<2003年9月3日掲載>
勇気を奮い起こせ!
女の子が古い慣習に立ち向かうとき
<バングラデシュ>
16歳になるシャンタは、何百年も続く慣習に立ち向かい、勝利を手に入れました。「生理のときは学校に行くことを許されていなかったんです。試験日に生理日があたったりして何度試験を落とされたことか、悔しいったらなかったわ! それが、青年女子クラブで、生理があっても女の子は学校に行く権利があるんだと知ったんです」
シャンタは両親を説得するのに苦労しました。バングラデシュの農村部では、女の子は生理があると学校に行けないのです。昔からの考え方で、生理のときは、牛乳、卵、魚や牛肉もとってはいけない、シャワーも浴びてはいけないことになっています。
「青年女子クラブで使っている本をお母さんに見せたんです。家に閉じこもったり、タンパク質をとらないことが、どうしていけないのかを解説してあるんです。単なる迷信で、体には良くないって。でも、お母さんは、これは母親から教わったことだから、と耳を貸してくれませんでした。そこで、おばあさんと話をして…それでやっと分かってもらえたんです。おばあさんが両親を説得してくれて、毎日学校に行けるようになりました」
「交渉術」は、「キショリ・アビジャン(ベンガル語で『青年の旅』という意味)」と呼ばれる青年女子の能力開発プロジェクトでの人気教科です。これはユニセフと女性・子ども省がバングラデシュの農村部の女性問題局を通して2001年から始めているプロジェクトで、シャンタは、このモデルプロジェクトが行われている14農村部のひとつチャンディナに住んでいます。
「私はけっこう内気だったんです。それが青年女子クラブに入って、今まで聞きたくても聞けなかったようなことまで知ることができるようになりました。私が住む村では女の子の多くは14歳で結婚します。ときには12歳で結婚する子もいるんですよ。姉のようにね。姉は何度か流産しました。従姉妹の2人は15歳で出産して、そのまま命を落としました。青年期に女の子の体がどのように成長するかをクラブで学びました。早く結婚しても、体のほうは子どもを産めるほど成熟していないんですね。そういう意味でも、私自身は18歳までは学校に通いたいと思っています」
シャンタは青年女子クラブで知り合った友達、ハスムナ(16歳)とルクサナ(17歳)と一緒に、14歳で女の子たちを結婚させようとしている近所の人たちのところを回ることにしました。今週はサレハを早婚から「救う」ことに成功!
「忍耐強く、あきらめることなく、がんばればできることを学びました。最初にサレハの家に行ったときは、お父様に断られました。話もしたくないと、けんもほろろでした。2回目は、顔を見ただけで追い返されました。そこでサレハの叔母さんのところに行ったんです。叔母さんには6人の子どもがいて、数カ月前に“青年女子クラブでは避妊の話とかも教えるのか?”と聞かれていたんです。叔母さんには知っていることを話して、何でも話せる仲になっていましたから、サレハの結婚の話にも耳を傾けてもらえました。私たちは18歳未満の結婚は法律違反だということを教わっていたので、叔母さんにその本を見せたんです。しばらくして、叔母さんはサレハのお父様に、なぜ早婚がいけないのかを話してくれました。その後、私たちも直接サレハのお父様に会って話をすることができした。それで、とりあえず、あと1年、サレハを学校に行かせてくれることになったんです。時間稼ぎができたから、あとは根気強く交渉を続けるだけです。サレハも青年女子クラブに来られるようになるといいな、と思っています」
女の子の多くは、学校でかかる文具や教科書の代金が払えずに学校に行くのをあきらめます。でも青年女子クラブは、例えばハスムナのような子に職業訓練をし、学校を続けられるよう支援しています。ハスムナはカメラの撮影を習い、2,300タカ(約40米ドル/約4600円)のローンでカメラを買いました。
「結婚式などのイベントで撮影の仕事をしているの。1枚で100タカ(約1.7米ドル/約200円)もらえるから、もうローンも払い終えたわ。最初は男の人たちにからかわれたけれどね。男の子にやりすぎだと言われたことがあるわ。“女の子がカメラマンなんてさ、家族も恥ずかしくないのかね”って」
でも、ハスムナのお父さんは、「村の男どもの言うことなんか気にするな」と言って、その男の子のところに行き、「うちの娘には才能があるんだ。仕事も勉強もできる。大きな未来があるんだ。お前の姉さんたちだって同じようにすればいいだろう」と言ったそうです。でも、そのハスムナのお父さんでさえ、最初はハスムナが青年女子クラブに入るのを許してくれなかったそうです。チャンディナ地域の青年開発プログラム担当長官のサヘラ・ベグムは、何度も両親のところに足を運んだと言います。
