2022年10月21日イスラマバード(パキスタン)発
パキスタンで発生した壊滅的な洪水の影響を受け、シンド州とバローチスターン州の洪水被災地の保健施設に収容された5歳未満の子どもの少なくとも9人に1人が、重度の急性栄養不良に陥っているとの報告に、ユニセフ(国連児童基金)は警鐘を鳴らしました。
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子ども約160万人が治療必要
2022年9月以降、洪水被災地の保健施設で保健専門家によるスクリーニングを受けた2万2,000人以上の子どものうち、2,630人以上、つまり9人に1人以上の子どもが重度の急性栄養不良と診断されました。重度急性栄養不良は、重度消耗症とも呼ばれ、子どもたちが身長に比して痩せすぎで、その結果、免疫機能が低下し、生命が脅かされる状態のことを指します。
国が実施した最新の栄養調査における栄養不良の有病率に基づく推計によれば、シンド州とバローチスターン州の洪水被災地では、160万人近くの子どもが重度の急性栄養不良の状態にあり、緊急に治療を必要としている可能性があります。栄養不良の妊婦は、栄養不良になる低体重児を出産するリスクがあります。
「この緊急事態にあたり、警鐘の音が大きすぎることはありません」と、ユニセフ・パキスタン事務所代表のアブドゥラ・ファディルは述べています。「私たちは、何百万人もの子どもたちの生命を脅かす、栄養不良の緊急事態に直面しています。迅速に行動を起こさなければ、子どもたちの発達と生存を脅かす悲惨な結果を招きかねません。これまでの国際社会の支援に感謝しています。しかし、子どもたちの命を守るためには、さらに多くの支援が必要です」
命を守る栄養サービス提供
壊滅的な洪水が起こる前から、洪水の被害を受けた地区に住む子どもたちの半数の発育は阻害されていました。発育阻害は、子どもたちの成長と身体・認知の発達を妨げる不可逆的な状態です。また、4割以上の母親が貧血に苦しんでいました。洪水被災地の700万人以上の子どもや女性を含め、パキスタン全土で2,500万人以上の子どもや女性が、基礎的な栄養サービスをすぐに受ける必要があります。
ユニセフは現地で、重度の急性栄養不良に苦しむ子どもたちに、すぐに食べられる栄養治療食の供給など、命を守るための栄養サービスを提供しています。パキスタン政府やその他のパートナー機関と共に、ユニセフは、重度の急性栄養不良やその他の栄養不良の症例の予防、特定、治療のために271の外来治療センターを設置しています。ユニセフはまた、洪水の被害を受けた84の地区で、73の移動保健チームを通じて栄養サービスを拡大し、子どもの命を守るために不可欠な保健、水・衛生、子どもの保護に関する支援と合わせて取り組んでいます。
安全な飲料水と衛生設備がないと、不衛生な水が下痢を引き起こし、子どもたちが生きていくために必要な栄養素を摂取できなくなるため、衰弱するリスクが高くなります。500万人以上の人々が飲むことのできる安全な水源を、600万人以上の人々が家庭用衛生設備を失っています。その結果、野外で排泄をする人の割合は被災した人口に対し、洪水前の5分の1から洪水後の3分の1以上へと増加しました。同時に、水を媒介とする疾病が子どもや家族の間で急速に広まり、急性水様性下痢症、マラリア、デング熱、皮膚疾患、呼吸器感染症などの症例も急増しています。
栄養支援の資金が不足
これに対し、ユニセフは毎日200万リットルの安全な飲料水を届け、水道設備の復旧、衛生キットの配布、衛生サービスの提供などを行っています。
ユニセフは資金要請を1億7,530万米ドルに上方修正し、そのうち3,500万米ドルを命を守る栄養サービスに、5,800万ドルを必要な水・衛生サービスに充当することにしました。パキスタンの子どもたちと家族の命を守るための支援に必要な総要請額に対し、わずか13%しか資金は集まっていません。
ユニセフは、以下のことを呼びかけています。
- 700万人以上の子ども、少女および女性たちに必要な栄養サービスを、500万人以上の人々に安全な飲料水を、そして600万人以上の人々に必要な衛生サービスを届けるための、国際社会の協力。
- 政府の保健提供サービスに栄養サービスが統合されること、また、栄養のための予算の長期的増加。
■ユニセフ「自然災害緊急募金」ご協力のお願い
地震や津波、洪水、台風やサイクロン、干ばつなどの自然災害に苦しむ子どもたちのために、ユニセフは緊急支援を行っています。
その活動を支えるため、日本ユニセフ協会は、ユニセフ「自然災害緊急募金」を受け付けております。
パキスタンでの洪水の影響を受けた子どもたちを含む、最も支援を必要としている子どもたちとその家族に支援を届けるため、ご協力をお願い申し上げます。