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ユニセフ協会からのお知らせ

子どもの貧困=先進国で拡大する格差
ユニセフ・イノチェンティ研究所 最新報告書発表

【2010年12月3日 イタリア発】

ユニセフ・イノチェンティ研究所は、3日、子どもたちの困難な状況を測定する新たな手法を用いてまとめられた最新の研究報告書『取り残された子どもたち』(Report Card 9“The Children Left Behind”)を発表。先進国の中に、最も貧しい子どもたちが‘取り残される’ことを防ぐために先駆的な取り組みをしている国々があることを明らかにしました。

『取り残された子どもたち』は、ヨーロッパを中心に世界24先進工業国(OECD加盟国)の子どもたちの福祉に存在する、格差の度合いの把握が試みられましたが、この際、「最も悪い状況(数値)」と比較されたのは「最も良い状況(数値)」ではなく、「各国の標準値と考えられる状況(数値)」との比較という手法が用いられました。そして、教育、保健、物質的な豊かさの3つの側面から、「子どもの福祉」を測定しています。それぞれの項目において、「豊かな国々が、どの程度、最も困難な状況にある子どもたちを取り残してしまっているのか?」を問いかけました。

このユニセフの調査結果を見て驚く人もいれば、頭を抱える人もいることでしょう。例えば、英国、ベルギー、スペイン、イタリアの子どもたちは、オランダ、デンマーク、フィンランド、アイルランドの子どもたちに比べて大きく取り残されています。

これ以外の国々の状況は、良い数値と悪い数値が混在した結果を示しています。ポルトガルは、保健に関する不公平性の是正という面で、上位に位置しています。また、物質的な不公平性の是正の面では、スイスが、同程度の国土面積を持つベルギーよりも遥か上の順位に位置します。教育の公平性においてはアイルランドがトップで、オーストリアは最も順位の低い国のひとつとなっています。

今日の厳しい経済状況の中で、各国政府に対し、最も困難な状況にある子どもたちを守るべくさらなる努力を期待することはできるのでしょうか? 最も厳しい立場の子どもたちを守るために、できる限りのことを行うよう、強く主張することが否定されることはほとんどありません。しかしながら、結局、利益の相違を反映することは、子どもたちの問題には適応できないとして、不公正さが容認されてしまっているのです。

しかしながら、本報告書は、先進工業国を対象にして実施された様々な研究に基づき、‘最も深刻な形で取り残されている’子どもたちが直面しうる様々な状況を例示し、そうした子どもたちを守ることの必要性を強く訴えています。例えば、こうした子どもたちは、健康状態や栄養状態の悪化、保健サービスや病院の頻繁な利用、認知発達障害、学業不振、生産性の減少、出産や飲酒、麻薬などの大きなリスクに晒されているのです。全ての社会が抱えるこうした主要な問題は、こうした一人ひとりの子どもたちにも影響しているのです。

良い知らせもあります。不公平性を打開、あるいは、少なくとも限度を越えない範囲に是正した国があることが分かりました。また、早い段階で不公平さの存在を認識して適切に対処すれば、格差が定着する前に状況を改善できる可能性があります。本報告書が明らかにした各国間に存在する“バラツキ”は、それぞれの国々に、改善するべき現実的な目標を示しています。なにはともあれ、この24ヵ国は、全て、子どもの貧困問題を解決するために必要な独自の資源と能力を持つ先進工業国なのですから。

こうした理由から、本報告書では、各国の状況を“抽象的な目標”に照らし合わせて評価することはせず、課題を既に解決した他の先進諸国と比較しました。報告書の最後には、開発の標準値が高い国々や、不公平さの減少における取り組みにおいて、最も高い順位にある国々の数多くの例が紹介されています。本報告書は、すなわち公平性は、社会の効率性や経済成長を犠牲にしなくても達成することができると訴えているのです。

こうした点を踏まえて、本報告書『取り残された子どもたち』は、最も困難な状況に置かれている子どもたちを取り残した状態を放置している先進諸国に警鐘を鳴らし、その是正のための課題を示しています。それぞれの国が置かれている状況において解決策を見つけること、そして格差をなくすという課題です。報告書は、「こうした課題に対処できないならば、根本的な不公平さは続き、公平正性を見せかけに主張するという恥ずべき行為をし続けることになります。社会は、その代償を払い続けることになるのです。」と訴えます。

社会的な政策に対する予算や支出の増額を求められるようなタイミングはないかもしれません。しかし本報告書は、各国政府に対し、予算を削減する前に、取り残されている子どもたちの問題を十分に考慮し、その問題に目を向けること、そして、そうした子どもたちが置かれている状況の把握をし続けることを求めています。

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