2023年6月15日ポルトープランス(ハイチ)発
貧困とコレラの再流行に苦しむハイチでは、信じがたいほどの暴力行為がまん延しており、飢えや栄養不良が悪化し、過去最多の300万人近い子どもが人道支援を必要としています。
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子どもたちが直面する脅威と苦しみ
ユニセフ(国連児童基金)ハイチ事務所代表のブルーノ・マースは、「ハイチの子どもたちは、かつて経験したことのないほど過酷で危険な状況に置かれています。 子どもたちが直面する脅威と苦しみは、想像を絶するものです。子どもたちは保護と支援を切実に必要としています」と述べています。
武装集団が、主に首都ポルトープランスで、そして最近では近隣のアルティボニット県で、領有と支配を求めて住民を恐怖に陥れているため、子どもたちは銃撃戦に巻き込まれ、あるいは直接の標的にされています。
子どもたちは通学途上で命を落とし、怪我を負っています。女性や女の子は凶悪な性的暴力にさらされています。生徒、教師、保健医療従事者などの身代金目的の誘拐が急増し、学校への襲撃も起きています。暴力によって何万人もの人々が避難を余儀なくされています。
同時に、飢えや命を脅かす栄養不良が、ハイチ全土で記録的なレベルに達しており、とりわけ首都の最も貧しく、最も治安が悪く過密な地域に集中しています。そうした地域では、一部の家族は事実上孤立し、必要なサービスが受けられない状態に陥っています。命を脅かす栄養不良に苦しむ子どもの数は、昨年から30%増加し、全国で4人に1人近くが慢性的な栄養不良に苦しんでいます。
身を守るため武装集団へ加わる子も
暴力、貧困、絶望が、子どもたちを武装集団へと駆り立てています。首都ポルトープランスに住む多くの子どもや若者は、身を守るため、あるいは家族に食べ物や収入をもたらすために、武装集団へ加わることを強いられていると話します。また、武装集団がアイデンティティや帰属意識を与えてくれると言う子どもや若者もいます。
暴力、飢え、およびコレラなどの病気に加え、ハイチに暮らす子どもたちは、激しい嵐や地震の脅威に常にさらされています。6月上旬に、ハリケーンシーズンの始まりと同時に起きた大雨が、破壊的で致命的な洪水を引き起こしました。その数日後、2021年の地震の影響が今なお残るグランド・アンス県で、再び地震が発生しました。
ハイチは、基本的なサービス提供および人的資本の開発が不十分であるという課題に何十年も取り組んでおり、また極めて大きい不平等や、社会的疎外・排除といった問題とも闘っています。西半球で最も貧しく、最も開発が遅れている国であり、多重のショックに対処する能力を備えていないのです。
支援必要な子、過去最多の約300万人
ハイチでは今年、300万人近くの子どもたちが支援を必要としており、これは過去最多の数です。しかし、集まった資金は、人道支援に必要な額を大きく下回っています。ユニセフが今年ハイチでの活動のために必要とする2億4,600万米ドルのうち、集まった資金は15%未満にとどまっています。
ユニセフは、資金が不足している中でも、支援活動を強化し、現地での存在感を高めています。パートナーと共に命を守るための支援を提供し、子どもたちに不可欠なシステムとサービスの維持に努めています。ユニセフは、ワクチンや栄養治療食の配布、安全な水と衛生設備の提供、子どもたちが学校に通い続けられるための支援、暴力から逃れた人たちの保護に注力しています。また、システムが崩壊する恐れのある地域に、何千人もの新卒の教師や保健医療従事者を着任させるにあたり、そのサポートも行っています。
「課題は非常に多くありますが、人道支援は、壊滅的な飢えと栄養不良の状況の悪化を食い止めるのに役立っています。しかし、はるかに多くの支援が必要とされています。国際社会は、最も深刻な状況にあるハイチの子どもたちに背を向けることはできません」とマース代表は述べています。