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財団法人日本ユニセフ協会

ユニセフについて ユニセフが目指しているもの

児童買春等禁止法および児童福祉法の改正案に関する
ユニセフ公開セミナー

日時:2004年3月17日(水)13:30〜15:00
会場:衆議院第二議員会館第一会議室
主催:財団法人 日本ユニセフ協会

セミナーの記録

 児童買春等禁止法と児童福祉法の改正案が本国会に提出されます。この2法案が、国会で成立すると、子どもの権利条約の選択議定書も批准できるということになります。今日は、その改正案についてご報告いただくとともに、ご質問に答えていただきます。

*主催者あいさつ
(財)日本ユニセフ協会 専務理事 東郷良尚

 ご存知の通り、子ども買春等禁止法については、1999年に施行されて以来、大きな役割を果たしてきたと思います。さらにこれを改善し、選択議定書の批准という面からも、ぜひとも本国会における改正案成立に向けて、みなさまのご協力をお願いいたします。

野田議員 *児童買春等禁止法の改正について
野田 聖子 衆議院議員

 児童買春禁止法、正式名称「児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律」の一部改正ということになりますが、その中身と改正の経緯についてご報告させていただきます。

《経緯》
 一部改正法案は平成15年7月11日に議員立法として国会提出されました。しかし、衆議院解散・総選挙によって、残念ながら審議未了、廃案ということになってしまいました。

 平成16年、1月19日に通常国会が開かれましたが、自民党では政務調査会児童買春等対策特別委員会(委員長:八代英太衆議院議員)で前回の提出案を再検討しました。微調整以外は、原案通りの再提出を確認しました。自民党政務調査会および総務会において、同法案を議員立法として衆議院に提出することが了承されました。これが何を意味するかといいますと、自民党の国会議員はこの法案に全員賛成という党議拘束がかかるということです。
 さらに公明党でも同じような議論を進めていただき、3月10日に、両党においてそれぞれ法案賛成者が確定しました。自民党側は、村井仁政調副会長、総務調査会児童買春等対策特別委員会所属衆議院議員ほか合計20名です。
提案者:八代英太、野田聖子
賛成者:岩屋毅、江崎鉄麿、小野晋也、小渕優子、上川陽子、小泉龍司、河野太郎、下村博文、滝実、竹下亘、棚橋 泰文、西川京子、西田猛、能勢和子、松島みどり、松野博一、村井仁、村田吉隆、保岡興治、渡辺博道

 そして、3月12日に衆議院に提出しました。これにより、今国会で同法案が成立する目処がたちました。

 民主党の動きについては、こちらで再度提出することを決めたのちすぐに、この問題についての私のカウンターパートナーである小宮山洋子議員に連絡を取り、資料を提出いたしました。小宮山さんご自身は、この案でなら民主党も共同提出したいとご検討いただきましたが、今国会では児童虐待防止法に関する改正案も提出されており、民主党では正式な党内手続きの時間がなかったということでした。

 前回、改正案は法務委員会で審議されました。今回は、通常であれば法務委員会での審議が適当かもしれませんが、今国会では、司法制度改革案など26を超える法案が目白押しで時間的に余裕がなさすぎるという事情もあり、また1日も早くこの法案を審議成立させたいという思いもありますので、今回、衆議院においては、青少年問題に関する特別委員会に付託することで調整中です。ちなみに委員長は武山百合子議員(民主党)です。

 前回の提出時と今日現在の状況とでは、国内における児童をめぐる事件発生件数の増加、悪質化、といった背景の違いが生まれています。

  • 暴力団の関与する児童ポルノビデオのダビング工場の摘発(国内最大級、2年半で7億5千万円の売上をあげる)
  • アダルト雑誌に高2女子を掲載した出版社が児童買春等禁止法違反で全国で初めて摘発
  • 児童虐待が急増する中、ネグレクト、養育放棄も増発、それにあわせて性的虐待も確実に増加しており、児童虐待の多様化の傾向が指摘されている
  • 出会い系サイト規制法違反で、中学3年生の女子が未成年としてはじめて摘発

 他にも国際社会における情勢の厳しさが増しています。 今年1月、国連子どもの権利委員会で、子どもの権利条約の実施状況に関する報告審査が実施されましたが、我が国に対しては、児童相談所における被害児童のより適切なケアのための専門家の増員、児童に配慮した方法で事件をフォローできる専門家の訓練、教育プログラムを導入しての犯罪防止措置、性的同意年齢の最低年齢の引き上げなどが勧告されました。また、選択議定書等批准のため、各児童関連法を整える必要性が明らかになってきました。

