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ユニセフ協会からのお知らせ

MDGサミット−公平性の担保が鍵

【2010年9月21日 ニューヨーク発】

© UNICEF/NYHQ2008-0845/Isaac
帰宅途中の親子(ナミビア)。

20日、ニューヨークで開幕した国連ミレニアム開発目標(MDGs)サミット首脳会合。2日目となる21日、首脳会議と並行して行われた会議で、ユニセフは、HIV/エイズ、子どもの保健、栄養の各分野の進捗状況を報告。残されている課題を訴えました。

公平性を担保しながら国連ミレニアム開発目標(MDGs)を達成すること。それは、第65回国連総会の一環として開催されているMDGサミットの初日にも繰り返し訴えられたテーマでした。ユニセフが最近発表した『Progress for Children(子どもたちのための前進)』は、貧困層の中でも最も貧しい人々に焦点をあてた公平性に重点を置いたアプローチの重要性を訴え、そうしたアプローチを取ることによって、2015年までに、目標を達成できる可能性も最も大きくなると指摘しています。

ユニセフのアンソニー・レーク事務局長は、21日の会議中に、「最も支援を必要としている女性と子どもたちに手を差し伸べるようにデザインされた、実践的で、費用対効果の高い、コミュニティを基盤にした支援の規模を拡大する必要があります」と、述べました。

HIV感染の予防

21日の会議は、HIV母子感染の根絶を議題としたパネル・ディスカッションで始まり、ユニセフ、UNAIDS(国連エイズ合同計画)、WHO(国連保健機関)、米国大統領エイズ救済緊急計画、世界エイズ・結核・マラリア対策基金の代表や専門家がパネリストとして参加しました。

母子感染予防促進を加速させることは、ミレニアム開発目標「4」と「5」、そして「6」の達成に貢献するだけでなく、子どもの死亡率の低減や妊産婦の保健の改善、予防可能な主な病気を撲滅することにも繋がります。

会議に参加したパネリストたちは、HIVが、世界中の出産年齢にある女性とHIV感染率の高い国々の幼い子どもたちの死因となり続けていることを指摘しました。毎日、開発途上国に暮らす1,000人以上の5歳未満の子どもたちが、妊娠、出産、母乳を通じて、新たにHIVに感染しています。

明るい兆候

© UNICEF/NYHQ2010-1905/Berkwitz
MDGサミットで話す世界保健機関(WHO)マーガレット・チャン事務局長。

しかしながら、パネル・ディスカッションでは、明るい兆候があることも報告されました。新規のHIV感染者数が世界中で低減していることは、そうした兆候の一つです。特に、世界で最もエイズが流行しているサハラ以南のアフリカ地域で、低減が見られています。

「わずか数年前のことですが、ザンビアやエチオピアといったアフリカ南部の国々では、妊婦中にHIVに感染していると診断されたら、それは、お母さんだけでなくお腹の中の子どもも、死刑宣告を受けたような話だったのです。しかし状況は変わってきました。」レーク事務局長はこう話しました。

「1歳未満の乳児のHIV感染率は、2006年時点では13.5パーセントでしたが、2009年には7パーセントに低下しました。」ヒフィケプニェ・ポハンバ ナミビア大統領は、自国のHIV問題の現状をこう説明しました。

女性の役割

© UNICEF/NYHQ2010-1902/Berkwitz
母子感染予防を普及させるため、女性たちの相談に乗っている南アフリカのアバルワ・ムボノさん。

HIV/エイズ問題がこうした好転を見せ始めたのは、HIV検査を、より多くの人々が、より早く受診するようになったこと、また、HIVと共に生きる母親と子どもたちに対する一連のケアが強化されるようになったからに他なりません。

明るい兆しは、これだけではありません。女性たち自身が主体的に活動していることも、その一つです。南アフリカの首都ケープタウンに暮らしているHIVと共に生きる母親、アバルワ・ムボノさんは、母子感染予防を普及させるため、女性たちの相談に乗っています。

ムボノさんは、「いつか、全ての赤ちゃんがHIVに感染しないで生まれてくる日が来ることを、そして、HIVと共に生きる母親たちが、みんな健康で、強く、家族の面倒を見つづけるために長生きできるようになる日が来ることを期待しています。」と語ってくれました。

栄養不良の影響

© UNICEF video
MDGサミットで、栄養不良の問題について話す米国国務長官。

このHIV/エイズの会議に並行して開催されたMDGサミットの会合では、世界の最も深刻な問題でありながら、ほとんど対策がとられていない課題のひとつである栄養不良問題の側面から、母親と子どもたちが直面している課題が議論されました。米国国務省とアイルランド政府の提唱で開催されたこの会合では、栄養不良を予防するために、妊娠してから、生まれた子どもが2歳になるまでの1000日間に焦点を当てた「千載一遇のチャンス」と称される取り組みの重要性が訴えられました。

この1000日間、健康で良い栄養状態であった子どもたちは、その後、より健康でより生産的な将来を持つことが証明されています。

子どもの栄養状態の改善は、極度の貧困と飢餓を半減させるというミレニアム開発目標「1」に関わる問題です。生後間もない幼い時期に栄養が十分与えられないと、身体的・情緒的な発達に回復不可能な悪影響を及ぼすことになり、結果として、ミレニアム開発目標「1」のみならず、全てのミレニアム開発目標の達成を妨げることにも繋がり兼ねません。

「ミレニアム開発目標「1」の飢餓に関する問題に適切に対処できなければ、ミレニアム開発目標達成のための全ての活動が脅かされることになるでしょう。」(ミッシェル・マーティン アイルランド外務大臣)

パートナーシップが鍵

ミレニアム開発目標達成まで残された最後の5年間に向けて、これら一連の会合での議論全体で協調されたこと。それは、パートナーシップでした。 今日開催された、公平性を保ちながらミレニアム開発目標を達成するために、コミュニティとの共同のあり方を検討する分科会でも、パートナーシップのあり方が様々な角度から検討されました。

子どもの保護の分野などでユニセフと様々な協力関係にある国際NGOが主催し、ユニセフ本部で開催されたこの分科会では、より具体的な成果を挙げるため、特に、最も貧しく、“忘れられてきた”多くの子どもたちに、支援を届けるために、様々な国際機関やNGOが今後どのように協力関係を持つべきかが議論されました。

国際NGOの代表ナイジェル・チャップマン氏は、その一例として男女間格差を取り挙げ、「男の子と女の子の間にある格差の問題に、もっと焦点を当てなければ。女の子への“投資効果”が非常に高いことは、色んな場面で既に証明されているのだから」と訴えました。

チャップマン氏のこの発言は、MDGサミットの随所でユニセフが発信している「公平性の担保」を訴えるメッセージを裏付けるものです。

ミレニアム宣言で約束した期日まで、あと、わずか5年。世界のどこに暮らしていようとも、全ての子どもたちのニーズに応えるため、そして、全ての子どもの権利を実現するために、公平性に重点を置いたアプローチが重要になっているのです。

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