2022年6月23日ニューヨーク/ジュネーブ発
本日発表されたユニセフ(国連児童基金)と世界保健機関(WHO)の共同監査プログラム(JMP)による最新報告書「学校における衛生施設と飲料水の前進(原題:Progress on drinling water, sanitation and hygiene in schools)」によると、基本的な水と衛生サービスのない学校の割合は着実に減少しているにもかかわらず、いまだに国家間で、またひとつの国の中にも大きな格差が存在しています。
後発開発途上国(LDCs)や不安定な状況の中で暮らしている学齢期の子どもたちが最も影響を受けており、新たなデータによると、障がいのある人が利用できる水と衛生サービスを備えている学校はほとんどないことが判明しています。
学校で水と衛生サービス不足
ユニセフの水と衛生および気候・環境・エネルギー・災害リスク軽減部長のケリー・アン・ナイラーは、「安全な飲料水、清潔なトイレ、手洗い用の石けんがない学校に通う子どもたちがあまりにも多く、学習が困難になっています。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックによって、健康的で包括的な学習環境を提供することの重要性が浮き彫りになりました。子どもたちの教育を守るために、現在そして今後も感染症と戦うための最も基本的なサービスを学校に用意することが復興への道のりに不可欠です。
学校は健康的な習慣や行動の形成を促進する上で重要な役割を担っていますが、2021年にはまだ多くの学校で基本的な水と衛生サービスが不足しています。本報告書による最新データは、以下の通りです。
- 世界で、水と衛生に関する基本的なサービスや設備が提供されていない学校の割合と、それによって影響を受けている学齢期の子どもの数はそれぞれ、基本的な飲料水サービス:29%、5億4,600万人、基本的な衛生設備(男女別の改善されたトイレ):28%、5億3,900万人、基本的な衛生サービス(石けんと水を備えた手洗い設備):42%、8億200万人。
- 学校で基本的なサービスを受けられない子どもの3分の1はLDCsで暮らしており、半数以上が不安定な状況に置かれている。
- 学校における基本的なトイレや手洗い設備の普及率が50%未満の地域はサハラ以南のアフリカとオセアニア、学校における基本的な飲料水サービスの普及率が50%未満である唯一の地域はサハラ以南のアフリカである。
- 2030年までに世界のすべての学校で水と衛生サービスの普及を達成するには、現在の進捗率をそれぞれ上げる必要がある。(基本的な飲料水:14倍、基本的な衛生設備(トイレ):3倍、基本的な手洗い設備:5倍)
- LDCsや不安定な状況下で、2030年までにすべての学校で改善されたトイレの普及を達成するには、現在の進捗率をLDCsでは100倍以上、不安定な状況においては50倍以上にする必要がある。
- パンデミックへの備えと対応を改善するためには、学校における水と衛生や、清掃、消毒、廃棄物処理などの感染症の予防と管理(IPC)の要素をより頻繁に監視する必要がある。
障がい者用トイレほぼ普及せず
学校で障がいのある人が利用しやすい水と衛生サービスを提供することは、すべての子どもたちのインクルーシブな学習を実現する上で重要なことです。しかし、この指標を報告している国は限られており、国の定義も様々で、障がいのある人が利用しやすい水と衛生サービスを提供している国は、はるかに少ないのが現状です。
新しい国別データによると、障がいのある人が利用できる水と衛生サービスの普及率は低く、学校のレベルや都市部と農村部の場所によって大きく異なる。学校では、利用できるトイレや手洗い設備よりも、利用できる飲料水がある可能性が高いことが判明している。
- データのある国の半数で、障がい者用トイレがある学校は4分の1以下である。例えば、イエメンでは、トイレがある学校は10校中8校だが、障がい者用トイレがある学校は50校中1校にすぎない。
- データのあるほとんどの国で、障がい者用トイレよりも、スロープ、支援機器、教材のような障がいのある人に適応したインフラや物を所有している学校が多い。例えば、エルサルバドルでは、5校中2校がそうしたインフラや物を所有しているが、障がい者用トイレがある学校は20校中1校にすぎない。