 前回、民主党との合同提案にならなかった理由に、単純所持の禁止をめぐる被害者保護救済に対して加害者の内心の自由に言及されている議員がおられ、小宮山さんが苦労されているという話を聞いております。
 前回は、時間がないという理由で、委員長提案(審議時間を持たずに採決)ということになっておりましたが、今回は締め切りに間に合いましたので、与党提案ということで(全党提出ではないので)恐らく反対はないのですが、きちんと審議をして採決というプロセスになります。採決に向けて、みなさんのご協力を得てがんばっていきたい、というのが現在の状況です。

《法律改正のポイント》

  • 児童買春・児童ポルノに対して厳しい態度で臨むということ
    事件が増加、多様化する中で、児童の権利を擁護するということは非常に重要で、そのためにこの法律があることをはっきりさせたい。 また、目的のいかんを問わず、児童ポルノは持ってはいけないものである、ということを条文に書き込むことで国民に徹底させていきたい。ただし、初めて導入する禁止行為なので、罰則は設けないという方向です。
  • 施行状況を踏まえた法定刑の引き上げ
    他の法定刑にくらべて軽すぎるという指摘があり、刑を重くした
  • 条約の批准を目指した法改正
    批准のために、それに見合う国内法の整備という点から対応を列記している

 衆議院青少年特別委員会では児童虐待の法案審理がありましたが、それが通ったので、今は何も法案を持っておらず、いつでもスタンバイの状態にあります。1日も早く、国会審議の場で、この問題について幅広い議論をし、法律を作り上げていきたいと考えております。

小宮山議員 *小宮山洋子衆議院議員(民主党)からの報告
 民主党では、この法律ができた後、3年後の見直しのために検討チームをつくろうという声はあったのですが、なかなか取り上げてもらいにくいテーマでした。たとえば、児童虐待防止などは、みんなが乗ってくるメジャーな話題なのですが、子ども買春や子どもポルノは、いろんな意味でマイナーという捉えられ方をしてしまうようでした。
 しかし、今回、与党からも法案が提出されましたし、子どもの権利条約の選択議定書、サイバーポルノ条約の批准ということもあり、やっと検討チームをつくるところまでこぎつけました。

 民主党では、単純所持がひっかかっている部分です。これが別件逮捕の用件になるなど、警察に対する不信感などが原因にあるようです。私自身は子どもの人権に勝るものはないと思っておりますが、党としては難しいのが現状です。
 サイバーポルノ条約でも、日本は単純所持について留保してしまっています。その意味でも単純所持禁止を認めないことへの追い風になってしまうのではという危惧を個人的に持っています。

 検討チームを立ち上げましたので、与党案ではまだ盛り込まれていないような点を---被害を受けた子どものケア、回復の問題、予防教育、海外での問題対処のための国際協力など---、これに盛り込まれていない点を付け加えて、民主党案を持って、よりよいものにするために、プラス思考で建設的に進めたいと考えています。
 児童虐待防止法案は、青少年特別委員会において同じように民主党案をもって与党と真摯に協議した結果、検討課題も含めて良いかたちで成立させることができました。今回も同じようにしたいと思っています。

