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「消しゴムをください!」
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©(財)日本ユニセフ協会 |
昨年から今年にかけ、与野党よりそれぞれ提出されていた「児童買春・児童ポルノ禁止法」改正案の審議が、26日(金)、衆議院法務委員会で開始され、同日午後、参考人として招聘されたアグネス・チャン日本ユニセフ協会大使は、就任以来、世界各国で出会った児童ポルノの被害者の声を伝え、児童ポルノの単純所持を違法にするように訴えました。
対応が遅れ続ける日本
「1998年、大使に任命されたその日、すぐスウェーデン大使館に連れて行かれました。そこでいきなり、『日本は児童ポルノの加害国です。』と言われてしまったのです。その後、タイやカンボジア、フィリピン、モルドバなどの国々で、その実態を見てきました。どこに行っても、『どうか日本が、この問題をもっと厳しく取り締まってください。』と言われました。」
「日本は、その後、1999年の立法、そして2004年の改正と、着実にその成果を挙げてきました。でも、現状はそれでも不十分なのです。インターネットや携帯が普及したことにより、状況は悪化しました。国際社会は、そうした状況に対応するために、様々な対応を始めています。2007年には、欧州評議会が非常に進んだ内容の条約を採択しました。G8先進国首脳会議の司法・内務大臣会議は、2007年から3年連続、児童ポルノ問題に対する断固たる対応が必要という内容の宣言を出しています。昨年、ブラジルで開かれた『第3回子どもと青少年の性的搾取に反対する世界会議』は、児童ポルノの製造・販売・配布・所持だけではなく、インターネット上でアクセスすることや閲覧することも、各国に処罰化するよう求める宣言を採択しました。こうした中、日本の対応が遅れていると言われています。いわゆる『単純所持』を違法にしていないのは、G8の中で日本とロシアだけです。」
「単純所持」規制を求める国民の声
「いろんな会議や海外で出会う方々に、『何故、日本は児童ポルノの単純所持を許すの?』『日本人はどうして無責任なの?』と言われます。日本人は本当に無責任でしょうか?私はそう思いません。2007年の内閣府の世論調査では、90%以上の人々が、児童ポルノの単純所持規制に賛成しています。私たちが昨年3月にスタートした『なくそう!子どもポルノ』キャンペーンにも、短い間に11万5000人を超える方々から賛同の署名をいただきました。」
「今回の法改正でも、単純所持を違法にすべきか否かが議論されています。私は、『迷っているなら原点に戻れば良い』と思うのです。そして、ここで言う『原点』とは、被害者の声、そして加害者の声です。」
被害者と加害者の声に耳を傾けてください
「タイのチェンライという所に行った時、小さな子どもたちがホテルに連れてこられました。みんなに『何歳?』と聞くと、一様に『14歳』と答えます。その時は『児童ポルノ禁止法』が無かったから。本当は9歳、10歳、14歳だったんです。みんな、必ず写真を撮られると言っていました。」
「フィリピンで出あったのは、5歳と7歳の子。日本の人は、みんな写真を撮るのが大好きですと言っていました。性行為ができない小さな子は、口でやらされているんです。」
「日本の被害者の方からもお手紙を戴きました。かつて、自宅のお風呂での入浴写真を盗撮された方などからは、『あの写真がどうなったのかを考えると恐ろしくて、私はリストカットや自殺未遂を何度も繰り返しました。』という声が届いています。 もう一人の方は、かつて実父からわけもわからないまま撮影されていた写真をインターネットで発見した方でした。被害者の方々は訴えます。『今のように児童ポルノが簡単に手に入る世の中では、自分の人生は終わってしまったように感じてしまう』と。『もし、世の中を変える力のある人がいるのなら、どうか私を助けてください』と。」
「一方、私の元には、沢山の脅迫めいた加害者からのメールが届きます。彼らは言います。『法律で禁止されていないんだから』と。」
「消しゴム」を子どもたち、そしてかつて被害に遭われた方々に!
「前米国駐日大使のシーファーさん、スウェーデンのシルビア王妃、そしてユニセフの本部から、今回の法改正に対する期待の声が寄せられています。フィリピンで出あった子に、『今一番欲しいものは?』って聞きました。その子は『消しゴムを下さい。今までの人生を消してくれる消しゴムを下さい。』と言いました。是非、今国会で、単純所持の違法化という名の『消しゴム』を、この子どもたちのために与えてください。」
審議の様子はインターネットで
アグネス大使の発言や法務委員会での審議の様子が、衆議院インターネットテレビで公開されています。
ユニセフ審議入りを歓迎
児童買春・児童ポルノ禁止法の審議入りの報を受け、アン・ベネマン ユニセフ事務局長は、現地時間25日、出張先のシリア・ダマスカスより、次の声明を発表しました。 「今般、日本の国会が、児童ポルノを禁止する重要な法律を審議されることを知り、ユニセフは勇気づけられています。児童ポルノは、子どもに対する虐待行為であり、子どもの権利の侵害行為に他なりません。実効性のある法律を整備されることは、子どもの権利と福祉を守る上で大変重要です。」