MDGsの次は、何を?
イノチェンティ研究所インターネットTV番組 各国専門家をインタビュー
【2012年6月22日 イタリア発】
2015年のミレニアム開発目標(MDGs)の達成期限を前に、世界のリーダーたちが、貧困や食糧不足などに関連する問題を話し合うため、ブラジル・リオデジャネイロで開催されている「リオ+20」に結集しています。ユニセフのイノチェンティ研究所は、複数の世界的に著名な専門家に、世界の“次”の開発課題に関する見解を伺いました。
ミレニアム開発目標(MDGs)は、これまで掲げられてきた他の開発目標や指標と比較にならない程、広く共有されてきました。MDGsが設定される以前は、貧困や病気、飢えと戦うために、世界中の人々が一丸となって目指す事ができる国際目標は存在しませんでした。MDGsが設定されて以降、子どもの死亡率は減少し、安全な飲料水を継続的に得ることができない人々の数は半減。以前よりもより多くの女の子たちが小学校に通うようになりました。HIVや結核に感染する人の割合も減少を続けています。
しかし一方で、(無数に存在する国際的な)課題を集約し、焦点を明確にし、そのために(対象とする範囲が)若干"狭い"ミレニアム開発目標(MDGs)は、"質"や"公平性"の問題や、責任の所在があまり明確にされてこなかったという指摘もあります。各国の政府も国連各機関も、(MDGs目標年までに)残された2年半、目標達成に向けた取り組みを最大限加速させ続けてゆく決意ですが、("MDGs後)これまでの成功をどのように生かすべきかという議論が、既に始まっています。そこには、公平性と人権(の尊重)を前提に、世界の子どもたちを対象とした最低元必要な医療・保健・栄養面の社会サービスを最優先とする考え方が基本にあります。これは、また、持続可能な開発、ガバナンス(統治)、治安の問題の解決に、これまで以上に、多くの人々を巻き込む形で取り組んでゆくという考え方です。
これは、現代を反映する壮大な目標です。ユニセフのイノチェンティ研究所が配信するインターネット番組『リサーチ・ウォッチ』最新号では、この"新たな考え方・枠組み・目標"がどのような内容になるのか?また、どうすればその目標を達成できるのか?をテーマに、世界の開発専門家にインタビュー。専門家3名によるディベートも紹介しています。
専門家の一人、国際環境開発研究所上級研究員のバリー・ダラル・クレイトン氏は、自身の考えを、次のように示しています。「持続可能な開発や、(環境保全と経済成長を両立させる)グリーン経済を進展させるためには、国連持続可能な開発会議(リオ+20)で、多くの新たな持続可能な開発目標(SDGs)にただ同意するだけでは十分ではありません。」「リオ+20では、環境保護を主軸とする社会的な流れを確実にするために、早急かつ積極的なステップが推し進められなければなりません。つまり、環境問題に対する様々な懸念が、確かな情報に基づいた形で、開発に関わる政策や規則、計画、投資そして行動を導く決定プロセスや組織の活動の中でしっかりと踏まえられるようにしてゆくということです。」
また、ナイジェリア大統領の前MDG特別顧問アミナ・アズ・ズバエル氏は、あらゆる領域で、改善の余地があると語っています。「(国連が提唱する)『グローバル・コンパクト』は、その役割を十分果たしていません。約束が果たされなかっただけでなく、果たされたものがあっても、その達成のタイミングは適切ではありませんでした。」「汚職と戦わなくてはなりません。(これまでの"投資"に対し)銀行口座に今残高が幾らあるのかという問題だけではなく、失われる命の問題が問われなければなりません。なぜなら、そうした"投資"は、出産時に命を落としている我が国の女性たちを救い、子どもたちには、(予防接種を通じて感染症への)免疫を与えられていたはずなのですから。」
ウガンダ銀行の副総裁のルイス・カセケンデ氏とパン・アフリカ開発センターのアルフレッド・ネマ氏は、多くの開発途上国、特にアフリカで影響を与えている政情不安の問題や、サハラ以南のアフリカに広がる貧困の削減に対する公共機関の終身雇用の役割の重要性、そして経済移民から生じる問題、政治・社会不安の問題を議論。ネマ氏は、「政治の安定と永続的な平和が確保されなければ、アフリカは、世界の他の地域に遅れをとり続けていくだろう」と語っています。
MDGsの立案にも携わったジャン・ファンデルモルテル氏は、次のアジェンダは、包括的なものでなければならないと訴えます。「MDGsの立案過程を繰り返すべきではありません。新たなアジェンダは、専門家や技術者が設定すべきではありません。新たなアジェンダは、包括的でボトム・アップ型のプロセスを通して策定されるべきです。」
貧困問題は、ポスト2015年の中心的課題であり続けるでしょう。しかしながら、今回は、不公平性の視点を中心に据えるべきだという意見は、力強く合意されています。海外開発研究所の成長・公平プログラムのクレア・メラメド部長は、次のように語りました。「各国政府が、もっとも手を差し伸べることの難しい人々、本当に目標を達成するために焦点を合わせなければならない人々の公平性の問題を積極的に考慮に入れて欲しいですね。新たな目標には、各国の合意を取り付けるのが難しくなる政治的問題は除外して。」
番組では、次の開発アジェンダの中で、子どもたちの問題をどこに据えるか?ということが常に焦点となりました。たとえば、ロンドン大学東洋アフリカ研究学院のロンドンナイラ・カベール開発学教授は、枠組み自体を、子どもの一生を軸に組み立てることを推薦しています。ユニセフのリチャード・モーガンとシャノン・オシェイは、貧しい人々の能力を高める技術や、そうした能力開発と同様に、(支援の)透明性と責任の明確さの問題に触れています。
国連ミレニアムキャンペーンでアフリカ地域を担当するチャールズ・アブグレ部長は、国際社会が経済危機に直面する状況の中、世界が人口の増加と限りある資源との狭間に置かれている今日、'次のMDGs'について議論することは、公平で持続可能な開発への体系的な脅威に対応する特別な機運を作るチャンスなのだと語っています。また、国連の2015年以降の国連開発アジェンダ策定タスク・チームのコーディネーターを勤めるロブ・ヴォス氏は、「人間開発目標を、経済開発や環境維持、そして安全保障問題とより明確な形で包括した形にしてゆかなければならないということです。」
簡単なことではありません。しかし、"やりがい"のある仕事です。
|トップページへ|先頭に戻る|