* * * * * * * * * * * *

*Q&A
Q:  ポルノサイトを検索すると、どのようなビデオやDVDが売られているかわかります。それを見ると、どう見ても子どものように作っているのですが、必ず“99年の禁止法に基づいて製作されている”というような言葉が入っています。また、幼女、で検索するとすぐにポルノサイトが出てきますが、監禁、拉致、誘拐などのテーマのものもあり、犯罪が急増していることもあり、特に気になっています。
 子どもの権利条約選択議定書の中にポルノグラフィーの定義があります。ここに、あらゆる表現という言葉があるのですが、子どものように見せている子どもポルノというものについて、今後どのように対処していっていただけるのでしょうか?
A:  (野田議員)
 インターネットもさまざまな情報が氾濫し、目を背けたくなるような情報があふれている時代です。“あたかも子どもに見える”ということは、最初の議論のひとつでもありました。しかし、これを進めると、最終的には表現の自由とのすりあわせになってしまいます。今回は、少なくとも被害にあっている実在の子どもを守ろうという現実的な方針を取りました。児童の権利の擁護が目的なので、児童ではない人の権利は含まれません。この法律の限界は、あくまでも該当する、傷ついている子どもがいる、という前提があるということです。人権擁護のための法律だということをご理解いただきたいと思います。
Q:  子どもポルノについては、ポスターなどもないように思います。ポルノの問題が隠れてしまっていると思います。もっと警鐘を鳴らす必要があると思います。
A:  (日本ユニセフ協会 東郷専務理事)
 おっしゃる通りです。子どもポルノ、人身売買等、ぜひ、ポスターなどをつくって啓発に努めたいと考えます。
Q:  民主党の男性議員の中に、単純所持に反対との方がいらっしゃるそうですが、反対理由をもう少し詳しくお聞かせください。
A:  (小宮山議員)
 結局のところ、いろいろなところで、警察の権力が強くなることに対する危惧かと思います。以前から聞いたことがあるのは、たとえば、家宅捜索でどこかへ踏み込む、ポルノ雑誌が1冊や2冊はある中に、もし子どものものがあれば、それで別件逮捕につながる、などというようなことです。警察権力への不信感が根底にあるのではないでしょうか?子どもの人権派はまだ少数派という印象です。

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重永氏 *児童福祉法改正について
厚生労働省児童家庭局 重永 将志氏

 児童福祉法について、子どもの権利条約 選択議定書批准に必要な改正案を提出しておりますので、それについてご報告いたします。
子どもの権利条約の選択議定書の署名はすんでいます。児童買春等禁止法、児童福祉法の改正により、条約が要請している事項について国内法で担保されることになり、条約を締結できるという段取りになります。

 今回の児童福祉法改正の内容ですが、以下のようなポイントに基づいています。

  1. 虐待に代表される保護を必要とする子どもに対する対応の整備
  2. 慢性疾患にかかっている子どもに対する手当て
  3. 保育料の収納事務の私人への委託
  4. 児童の売買、児童買春および児童ポルノに関する子どもの権利条約選択議定書の締結に必要な規定の整備

 条約では、児童売買に関して、性的搾取、営利目的の臓器提供、強制労働目的での児童の移送、収受等について、例外なく犯罪化するように求められています。これについては、国内に限らず、海外で日本人が犯罪を犯した場合にも処罰することとなっています。これに基づき、改正の事項としては次の2点です。

  • 国内
     児童福祉法34条で刑法犯罪になる行為が列記されていますが、ここで、刑罰法令に触れる行為をなすおそれがある者に事情を知って、児童を引き渡す行為や有害な行為をさせることを目的に自己の支配下におくような行為はすでに処罰の対象となっています。 しかし、ここに例外規定がありまして、それを修正します。 具体的には、34条の9に、児童に対する支配が正当な雇用関係に基づくものであるか、または家庭裁判所、都道府県知事、または児童相談所長の承認を得たものである場合、また児童が4親等内の児童である場合を除き、となっており、それであれば心身に有害な影響があっても処罰の対象外となっています。これを、改正により、例外を一切認めることなく犯罪化する、ということにし、この項の例外規定を定めた部分を削除することにいたしました。
  • 海外
     海外で日本人が議定書で犯罪と定められている行為をおこなった場合、それを処罰するために、60条に第2項を追加することになりました。60条の第1項において、34条第1項に定められた項の刑罰が定められていますが、これに、第1項の7号と9号に違反した者に対する刑罰について、刑法4条の2に従う、つまりこの刑法の条文は条約の国外犯の規定になりますが、それに当てはめる、ということになりました。

