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≪2004年5月10日掲載≫ もういちど学校に通える! ニムのお話
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二ム・ドルマ。ユニセフが支援する学校外教育(NFE)の学校に通っている。 |
ニム・ドルマは通い始めた学校をたった4年でやめてしまいました。家計に余裕がなかったからです。ですが、ユニセフとパートナー団体による教育革命のおかげで、現在18歳のニムはもう一度学校に通うチャンスを与えられました。
ピンク色に染まったほほと服装、カラフルなリボンで飾られた三つ編みの髪とヤクの革の黒いベレー帽。その身なりから、ニムが独特の豊かな文化をほこる民族、ブロックパの女性であることがわかります。
ニムの両親は遊牧民で、ブータン東部の山岳地帯で家畜の牛やヤク、羊の世話をして生涯を過ごしてきました。ブータンは中国とインドという2つの大国にはさまれ、困難な歴史を経てきたヒマラヤ山脈の小さな王国です。ニムの家族が暮らすサクテン村は、一番近い舗装された道から歩いて2日かかりますが、300世帯が暮らす村には小学校のほか、基礎的な保健サービスを提供する施設と警察、役所があります。
ニムは6人きょうだいですが、両親と一緒に暮らしているのはニムと小学1年生になる妹だけ。他の4人のきょうだいはブータンの首都、ティンプーに移り住んでいます。年長の子どもとして、ニムは両親の面倒をみなければなりません。ですが、学校外教育の学校に戻って、読み・書き・計算を学ぶことによって、ニムは母親にはなかった選択肢が与えられるとともに、ほんの10年前には同じブロックパの女性には想像もできなかった自立への道が開けるのです。
「朝7時前に起きて、食事の準備に使う竹や薪を集めにいきます。そのあと、庭の手入れをしたり、絹の糸巻きをしたり、毛布やゴ(男性用の伝統衣装)を織るんです」ニムは言います。「時間があるときは友だちの家に行っておしゃべりをしたり、絹をつむいだり、一緒に本を読んだりしています」
ニム・ドルマ。 |
夕方になるとニムは学生に戻ります。学校外教育の教室は2時間にわたりますが、日中家畜の世話をしたり、農作業をしなければならない子どもたちが通えるよう、遅めの時間に始まります。教室はニムの家から歩いて30分の村の小学校です。
真っ暗な夜のとばりの中、窓の向こうでゆらめくちょうちんだけが光を放っています。お経を唱える声が山の上の薄い空気をみたしています。教室の外には、たくさんの靴が脱いであります。教室の中では男性と女性のグループが真剣に授業を聞いています。ブータンで進む学校外教育が、読み書きのできない大人の数を減らし、より多くの子どもと女性を学校へ送り、さらに貧困に苦しむこの国の顔を変えようとしています。
1992年、ブータン政府とユニセフがこの学校外教育制度を設立したときは、6ヶ所の教室に300人の生徒がいるだけでした。以来このプログラムは国中に広まり、拠点となる教育センターは350ヵ所以上に増えました。参加生徒の数は年間約1万人にものぼり、新入生の約7割は女性です。
教室は週5回、夕方に開かれる基礎識字コース(12ヵ月間)と、その後に続く9ヵ月間のコースとに分かれますが、どちらも授業料は無料です。
ユニセフの取り組みによって、ブータンでは1992年からの10年間で1万500人の女の子と女性が基礎教育を受け、家族やコミュニティ、そして自分自身の生活を大きく変えることができました。
NFEに通う生徒。
「ゾンカ語(ブータンの公用語)の読み書きができるし、衛生面で他の人たちにアドバイスすることもできます。町に出たときに看板を読んであげることもできるんです」とニムは言います。
カリキュラムでは、保健と栄養、衛生、家族計画、出産後のケア、予防接種、HIV/AIDS、乳幼児総合ケア、そして教育の価値について学びます。教室は、開発問題に関する主要なメッセージを伝える手段としても大きな役割を果たしています。都市部に暮らす女性も、農村部に暮らす女性も、初めて学校に通う女性も一度やめた学校に戻るチャンスに恵まれた女性も、みんなが教室で吸収し、成しとげつつある成果に自信を抱いています。
「1〜2年生の子どもたちにゾンカ語の読み方を教えることができるんです」学校外教育のクラスに通うある主婦は言います。「教室では衛生に気をつけることの大切さを学んでいます。例えば食事の前に手を洗うこと、栄養のある食事をとること、家をきれいにしておくこと、そして子どもに着せる服のことなどです。おかげで子どもたちは健康で、きれいな身なりをしています」
教員のトレーニングから教科書の印刷、コミュニティスクールの建設やトイレの設置にいたるまで、すべてをカバーするユニセフのプログラムは、教室に通う女性の中に自信を育み、それぞれの才能を発揮する助けになっています。今日では、国民議会に参加する女性地域代表の多くが学校外教育の出身で、ブータンの女性のお手本になっています。
「読み書きの勉強を終えたら、クインセル※や母国語の本を読みたいんです。そして、いつか村の代表として国民議会に参加したい」と学校外教育で学ぶもう一人の女性も言います。
起伏に富んだ国土と偏った人口、校舎・教材・設備の不足が、ブータンの女の子が学校に通う妨げとなってきました。女の子は家にいればいいという伝統的な考え方が、さらに問題を難しくしてきました。学校外教育は教育面での男女間のギャップを解消しようとするユニセフの努力の中心になるもので、2007年までにすべての子どもに初等教育を受けさせるというブータン政府の目標を後押ししています。
2001年に学校外教育のネットワークに加わったサクテン村では、24人が卒業しました。そのうちの13人は女性です。2002年には、ニムを含む19人の新入生が加わりました。ブータン全体では約6,000人の女性と女の子が学校外教育に加わりました。
「女性を教育することは、国を教育すること」ブータンはそう確信しています。ニムのような女性は今、国民の意識を高めるために1人ひとりがそれぞれの役割を果たせるようになりました。ユニセフは、その推進役になっています。
※ ブータン国営の週刊紙。ユニセフの支援により、全国の学校外教育の拠点センターに配布されている。