労働の合間に教育の機会を
<バングラデシュ>
バングラデシュはインド北西部、カルカッタからほど近いところに位置している人口1億2千万人の国です。洪水や干害など自然災害に見舞われ、家屋や財産を失った人々が流入する首都ダッカ。政治、経済の中心として急激な発展を見せていますが、現在スラム、あるいはスラムに近い環境の中で生活する人々が人口の50%を占めるまでになっています。そのダッカにあるユニセフの事務所で14年間にわたり、バングラデシュの子どもの教育改善に力を注いできた、現地職員のナルール・イスラムさんが日本ユニセフ協会の招聘(しょうへい)で来日、児童労働の現状についての講演会を日本各地で開きました。
「貧困、自然災害、人口爆発など、さまざまな要素が複雑に絡みあって、児童労働は大きな社会問題となってきました」。ナルールさんはうつむきます。現在バングラデシュで働く子どもの数は7百万人。重たいレンガの運搬、農薬散布など、常に危険にさらされた劣悪な状況下で働いています。「しかし児童労働の問題は子どもを雇用主から開放すれば解決するほど単純ではありません。家には子どもの収入で生活している家族がいるのです」
働いている子どもたちは学校にも行くことができません。ユニセフは1996年からこうした子どもたちに対して基礎教育の機会と収入が両立するような支援事業を開始しました。長期にわたり何度も何度も雇用主との交渉を重ねた結果、「一日あたり3時間を、工場近くの学校に通わせることで合意することができました」。この支援事業により、子どもは安定した収入と読み書き、計算、そして簡単な職業技術を習うことができます。こうして身につけた技術や知識により、将来さらに条件のよい仕事に就く可能性も生まれました。ユニセフの2000年までの目標、バングラデシュで働く35万人の子どもたちに教育の機会を与えるため、ナルールさんは毎日ダッカの街を奔走しているのです。
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