 児童福祉法の改正案は政府提案で進められており、国会にすでに提出されていますが、まだ審議にまでいたっておりません。

《参考》
児童福祉法
第34条
第1項 何人も、次に掲げる行為をしてはならない。

  1. 身体に障害又は形態上の異常がある児童を公衆の観覧に供する行為
  2. 児童にこじきをさせ、又は児童を利用してこじきをする行為
  3. 公衆の娯楽を目的として、満15歳に満たない児童にかるわざ又は曲馬をさせる行為
  4. 満15歳に満たない児童に戸々について、又は道路その他これに準ずる場所で歌謡、遊芸その他の演技を業務としてさせる行為
    4の2.
    児童に午後10時から午前3時までの間、戸々について、又は道路その他これに準ずる場所で物品の販売、配布、展示若しくは拾集又は役務の提供を業務としてさせる行為
    4の3.
    戸々について、又は道路その他これに準ずる場所で物品の販売、配布、展示若しくは拾集又は役務の提供を業務として行う満15歳に満たない児童を、当該業務を行うために、風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(昭和23年法律第122号)第2条第4項の接待飲食等営業、同条第6項の店舗型性風俗特殊営業及び同条第9項の店舗型電話異性紹介営業に該当する営業を営む場所に立ち入らせる行為
  5. 満15歳に満たない児童に酒席に侍する行為を業務としてさせる行為
  6. 児童に淫行をさせる行為
  7. 前各号に掲げる行為をするおそれのある者その他児童に対し、刑罰法令に触れる行為をなすおそれのある者に、情を知つて、児童を引き渡す行為及び当該引渡し行為のなされるおそれがあるの情を知つて、他人に児童を引き渡す行為
  8. 成人及び児童のための正当な職業紹介の機関以外の者が、営利を目的として、児童の養育をあつせんする行為
  9. 児童が4親等内の児童である場合及び児童に対する支配が正当な雇用関係に基づくものであるか又は家庭裁判所、都道府県知事又は児童相談所長の承認を得たものである場合を除き、児童の心身に有害な影響を与える行為をさせる目的をもつて、これを自己の支配下に置く行為

第2項 児童養護施設、知的障害児施設、知的障害児通園施設、盲ろうあ児施設、肢体不自由児施設又は児童自立支援施設においては、それぞれ第41条から第43条の3まで及び第44条に規定する目的に反して、入所した児童を酷使してはならない。

第60条
第34条第1項第6号の規定に違反した者は、これを10年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。

  1. 第34条第1項第1号から第5号まで若しくは第7号から第9号まで又は同条第2項の規定に違反した者は、これを1年以下の懲役又は30万円以下の罰金に処する。
  2. 児童を使用する者は、児童の年齢を知らないことを理由として、前2項の規定による処罰を免かれることができない。但し、過失のないときは、この限りでない。
  3. 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に町して、第1項又は第2項の違反行為をしたときは、行為者を罰する外、その法人又は人に対しても、各同項の罰金刑を科する。但し、法人又は人の代理人、使用人その他の従業者の当該違反行為を防止するため当該業務に対し相当の注意及び監督が尽されたときは、その法人又は人については、この限りでない。

刑法
第4条の2 (条約による国外犯)
前三条に規定するもののほか、この法律は、日本国外において、第二編の罪であって条約により日本国外において犯したときであっても罰すべきものとされているものを犯したすべての者に適用する

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*Q&A
Q: image1  児童福祉法改正について、臓器提供、強制労働に関与する児童を保護するということでしたが、児童買春・児童ポルノ禁止法では、被害者の救済はまったく進まないという現状があります。児童福祉法では罰則を設けるということですが、臓器提供、強制労働の被害児童への救済は万全なのか、児童買春・児童ポルノの被害者の救済とくらべて、比較の問題でどちらかに遜色があるのか、そのあたりをお聞きできますか?
A:  (重永氏)
 強制労働、臓器提供の関係での保護に関しては、別の部局が担当しておりまして、私から具体的にこういうことをしているとは言えませんが、今回の改正の中では、児童の心身に有害な行為について、処罰の対象とすることで、保護ということと直接はリンクしないが、そうした行為をする人を処罰することによって、間接的に保護に結びつけるということです。
Q:  今現在、人身売買の被害者については、多くの場合、不法滞在ということで発見されたら強制退去とされていると思いますが、少なくとも子どもについて、児童相談所などで充分に回復してケアできる体制ができているのでしょうか?
 また、要望ですが、表現の自由・プライバシーと子どもの権利は二者択一の問題ではなく、どのようにバランスをとるかという問題です。子どもの保護が第一義的に考慮されなければならないのは確かですが、日弁連などでも、警察権力の拡大はを危惧されていたりということはありますので、しっかり審議を尽くしてほしいと思います。
A:  (重永氏)
 児童相談所で対応する子どもについては、国籍などを限定しないはずですから、保護の対象になると思います。不法就労などの点については、今、材料がございませんので、お答えできません。

