2022年11月18日ニューヨーク発
子どもに対する人種、民族、言語や宗教に基づく差別が世界中の国々で子どもたちに影響を及ぼしていることが、11月20日の「世界子どもの日」に先駆けて発表されたユニセフ(国連児童基金)の新たな報告書で明らかになりました。
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報告書「否定される権利――子どもたちへの差別の影響(原題:Rights denied: The impact of discrimination on children)」では、人種等に基づく差別が子どもたちの教育、健康、出生登録や公正で平等な司法制度へのアクセスにどの程度影響しているかを示し、少数民族やマイノリティの子どもたちの間に広がる格差を浮き彫りにしています。
ユニセフ事務局長のキャサリン・ラッセルは、「構造的な、人種等による差別は、子どもたちを一生続くかもしれない困窮と排除のリスクにさらします。これは社会全体を傷つけるものです。誰であれ、どこの出身であれ、すべての子どもの権利を守ることが、すべての人にとってより平和で豊かな、そして公正な世界を築くための最も確実な方法なのです」と述べています。
教育などのアクセスに差
報告書によれば、22カ国を分析した結果、少数民族・言語・宗教の子どもたちは、読解力において同年代の子どもたちに大きく遅れをとっていることが明らかになりました。平均して、最も恵まれているグループの7歳から14歳までの生徒たちは、これらの最も不利な立場に置かれているグループの生徒たちに比べて、基礎的な読解力を備えている可能性が2倍以上高いのです。
基本的な権利を享受するための必須条件である出生登録が行われている子どもの割合に関するデータを分析したところ、異なる宗教や民族の子どもたちの間で大きな格差があることがわかりました。例えば、ラオスでは、少数民族であるモン・クメール語族の5歳未満の子どもの59%が出生登録されているのに対し、ラオ・タイ族では80%となっています。
差別と排除は子どもの健康や栄養、学習の成果を低下させ、投獄される確率や10代の少女が妊娠する確率を高め、成人してからの就業率や収入を低下させるなど、世代間の困窮と貧困を深めます。
新型コロナウイルス感染症は世界中で根深い不公正と差別を露呈させ、気候変動と紛争の影響は多くの国ですでに存在していた不公平をさらし続けています。報告書は、予防接種、水と衛生サービス、公正な司法制度へのアクセスなどをめぐって、少数民族やマイノリティの何百万人もの子どもたちにとって、差別と排除がこれまでいかに長く続いてきたかを浮き彫りにしているのです。
すべての子どもに平等な権利を
例えば報告書によると、米国における生徒への懲戒に関して、黒人の子どもは白人の子どもに比べて4倍近くも停学処分を受けやすく、学校関連の案件で逮捕される可能性も2倍以上あります。
また、この報告書は、子どもや若者が日常生活の中で差別の重荷を感じていることを明らかにしています。40万7,000以上の回答を得た、ユニセフが開発したメッセージ・アプリ「U-Report(ユー・レポート)」を使った最新の調査では、3分の2近くが自分の周りでは差別がよく起きていると感じ、半数近くの回答者が差別は自分や知り合いの人生に大きな影響を与えたと感じていることがわかりました。
ラッセル事務局長は、「世界子どもの日に、そして毎日、すべての子どもには、受け入れられ、保護され、持って生まれた能力を最大限に発揮する機会を平等に持つ権利があります。私たち一人ひとりが、国や地域社会、学校、家庭、そして自分の心の中で、子どもに対する差別と闘う力を持っているのです。私たちはその力を使う必要があるのです」と述べています。