2023年8月28日ジュネーブ/ニューヨーク発
本日、国連子どもの権利委員会は、清潔で健康的かつ持続可能な環境に関する子どもの権利を守るための、各国に向けた指針(「一般的意見」)を公表しました。深刻化する気候危機を受けて、同委員会は初めて、環境と子どもの権利に関し、子どもの権利条約に基づく締約国の義務についての包括的な解釈を示したのです。
気候変動に関する子どもの権利と環境
「一般的意見」は、国連子どもの権利委員会が、子どもの権利条約に定められた権利が特定のテーマや分野において何を意味するのかについて、法的指針を提供する文書です。このたび公表された「気候変動に焦点をあてた子どもの権利と環境に関する一般的意見26」(以下、GC26)は、気候危機や生物多様性の喪失、環境汚染を取り上げ、子どもたちの命や生活を守るために各国が何をしなければならないかを示しています。
GC26は、締約国には子どもの権利を差し迫った危害から保護する責任があるだけでなく、今日行った行為、あるいは行わなかった行為が、将来に引き起こすと予見される子どもの権利侵害に対しても責任がある、と明記しています。さらに、締約国は、国内で発生した環境被害だけでなく、国境を越えた環境破壊や気候変動による影響に対しても責任を問われる可能性があることも示しました。また、不利な状況に置かれた子どもたちが不均衡に大きな被害に直面している点には特に留意すべきとしています。
また、環境に関する意思決定において子どもの意見を考慮しなければならないとし、子どもたちが行動を起こし、環境被害から身を守れるようにするための環境教育が重要であることを強調しています。各国政府や国連機関、市民社会組織、そして子どもたち自身との広範な協議を含め、国際的かつ世代を超えた人々が参加し策定されました。
GC26の策定には、121カ国から延べ1万6,000人以上の子どもたちが、オンラインアンケートに意見を寄せるなどして参加しました。また、さまざまな地域出身の13人の子ども(11~17歳)で構成された「子どもアドバイザーチーム」が、子どもたちからの意見募集やGC26への反映等に役割を果たしました。国連レベルのこれまでの取り組みの中で、最も幅広い子ども参加の事例とされています。
日本の子ども1,500人も策定プロセスに参加
ユニセフは、世界の子どもたちがこのプロセスに参加することをサポートしました。その一環で日本ユニセフ協会は、2022年5月から6月にかけて、Yahoo!きっずの協力を得て、「子どもパブコメ2022」として、日本の子どもたちに参加を呼びかけ、「もっと子どもの意見をきいてほしい」「真剣に考えてほしい」「正しい情報を伝えてほしい」など、集まった1,500以上の意見を委員会に提出しました(以下はそのうちの一つ)。
「地球温暖化は、一人だけでは解決できない問題です。 だからこそ一人ひとりが問題を意識して生活を送る必要があると僕は考えます。自由に暮らす権利はあるけれども、気候変動や地球環境について考える義務がその時に生じます。一人だけ、またはどこかの国だけの問題ではありません。『地球上の大きな問題』です。解決するには世界の人々の『団結力』が必要です。世界の皆さんが協力していく必要があると思います」(11歳男子)
子どもアドバイザーの一人で、気候変動・子どもの権利の活動家である太平洋島嶼国出身の17歳のアニバさんは、GC26の公表にあたり、次のようにコメントしています。「私にとって、この一般的意見は、環境問題との闘いを前進させ、私たちの世代とその先の世代のために地球を守る世界的な行動を起こすために必要な、地球規模の変化を意味します。健康的な環境に対する権利を行使する上で、子どもたちに、より強い国際法の根拠をもたらすものです」
ユニセフの子ども権利・気候アドボカシー特別顧問であるパロマ・エスクデロは「気候に関する政策決定は、依然として子どもたちのニーズを軽視しています。これは変えなければなりません。この一般的意見は、教育、安全な水、健康的な環境に対する子どもの権利など、気候変動の影響を受ける子どもたちのあらゆる側面に関する行動を最優先するよう各国に緊急に要請しています。気候変動の危機は子どもの権利の危機でもあるのです」と述べています。