<2002年7月16日掲載>
就学前子どもセンターで子どもは元気に活動!
お母さんには自由時間!
<ベニン>
タヌホ就学前子どもセンターに通うマルセルは3歳。ほかの30人の子どもたちといっしょに歌を歌ったり、詩を朗読したり、短いフレーズを何度も唱えたりと、とてもいい子にしています。笑顔で子どもたちを見守っている若い女性は、このセンターの先生ノエリエ・アゴグニデサウです。
遊び時間に、イーダともうひとりの女の子がアヒル歩きを始めました。ノエリエは、しっかりしゃがむとアヒルらしくなるよと教えます。マルセルは自分のボールを持ちあげてはまた地面に置いています。前かがみになってボールを守るその様子は、ベニン出身の有名なゴールキーパー、トーマス・ヌコノのようです。遊び時間には自然にいくつかのグループができて、タムタムとゴングでミュージシャン気取りのグループもあれば、マットに座ってパズルをするグループもあります。部屋にはテーブルもいすもありません。子どもたちはみんないっしょに床に座ります。空っぽの入れ物を頭にのせている女の子は、友達とお買い物ごっこをしているのです。
2001年10月に就学前子どもセンターが再開されてから、ノエリエは元気いっぱいの子どもたちをじっとさせ、遊びを通じて勉強への興味をかき立てようと努力しています。歌や詩で記憶力をきたえたり、「食事の前には手を洗おう…」と健康や衛生に関する重要なメッセージを伝えたりします。スポーツも活動内容に入っていて、小さな子どもたちはセンターで楽しく過ごしています。このセンターは、ベニンの経済の中心地コトヌーから北に140キロ以上も離れた、ディジジャ県のタヌホ村にあリ、公立小学校の教室を間借りしています。
このように就学前子どもセンターの多くは学校の敷地内に置かれています。外に作ると安全面に不安があるし、学校にある教材やよい指導も得られるからです。就学前子どもセンターの目的は、遊びや教育的な手法を通じて子どもたちにさまざまな刺激を与え、社会性や知識学習能力を身につけさせることにあります。校舎内に適当な場所がなくても、校庭の一部でセンターを開くことは可能で、タヌホのセンターもそうしています。
マルセルのクラスをのぞくとびっくりします。ここで子どもたちが話しているのは、この村で使われているフォン語という言葉です。地元の子どもの母語であるフォン語で、すべての活動が行われます。センターは、子どもたちの意識を目覚めさせ、刺激を与え、社会の一員として育てるところなのです。センターは、「教育とコミュニティ(Educom)」というプロジェクトによって戦略が練られ、実践されています。このプロジェクトは、ベニンで実施されている支援プログラムの枠内でユニセフが支援を行なっており、就学率を上げ、子どもたちを守り、学習の機会を増やして学校への愛着を高めることが狙いです。センターにはヘルスワーカーが定期的に訪問し、環境改善のために行動を起こすこともあります。センターに子どもがいつも来ていれば、出生証明書をきちんと持っているかどうか容易に確認できます。
ノエリエは、子どもたちが表す熱意や喜びをその目で見てきました。「クラスはだいたい午前9時に始まって、11時に終わります。でも子どもたちは8時にやってくるし、上の学年の授業が終わる12時ごろまで帰ろうとしません。」子どもたちは、センターの活動が大好きなのです。その証拠に、イーダは誇らしげにこう言います。「ずっと学校にいたい」
ユニセフは初等・中等教育省と協力して、地域との間でプロジェクトの遂行とフォローアップを担う仲介者を任命しています。仲介者はプロジェクトを地域に浸透させ、親や教師のトレーニングを行い、センターで幼児教育を行う保母にトレーニングを実施し、モニターする役目を担っています。仲介者であるジャネット・Aは次のように話しています。「以前は年上の女の子が、小さい妹や弟の世話をしていました。しかし今ではセンターがあるので、彼女たちは学校で勉強したり、仕事を覚えたりする余裕ができました。また母親も、自由になった時間で毎日の仕事をこなすことができます。」
センターに子どもを通わせるのに、ほとんどお金はかかりません。制服はなく、教材もプロジェクトが提供します。ただし、子どもたちを指導する保母に報酬を支払わなくてはならず、貧困にあえぐ村の人にはこれが負担になっています。もっとも保母自身も、子どもたちの世話をするこの仕事に就くとき、過大な夢を描いていたわけではありません。「収入面では私が犠牲になるけれど、それが子どもたちの将来のためになると説明を受けたの」と語ります。しかし彼女は、プロジェクトが村の女性グループに行っている少額融資制度によって、親たちの経済能力が強化されれば、保母の待遇も良くなるのではないかと期待しています。しかも、センターで働く保母の待遇を改善する恒久的な解決策を探ろうと、地元の開発機構が行政やPTAと議論を始めたところなので、期待はさらに高まります。このプロジェクトの目標が達成されれば、マルセルやイーダのような多くの子どもたちが、明るい未来を描けるようになるでしょう。
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