 (分かる範囲でお答えいただけますかとの要望にお答えくださった、法務省の島戸氏より)
 私は入国管理の担当ではないのですぐにはわかりませんが、一般論として、滞在資格がない方の場合は、収容するかどうかについては手続きを踏みますので、即収容ということばかりではなく、柔軟に対応しております。また、今国会に改正案を提出していますが、在留資格がないときに収容という手続きを取らずに何とか別の手続きで帰国させるというようなことを模索しています。柔軟な対応を法務省も考えているとご理解いただきたいと思っています。
Q:  やはり問題は執行だと思います。具体的にどのように執行していくのか、被害者の保護、救済も含めて、政府としての方針を示していただきたい思うのですが。
A:  (重永氏)
 具体的な取締りは、警察になりますので、具体的にどのような方針で、ということについては、お答えできません。ただ、今回、この法律でかなり長期間、関係省庁と話し合ってまいりました。警察の方も、かなり関心をもって取り組んでおりますので、そこはきちんと対応していただけると思っています。
Q:  子どもに対する教育、たとえば買春はなぜいけないかなど、教育の中でこのような問題を取り上げていくことが重要と思いますが、民主党のお考えはいかがでしょう?
A:  (小宮山氏)
 防止のための教育、被害を受けた子どもたちの回復、ケアの問題については、与党案ではあまり触れられておりせんので、民主党案には入れたいと考えているということは、申し上げた通りです。教育の面では、児童虐待防止法とかなり共通するところがかなりあると思います。そのあたりとすり合わせながら、子ども買春等禁止法の中にも明記することで進めたいと考えています。どこまで実現できるかについては、みなさんのバックアップをいただきたいと考えています。
Q:  子どもの人身売買について、対象は18歳未満ということになりますが、不法滞在をしている子どもたちでも、パスポートに18歳未満と記載があれば、子どもという扱いで必ず保護されるのでしょうか?途上国のパスポートの記載事項は法廷における証拠能力はないというようなことを聞いたことがあるのですが。
A:  (法務省 島戸氏)
 どこが扱うかによって、対応は違うと思います。一般的にパスポートが出てきて、18歳未満と書いてあれば子どもと考えると思います。ただし、現実にパスポートの偽造や記載の変更などが起こっていることは事実です。18歳未満なのに18歳以上と書いてある場合と18歳以上なのに18歳未満と書いてある場合と両方あると思いますが、犯罪を扱っている部署としては、100%(パスポート等を)信じるかというとNOとなります。偽造については見極められますが、戸籍自体を変えられてしまう国があることも事実です。入国管理を扱う部門でも考えていかなければならない問題だと思います。

 (人身売買禁止ネットワーク)
 被害者の方たちのバックグラウンドを聞くと、ほとんどが、偽造パスポートで入ってきます。13歳の子が13歳のまま入ってくることなどなく、偽装して入ってくるわけです。だから人身売買なのです。年齢で区切るというのはあまり意味がありませんので、なんとかまとめてすべて救済してもらえる方法はないかと訴えているところです。

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《今回の改正等についての感想》

(人身売買禁止ネットワーク玉井氏)
 人身売買について、日本は受け入れ大国なのです。一歩外に出ると、人間を買っている国とみなされています。
 私の所属する人身売買禁止ネットワークは、これまで、外国人の被害者、主に女性を支援してきたNGOや弁護士などがネットワークをつくって、日本における包括的な人身売買禁止に向けて、取り組んでいます。
 在留資格のない外国人の児童も児童相談所の保護対象となるというお話がありましたが、今まで、児童、おとなに関わりなく保護してきましたが、現実的に、日本の行政からの具体的な支援はありませんでした。今後もし、こうした子どもたちが児童相談所で保護されることになっても、言葉の問題もある中で、どのように体と心に傷を負った子どもたちをケアしていけるのか。何が起こるのかをまったく理解せずに海を渡って来ている子どもたち。ぜひ、現場での声というものを少しでも多く取り入れていただきたいと考えています。
 世界では、人身売買はメジャーな問題です。

(吉田弁護士)
 一番気になっていますのが、在留資格のない被害者がいた場合はどうなるのかということです。運用を柔軟にという声がありましたが、知る限り、そういうことではなかったように思います。(ほとんどが収容)在留資格がなく日本社会に害を与えているのだから、多少ひどい目にあっても帰れればいいでしょう、という発想が支配的ではないかと思います。
 子どもの人身売買については、これがなぜとんでもないことなのか、という議論が日本で本当になされているのだろうか、と思います。根源的に何が問題かを議論すべきかと思います。子どもだからかわいそう、判断力がない、という考え方のままでは、前へ進まないと思います。実際に加害者にならない人であっても、日本社会全体がこういう子どもを受け入れているのだ、なぜ受け入れているのか、二兆円産業なんて言われてどうして誰も何にも感じないのかをみんなで考えていく必要があるでしょう。

