2025年3月26日ニューヨーク/パリ発
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クナール州で、ユニセフが支援する移動式保健・栄養チームから栄養治療食を受け取ったザルミナちゃん(写真右)(アフガニスタン、2023年6月25日撮影)
ユニセフ(国連児童基金)は、世界的な人道支援資金の削減がもたらす影響に関する初期分析を行いました。分析によると、先ごろの、そして今後も見込まれる資金削減により、少なくとも1,400万人の子どもが栄養支援や栄養サービスを受けられなくなり、重度の栄養不良になったり、また命を落としたりするリスクが高まることが予測されます。分析は、3月27日、28日にパリで開催された「成長のための栄養サミット」に先立ち、行われました。
資金削減、数十年の進歩を覆すおそれ
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ユニセフ支援の移動診療所では、重度の急性栄養不良の子どもたちに栄養治療食を提供している (イエメン、2024年11月27日撮影)
資金危機は、避難を余儀なくされる人の数が記録的な水準にある状況や、新たな紛争と長引く紛争、疾病の集団発生、気候変動がもたらす深刻な影響など、子どもたちが直面している、かつてないほどのニーズの高まりと重なっています。これらはすべて、子どもが十分な栄養を摂取する機会を奪っています。
ユニセフ事務局長のキャサリン・ラッセルは次のように述べています。「過去数十年間、私たちはコミットメントの共有と持続的な資金投入により、世界的に子どもの栄養不良を減らすという目覚ましい進展を遂げてきました。2000年以降、5歳未満の発育阻害(スタンティング)の子どもの数は5,500万人減少しました。何百万人の、重度の栄養不良の子どもが守られました。しかし、急激な資金削減は、こうした進歩を劇的に覆すばかりか、さらに何百万人もの子どもの命を危険にさらすでしょう」
命を守る支援が、閉鎖や縮小の危機に
特に優先順位の高い17カ国において、資金削減による追加的な影響には、以下のものがあります。
- 2025年末までに、少なくとも240万人の重度の急性栄養不良の子どもに、「すぐに食べられる栄養治療食(RUTF)」が提供できなくなる可能性があります。
- 最大2,300カ所の、命を守る「安定化センター」(合併症を伴う重度の消耗症の子どもに重要なケアを提供している)が、閉鎖または大幅なサービス縮小の危機にさらされます。
- ユニセフが支援する約2万8,000カ所の、栄養不良治療のための外来治療センターが閉鎖の危機にさらされており、すでに稼働を止めたセンターもあります。
良好な栄養状態こそ生存と発育の基盤
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上腕計測メジャーを使った栄養状態の検査を受け、赤色=重度の急性栄養不良と示された避難民の子ども(スーダン、2024年11月5日撮影)
今日、不安定な環境や人道危機下では、5歳未満児における重度の消耗症の水準は極めて深刻なレベルにとどまっています。10代の女の子や女性は特に弱い立場に置かれています。資金が削減される前の2020年以降ですら、急性栄養不良に苦しむ妊産婦や授乳中の女性および10代の女の子の数は、550万人から690万人へと25%も急増しています。ユニセフは、ドナーからの緊急の行動と各国政府からの十分な資金投入がなければ、この数字はさらに増加すると見込んでいます。
子どもの栄養不良の予防、発見、治療をはじめ、子どもと妊産婦の栄養不良に長期的に取り組むため、ユニセフは2023年、複数のパートナーと共に児童栄養基金(CNF)を立ち上げました。ラッセル事務局長は次のように訴えました。「ユニセフは、各国政府やドナーに対し、子どものための保健・ 栄養プログラムへの資金拠出を優先するよう呼び掛けるとともに、国内の栄養・保健サービスにより多くの資金を充てるよう求めています。栄養状態が良好であることは、子どもの生存と発育の基盤であり、投資に対する見返りも大きいのです。その成果は、より強固な家族、社会、国、そしてより安定した世界の構築によって測ることができるのです」