2022年11月18日アンマン(ヨルダン)発
11月20日は「世界子どもの日」です。そして、すべての国が守るべき普遍的な基準を定めた「子どもの権利条約(児童の権利に関する条約)」が採択された日です。条約の原則には、差別のないこと、子どもに関わることを行う際の「子どもの最善の利益」、子どもたちが意見を表明できること、そして何より、子どもたちが生まれながらにもっている「生きる権利」があるのです。
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暴力に直面する子どもたち
世界子どもの日が近づく中で、中東・北アフリカ地域の子どもたちは、暴力の一層の増加に直面しています。今年に入ってから580人近くの子どもたちが、この地域のいくつかの国々でまん延する紛争や暴力で殺されており、週平均で10人以上の子どもたちが命を落としていることになります。さらに多くの子どもたちが負傷しています。これは受け入れがたい現実です。
イラン、イラク、リビア、スーダン、シリア、イエメンなどの国々やイスラエル-パレスチナ間の紛争地域では、長引く紛争、民族間の武力衝突、爆発物や戦争残存物、および政治・社会不安によって、子どもたちが甚大な影響を受け続けています。
まさに今週、シリア北部のアルホル難民キャンプで2人の少女が無残に殺害されているのが発見されました。これはこのキャンプで起きている恐ろしい暴力行為の最新の事例にすぎません。イエメンでは、国連が後押しした停戦により、紛争は沈静化し犠牲者の数は大幅に減少しましたが、停戦は10月に期限切れとなり、子どもたちは引き続き戦闘にさらされています。スーダンでは、青ナイル州と西コルドファン州での紛争により、子どもたちが再び脆弱な立場に置かれ暴力にさらされています。
イランでは、子どもたちが死傷したり、拘束されたりしているとの報道に、ユニセフ(国連児童基金)は、引き続き深い憂慮を抱いています。公式なデータではありませんが、9月下旬以降、イランでは推定50人の子どもたちが市民の混乱の中で命を落としたといわれています。その最新のケースとして、家族と一緒に車に乗っていた10歳のキヤンさんが撃たれて死亡しました。これは恐ろしいことであり、止めなければなりません。
子どもたちに生きる権利を
今週初め、パレスチナのラマッラ近郊で14歳の女の子が殺されました。これにより、パレスチナで紛争や暴力により命を奪われた子どもの数は今年に入ってから49人となりました。リビアでは、年初にトリポリで起きた暴動で少なくとも3人の子どもが死亡しました。一方、イラクでは、過去の紛争で使用された爆発物が、現在も子どもの命を危険にさらしており、今年に入ってから65人の子どもが死傷しています。
ユニセフは、子どもたちが暴力や紛争の重い代償を払い続けていることに警鐘を鳴らしています。子どもの権利条約の締約国は、紛争や暴力の状況下にある子どもたちを保護し、子どもたちの生きる権利と意見を自由に表明する権利を保障する義務を負っています。
子どもたちが暴力から保護される権利は、いかなる時も、すべての紛争当事者によって守られなければなりません。暴力は決して解決策にはならず、子どもに対する暴力は決して擁護できないのです。
注記:
子どもの権利条約は、歴史上最も多くの国に批准されている人権条約です。過去33年間で196カ国がこの条約の締約国となりました。
「世界子どもの日」は、ユニセフが提唱する、子どもによる子どものための世界的な行動の日です。毎年11月20日、子どもの権利条約(CRC: Convention on the Rights of the Child)採択記念日と共に祝われるこの日は、権利を否定されている何百万人もの子どもたちについての認識向上と、彼らの未来についての議論に欠かせない子どもと若者たちの意見表明を高めることを目的としています。