(法務省 島戸氏)
 入管法改正の件については、出国命令という制度を新たに設けることを検討しています。つまり、それほど悪質ではないと思われる不法滞在者については、収容ということなく帰っていただこうというものです。全件収容主義という法律上の建前を崩す法改正をと考えています。いろいろな問題があるとことは、認識しており、関係省庁等で、真剣に考えているところですが、まだまだ努力していかなければならないことだと思っております。

(ストップ子ども買春の会 宮本氏)
 15年前、チェンマイ会議から子どもの商業的性的搾取に関わってきましたが、人身売買を含めて、本当にこれは年齢に関連のない搾取と虐待です。ただし、なぜ、子どもが先か、といえば、子どもは弱いから、子どもはより搾取されやすいから、まず緊急性が高いから、ということだと思います。
 児童虐待防止法においては、児童は虐待される被害者でしかない。しかし、商業的と入ってくると、子どもがあたかもおとなを誘い、それは子どもの自己決定だ、というような理屈がまかり通ってきており、加害者側、搾取している側が自己正当化できるような理屈になってしまっています。われわれは、日本社会は、どちらの側に立つのかが問われています。完全に人身売買で奴隷のようにされた人と、自分で分かっていたのに行ってしまった人と、扱いが違ってしまっている。それゆえに対策が進んでいないということがあるのではないでしょうか?
 私達がこの社会を改善させるのか悪化させるのか、社会の価値観がどちら側に立つのか、重要なひとつのポイントに来ていると思います。

(奥村弁護士)
 子ども買春等禁止法では、被害者はあるのか、という議論が現場では起こっています。
児童買春については、ひとりひとりの児童が被害者であるということは大体が知っていると思います。刑罰は大阪の方が軽いのですが、児童の方から誘った場合に、児童への帰責事由として被告人に有利な事情ととらえられます。 子どもポルノでは、被害者はいない、と大阪地裁で決定があり、大阪高裁も追認しました。東京高裁にかかっている事件については、特に製造について、児童虐待である、という判決があります。
 裁判官は法律だけを読んでいるので、被害者があると読む人もいれば、読まない人もいる、高裁のレベルでもわかれてしまいます。改正にあたっては、現場で誤解されないような法律にしてほしいと思います。

(関氏)
 日本で虐待の話がもちあがるときに、心理的なカウンセリング、アフターケアの少なさに驚かされます。法律を組むときにも、発達学的なアプローチを取り入れていただきたいと思います。加害者を保護するつもりはないのですが、虐待、特に性的虐待については、加害者自身が幼い頃虐待の経験があったりすることが多いものですから、処罰と同時に、加害者のケア、治療というものも考えなければ、社会的な問題の対処にはならないと思います。法律の問題も大切ですが、被害者、加害者ともに、発達学的、心理学的なアプローチが必要ではないかと思います。

(国際エクパット 宇佐美氏)
 人身売買、実はメジャーな問題なのに、意識の中ではマイナーという状況ですが、ご関心を持っていただけるのであれば、スウェーデン映画で、”Lilya 4-ever”(リリヤ・フォーエバー)という映画があります。親に捨てられ、18歳以下のパスポートで、スウェーデンに連れて行かれて、閉じ込められて、買春させられる、という内容です。スウェーデンのエクパットが事実に基づいているこの映画の招待券を国会議員に贈り、かなりの国会議員に見てもらい、人身売買への取り組みを進めたという事例がありました。
 日本ではまだ一般公開されていないのですが、今後、こうした映画を国会議員の方、一般の方にも見ていただきたいと考えています。上映等にご協力いただけるようでしたら、ご連絡ください。

 各委員会などへ、直接皆さんの意見を表明することで、法律改正案もより実効的なものになるものと思われます。ぜひ日本でも、これがメジャーな問題であると理解していただければ、社会の価値観を変えていく上でも大きな動きになるのではないかと思います。
 選択議定書の批准については、明日(3月18日)、外交委員会で最初の審議がはじまるそうです。本国会で、2法案の改正、そして選択議定書の批准を実現させるよう、皆様のお力添えをお願いいたします。

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