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アルメニア:子どもに優しい学校プロジェクト広がる【2009年4月20日 アルメニア発】 アルメニアの首都エレバンから200キロ離れたところに位置するシュニク地方イシュクハナサル村では、地方の貧困を象徴するような光景が見られます。 イシュクハナサル村には、現在250人が暮らしています。そのほとんどが非常に貧しい生活を送っており、もともとはアゼルバイジャン出身の人々です。ナゴルノカラバフの紛争の影響を受けて、アルメニアへ避難してきたのです。 危険な状況
この村の学校は、かつて農業共同体の娯楽クラブとして使用されていた古いソビエト式の建物の内部にあり、レーニンという名前がまだ使用されています。学校には、わずか40名の子どもたちしか通っていません。しかし、子どもに優しい環境からは程遠い教室内の状況を見れば、この状況は不思議ではありません。 それどころか、この学校に子どもたちが通うことには危険が伴います。壁や天井が落ちてきたり、冬でも暖房がなく、衛生施設が不十分で、必要最小限度の学校用具でさえ整っていないことから、子どもたちだけでなく、教師にとっても危険な場所なのです。 「子どもたちに歴史を教えていた時、突然ひび割れの音がして、その直後に大きな壁の破片が私のすぐ近くに崩れ落ちてきたんです。」アラ・ダブチャン校長先生は話しました。 大きな変化イシュクハナサル村からたった数キロ離れた場所では、状況は全く異なります。シャキ村近くの学校は修復され、子どもたちと教師たちによって適切に管理されています。約200名の児童・生徒が学校に通い、コミュニティの中心となっています。 しかしながら、ユニセフがゴリス教員組合、NGOなどのパートナーと共に、子どもに優しい学校の試験的なプロジェクトをシュニク地方に導入した2007年までは、こうした状況は見られませんでした。 「この取り組みを初めて聞いたとき、参加することをためらっていました。」リマ・サルグスヤン副校長先生は話します。「しかし、リスクを負ってでもこのプロジェクトに参加した意味がありました。私たちの強みと弱みを認識することができましたし、進むべき正しい方向を見つけることができました。」 子どもに優しい学校の基準を満たす
このプロジェクトの開始は2006年にまで遡ります。2006年、文部科学省はユニセフの支援を受けて、学校を子どもに優しい学校と認定するのに必要な基準を定めた枠組みを作成しました。 必要基準を満たした学校は、子どもたちのやる気を引き出し、学習できる環境を整えています。スタッフのメンバーは親しみやすく、子どもたちを歓迎する雰囲気を持ち、子どもたちの健康と心の状態、安全性に気を配っています。子どもに優しい学校は、一人ひとりの子どもたちのニーズを満たす空間を提供することによって、子どもたちの伸び盛りの学習能力を認識し、更なる発達を促しているのです。 アルメニアの試験的なプロジェクトでは、基準を満たした7つの学校が「子どもに優しい学校」として推薦され、特別賞を受賞しました。 「このプロジェクトによって、学校はより良く組織され、授業の質も向上しました。また、教育と子どもの権利に関する問題に、コミュニティを巻き込む手段としての役割を果たすようになりました。」と、ユニセフのアルバード・ポグホヤン教育担当官は話します。 小さな村の希望2008年、ユニセフは、文部科学省、NGO,地元の教育関係者などのパートナーと共に、アルメニアのシュラク地方やロリ地方で子どもに優しい学校プロジェクトを広めています。学校経営陣、教師、親、子どもたちを対象に、子どもに優しい学校に関する関心と知識を深める活動を始めました。 こうした活動の結果、この地域の約80パーセントの学校で現在、子どもに優しい学校の基準を導入することが計画されています。 今年、ユニセフは、アルメニアでの子どもに優しい学校のコンセプトの導入が、これまでどのくらいの成果をあげているかを調査する予定です。調査結果に従って、全国でこの活動を広めるための方法を認識するために必要なアクションプランが考案されていくはずです。世界中で、ユニセフは、実用的なガイドブックである「子どもに優しい学校マニュアル」を広めています。このマニュアルは、各国で、周囲の環境に最も適合した子どもに優しい学校を計画し、実施する手助けになっています。 ぼろぼろの教室を見ながら、イシュクハナサル村の校長先生は、地方当局が2009年に新しい学校の建設を始めると約束したことを話してくれました。この小さな村にもいつか、子どもに優しい学校をつくるという希望が見え始めています。 |