの小児科医に、どのような準備をしていたのかと尋ねると、優先順位のつけ方を訓練していたと説明されました。紛争で傷ついた子どもたちが大勢運ばれてきたら、医師たちはシールを使って治療の優先順位を決めるのです。緑のシールはとりあえず様子を見る、黄のシールは今すぐ医療支援が必要、赤のシールは重症、黒のシールはもう助からない、というように。
国境を越えた支援を
ユニセフは、ウクライナの現地にチームを派遣し、必要な支援物資を送り続けています。先週末には、追加の支援物資がウクライナに到着しました。今回はトラック22台に168トンの物資が積まれ、この物資には、助産キット、外科キット、産科キット、酸素濃縮器、保冷ボックス、毛布、冬服、水、衛生キット、尊厳キット、幼児教育キット、思春期キットなどが含まれています。
また、移動式子ども保護チームは、ウクライナ全域の子どもたちの保護と心理社会的サービスを拡大するため、9チームから47チームへと人員を増やしています。
私たちは、ウクライナにいる子どもたちだけでなく、国境を越え、150万人の難民の子どもたちにも支援を提供しています。人道支援パートナーや地元当局と協力し、子どもやその家族に重要な支援と保護サービスを提供するために、「ブルードット」という支援拠点を次々と設置しています。チャットボットからFacebookまであらゆる手段を利用し、安全やおとなの同伴者がいない子どもたちに関してメッセージを発信し、難民センターに衛生用品を届けました。
しかし、これだけははっきりさせておかなければなりません。ボランティアのおばあさんたちからウクライナ政府、最前線で活動している人々から国連機関まで、あらゆる人々が不断の努力をしたとしても、この紛争が続く限り、ウクライナの子どもたちの状況は悪くなる一方だということです。
■ユニセフ「ウクライナ緊急募金」ご協力のお願い
8年にわたって続く東部地域の紛争や、昨今の武力行為の激化の影響を受けるウクライナの子どもたちのために、ユニセフは緊急支援を行っています。その活動を支えるため、日本ユニセフ協会は、ユニセフ「ウクライナ緊急募金」を受け付けております。
水や電気を絶たれたり教育の機会を奪われたり、避難を余儀なくされるなど、紛争による直接的・間接的な影響を受ける子どもたちをはじめ、最も支援を必要としている子どもたちとその家族に支援を届けるため、ご協力をお願い申し上げます。