「それがどうですか、ハスムナのお父さんの変わりようは! ハスムナがクラブに入って3年になりますが、お父さんを説得するの1カ月かかったんですよ。今ではまるでプログラムの広報官のようなことを言っていますけれどね」
シャンタとハスムナはピア・リーダー(「同じ年代の指導者」という意味)となり、子どもの権利、ジェンダー(社会的文化的性差の問題)、リプロダクティブ・ヘルス(性と生殖に関する健康)、女性の能力開発などについて、同じような年代の女の子たちに知識を伝えています。ユニセフは、こうしたピア・リーダーたちに1,000台の自転車を提供し、足まわりを支援しています。「歩いているだけで男性にあれこれ言われるんです。女の子は家にいるもので、両親の多くは、外で女の子たちが遊んだり、人と話したりするのを許しませんから。そういうわけで、女の子同士、話ができるところは青年女子クラブしかないんです。自転車があれば、クラブに行くのも楽だし、みんなにからかわれてもあまり気にしないですみます」とシャンタは言います。
ユニセフの緊密なパートナーであるバングラデシュのNGO、BRAC(バングラデシュ農村振興委員会)のネットワークのおかげで、シャンタとハスムナのような青年女子50,000人が青年女子能力開発の恩恵に預かっています。もうひとつのパートナー、科学マス・エデュケーション・センターの協力で、同じプロジェクトのもと、2,500人の青年女子と1,500人の青年男子が同じように恩恵を受けています。
女性問題局と共に、ユニセフは政府役人、地方のリーダー、両親を対象にジェンダー面での研修をおこない、青年女子をバックアップする環境作りにも配慮しています。若者たちの意見を取り入れて、ユニセフと女性問題局は全国レベルの交流プログラムを実施しています。これはバングラデシュのいろいろな地域から男の子、女の子を呼び、交流させようというものです。2003年7月には、能力開発プロジェクトが始まって以来4度目のワークショップがチッタゴンで開かれ、バングラデシュ中のピア・リーダーたちが集まり、アイデアを交換したり、問題を分かち合って解決方法を見出したりしました。
ユニセフは、青年女子能力開発プロジェクトを、ほかのプロジェクト(例えば出生登録プロジェクト)と結びつける努力をしています。例えば出生登録プロジェクトと結びつけるものでは、ユニセフの研修を受けた青年女子がコミュニティの中で出生登録をみんなに呼びかけ、字が読めない人たちにも分かるパンフレットを配ったりしています。そのほかにも、子どもや女性に対する性的虐待、搾取、差別などをなくすためのプロジェクトがあります。
「ピア・リーダーになる前は、おとながいる所では口を開くことを許されなかったんですが」とシャンテ。「今では、家族やコミュニティの人たちの前で話をしても、平気になりました。青年女子クラブで習ったことをみんなに教えると、逆に尊敬されるようになったんですよ」
ユニセフのピア・リーダーの研修を通して、20,000人の青年女子が、コミュニティの中で、ほかの若者たちのロール・モデルとなっています。
バングラデシュはユニセフが行っている「2005年までに25」プログラムの対象国のひとつです。これは2005年までに女の子の就学率を上げようというキャンペーンです。
いくらで何ができるのでしょうか?(1米ドル=115円で換算)
- ピア・グループのリーダーが使う自転車1台分: 40米ドル(4600円)
- キショリ・アビジャンで使われる本1冊:0.33〜0.42米ドル(38〜48円)
- マンガで書かれている解説本: 1冊0.59〜0.67米ドル(68円〜77円)
2003年9月までには、新しいマンガ解説本5冊ができあがる
- ニューズレター: 各号2米ドル (230円)
- 交流プログラム: 7,000米ドル〜10,000米ドル(ファシリテーターの研修も含む)(805,000円〜1150,000円)
- ライフ・スキル用教材: 11袋分で1セット 1セット5米ドル(575円)
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2003年8月27日(ユニセフ)
フレデリック・ザイデル、バングラデシュ・ダッカ
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