メニューをスキップ
HOME > 世界の子どもたち > ストーリーを読む
財団法人日本ユニセフ協会

世界の子どもたち

エンジニアになりたい! 〜ファティマの夢
<バングラデシュ>


 ひと昔前、ファティマのような女の子たちには基本的な家事以上のことを学ぶチャンスがあまりありませんでした。先生は12歳くらいだろうと言いますが、ファティマは自分の年齢を知りません。両親ですら何年に彼女が生まれたのかわからないのです。両親は学校に行くどころか、その多くの時間を食料調達に費やし、苦しい生活を送ってきました。現在は5人の子どもと一緒に、バングラデシュ北西部にある村の、電気も水道もない間に合わせの小屋で生活しています。お父さんは力車引きとしてしばらく働いていましたが、今は家で牛、7羽のにわとりとヤギの世話をしています。お母さんは学校の清掃と家政婦という2つの仕事をしています。

ファティマは3年前、近所の家のテレビで初めて「ミーナ」というアニメを見ました。ユニセフ制作のこのアニメは、主人公である10歳のバングラデシュの女の子が、女の子に害を及ぼすような伝統的な習慣に疑問を抱いて立ち向かい、自分の権利を実現する道を切り開いていくというストーリーで、それらを通して女の子の教育を呼びかけています。「両親に話したの。ミーナみたいに学校に行きたいって。2人の姉さんはちょうど私くらいの年で結婚してしまったわ。でも、ミーナが女の子はそんなに早く結婚するべきじゃないって言っていたの」お父さんは一番小さな娘がまるで男の子のように学校に通うことに戸惑いましたが、反対はしませんでした。

「お母さんと私たちの牛のラリに感謝しているわ」(ミーナの牛の名前にちなんでファティマは牛にこの名前をつけました)ファティマは言います。「お母さんが働いて、ラリが1日に3リットルのミルクをくれるから、食べものに困ることはないんです」両親が制服を買う余裕がなく、制服を着ないで登校するファティマのような生徒がクラスの中に数人います。「いつも同じ洋服を着ているってからかわれることもあるわ。でも気にしない!」ファティマは笑顔で言います。「将来エンジニアになりたいと思ってるの!」はっきりとした口調でそう付け加えました。

「3年前私が学校に通い始めたとき、クラスで寝ている先生を見つけたの。」ファティマは少し困ったように言いました。「でも今は先生たちも授業を楽しんでいるように思えます。先生たちはもう宿題をやらせようとして棒切れを使ったりしません。その代わりに、今はゲームとか、トランプとか、本とか私が大好きなものをたくさん使ってくれるのよ。去年なんてみんなの絵で壁を埋め尽くしちゃったんだから!」

ファティマは英語の授業で演劇をするのが大好きです。彼女は今、読み書きの授業に通い始めたために周りの人からいじめられるフェロザという女性の役を演じています。クラスメイトのマサム君はフェロザをいじめる役です。「フェロザは狂っちまったのか!」マサム君は教科書を読みます。「フェロザは家にいて、家族のごはんを作るべきなんだ。なんで学校へなんか行く時間があるのだろう」フェロザ役のファティマは答えます。「もしどの食材が子どもにいいのかわかったなら、私はもっとうまく料理を作れるわ。そして数を数えられたなら、小さなお店を開いて果物を売ることだってできる」

ファティマのエンジニアになりたいという夢は友だちの多くにとって現実離れしているように思えますが、学校とミーナはファティマにこんなに大きな夢を持たせてくれました。

トップページへコーナートップへ戻る先頭に戻る