メニューをスキップ
日本ユニセフ協会

プレスリリース

気候危機の最前線に立たされる太平洋諸島の国々
ユニセフ事務局長、バヌアツとフィジーを訪問 子どものための気候変動対策への支援訴え

2024年7月19日スバ(フィジー)

気候変動の深刻な影響を受けているバヌアツとフィジーを訪問したユニセフ(国連児童基金)事務局長のキャサリン・ラッセルは、以下の声明を発表しました。

ユニセフ事務局長、バヌアツとフィジーを訪問

「気候危機は子どもの権利の危機」と書いたボードを手に持つ子どもたちとユニセフ事務局長のキャサリン・ラッセル。(バヌアツ、2024年7月16日撮影)

© UNICEF/UNI615027/Mobbs
「気候危機は子どもの権利の危機」と書いたボードを手に持つ子どもたちとユニセフ事務局長のキャサリン・ラッセル。(バヌアツ、2024年7月16日撮影)

太平洋諸島の国々全体が排出している温室効果ガス、すなわち地球を温暖化させているガスの量は、世界全体の排出量の0.1%以下です。しかしながら、今週私が訪問したバヌアツとフィジーを含めた太平洋諸島の国々とその子どもたちは、気候危機の最前線に立たされているのです。

バヌアツで私は15歳のカミラさんに会いました。太平洋地域をはじめ世界中にいる多くの若者たちが、海面上昇、より強力で発生頻度が増えている暴風雨、高まる気温の影響から、自分たちの未来を守るために行動を起こしており、彼女もその一人です。「私たちの旅はカヌーに乗るようなもの。すべての人にカヌーに乗って参加してほしいと私たちは思っています」と彼女は語ります。

しかし、今日、誰もがこの旅に参加しているわけではないことを彼女は知っています。世界は、そして特に世界のリーダーたちは、若者たちの声に耳を傾け、排出量を大幅に削減し、リスクを軽減し、地域社会が切実に必要としているレジリエンスを構築するための世界的な取り組みを強化しなければなりません。

ヌグナ島の小学校で、教頭のロッシー先生と話すラッセル事務局長。(バヌアツ、2024年7月16日撮影)

© UNICEF/UNI615024/Mobbs
ヌグナ島の小学校で、教頭のロッシー先生と話すラッセル事務局長。(バヌアツ、2024年7月16日撮影)

バヌアツにたくさんある島の一つ、ヌグナで、私は一人の教頭先生に会いました。ロッシー先生はかつて勤務したことがあり、2023年3月に相次いだサイクロンにより全壊した学校を見せてくれました。より強固な構造を持つ新しい校舎が内陸に建設中で、ほぼ完成しています。しかし、この島でずっと暮らしている36歳のロッシー先生は、気候変動はすでに島の人々の生活を根底から覆しつつあると話してくれました。「あらゆるものに影響が及んでいます。海面上昇や気象パターンの変化によって、農作物は枯れています。食べ物がない家庭の生徒もいます。以前はみんなが食べるのに十分な食料があったのに」。

バヌアツの子どもたちは、より頻繁でより強烈な暴風雨のために住む場所を変えなければならず、海水温の上昇はサンゴ礁や漁業資源に悪影響を及ぼし、生活や文化に打撃を与えています。バヌアツや他の太平洋諸国に住む人々の全世代が、故郷を追われる可能性が現実味を帯びてきています。

フィジーもバヌアツと同様の状況にあります。私がフィジーを訪問して話をした政府関係者や若者たちは、気候危機が自分たちの生活に何をもたらすかについて、まさに同じ懸念を表明していました。特に、貧困や、子どもたちが極めて高い割合で暴力を受けていることなど、他の問題をも増幅させています。

気候危機の最前線に立たされる太平洋諸島諸国

フォンガファレ島で、暴風雨により浸水した小学校の校庭を歩く子どもたち。(ツバル、2023年10月撮影)

© UNICEF/UNI561160/Bak Mejlvang
フォンガファレ島で、暴風雨により浸水した小学校の校庭を歩く子どもたち。(ツバル、2023年10月撮影)

太平洋諸島諸国に暮らす120万人以上の子どもすべてが気候危機の影響を受けており、子どもたちの健康、ウェルビーイング、そして生存そのものに影響を及ぼしています。地球温暖化を抑制するための排出量目標の達成へ向かう進捗が大幅に遅れ、災害リスクの軽減と適応のための資金が著しく不足している中、子どもたちの未来は、彼らの足を引っ張り続けている豊かな国々の意思決定者に大きく依存しています。

こういったことを受けてユニセフは、すべての国に対し、各国の気候変動対策計画の中で子どもをよりよく保護することを約束し、その計画を実現するために必要な資源を投入するよう呼びかけています。

しかし、率直に言って、現在の気候関連のコミットメントは、子どもたちを見捨てています。なぜなら、気候変動が子どもたちに及ぼす特異かつ不均衡な影響に対処していないからです。また、保健、教育、司法、食料システムなど、子どもたちに必要なサービスを十分に強化していません。すべての子どもと若者の権利や利害関係者および変革の推進者としての役割を包含していません。私たちには、より大胆で革新的な一歩が必要なのです。

太平洋地域では、ユニセフが、「トゥデイ・ アンド・トゥモロー」イニシアティブという革新的な資金調達方法を展開しています。このイニシアティブは、気候変動と災害リスクを統合した世界初の資金調達メカニズムであり、特に子どもたちを対象とし、子どもたちのために設計されています。

トゥデイ・アンド・トゥモローは、フィジー、バヌアツ、ソロモン諸島を含む8カ国において、3年間で最大1,400万人の子どもとその家族を熱帯サイクロンから守るための取り組みの実施を可能にします。試験運用が開始されて以来、パラメトリック保険の保険金として450万米ドル以上が支払われ、そのうち38万米ドル以上は太平洋諸島3カ国における6つのサイクロンに関連して支払われました。

今こそ、意思決定者が行動を起こすことに全力を尽くし、子どもたちに配慮した気候変動資金を抜本的に増やす時です。各国政府は、子どもたちや将来の世代が切実に必要としている、子どもに焦点を当てた大胆な気候変動対策に投資することで、可能な限り最良の遺産を残すことができます。

カミラさんは私たちにこう語りかけました。「遅すぎることはありません。ただ、世界が加わってくれればいいのです」。

 

困難な状況にある子どもたちが、生まれ持った権利を守られ、平和に健やかに成長できることを目指して活動するユニセフ。

その活動は皆さまのご支援によって支えられています。

毎月(定額)のご寄付 今回(一回)のご寄付

※最も支援が必要な子どもたちを支え、ユニセフの様々な活動に役立てられています。

関連ページ