2022年12月13日ニューヨーク発
ユニセフ(国連児童基金)が本日発表した報告書「デジタル学習の動向(原題:Pulse Check on Digital Learning)」によると、新型コロナウイルス感染症のパンデミック時に整備されたデジタル学習の利用が滞っており、各国が構築したプラットフォームの3分の1が完全に閉鎖されているか、更新されていない、または機能不全に陥っているため、子どもたちの教育の遅れを取り戻すことを手助けする学習手段が制限されていることが明らかになりました。
報告書は、質が高くインクルーシブで公平なデジタル学習の機会が効果的に計画され促進されれば、他の学習手法を補完し、パンデミックや既存の学習危機の間に生徒たちが学びそこなったものを取り戻すのを助けることができる、と述べています。
デジタル学習の現状を調査
この報告書は、教育システムの変革を目指し、方針と資金調達、プラットフォームとコンテンツ、教員と管理職、デジタルリテラシー、総合的な学習機会といった5つの重要項目に焦点を当て、デジタル学習の現状を調査しています。また、報告書では、ユニセフが教育とテクノロジーに関する研究機関である「EdTech Hub」と共に184カ国の471の全国的プラットフォームのマッピングを初めて行いました。
報告書は、デジタルプラットフォームの構築、優先順位の見直し、革新的なパートナーシップなどの好ましい傾向が多くの国で見られた、としています。しかし、活用の滞りにより、過去数年間に達成された進展が後戻りする危険性があります。主な調査結果は以下の通りです。
・世界の人口の半分が未だインターネットに繋がっていない環境にいるにもかかわらず、70%以上のプラットフォームがオフライン環境で利用できない。高所得国のプラットフォームの49%、低所得国のプラットフォームの18%しかオフラインで動作させることができない。
・67%のプラットフォームは、双方向性が生徒中心の学習の中核要素であるにもかかわらず、何らかのエンゲージメントが必要なコンテンツを提供しておらず、ビデオや教科書のPDFなどの静的コンテンツのみを提供しているものがほとんどである。
・障がいのある子どもたちが利用しやすい機能を備えているデジタル学習プラットフォームは22%のみである。その数少ない中においてさえ、ビデオに字幕を付けるなど、機能は基本的なものである。
・プラットフォームの85%は、中低所得国において最も一般的に利用可能な学習手段である携帯電話に対応している。
・84%のデジタル学習プラットフォームは、その国の言語(複数ある場合はすべて)で利用できる機能を提供している。
すべての子どもに平等な教育を
この報告書は、政策立案者、民間セクター、研究機関、国際機関、地方機関、市民社会に対し、教育への包括的アプローチを優先させるよう求めています。これには、国の政策や計画にデジタル学習を取り入れること、デジタル学習専用のリソースを増やすこと、デジタル格差と利用格差に取り組むこと、教員や管理職および学習者や養育者を訓練して力をつけさせること、楽しく教育的なコンテンツとさまざまなテクノロジーの組み合わせを通じて生徒それぞれの学習段階に応じること、が含まれます。
ユニセフ教育部門長のロバート・ジェンキンスは、「今日、各国政府は、世代全体の教育に失敗するか、教育システムを変革するためにデジタル学習を含む費用対効果の高い取り組みに流れを変えるような投資をするか、極めて重要な局面に立っています」と述べています。
ユニセフは、世界トップクラスのデジタルソリューションを通じて、すべての子どもたちに個々に応じた学習を提供できるよう、EdTech(教育においてテクノロジーを活用したあらゆる取り組み)推進に向けての公平なアプローチの最前線に立っています。これには、ユニセフらが教育変革サミットで立ち上げた、インクルーシブなデジタル学習プラットフォームとデジタルコンテンツの作成および強化を目的とした最新の複数パートナー・イニシアティブ「Gateways to Public Digital Learning」が含まれます。