<2002年2月4日信濃毎日新聞掲載>
珍しくない10代前半での出産
<ボスニア・ヘルツェゴビナ>
その難民キャンプは、小高い丘の上にありました。ボスニア・ヘルツェゴビナの首都サラエボから約20キロ離れたブレザという町の中心地から10分ほど車を走らせ、砂利の山道を上がった頂上に、簡素な木造の住居と学校、プレハブの幼稚園が並んでいます。この難民キャンプでは、1999年のコソボ紛争で、コソボ自治州を含むユーゴスラビア連邦共和国から避難してきた少数民族ロマの家族が約600人生活しています。
丘から見下ろす町並みが夕日で照らされ、キャンプに長い影ができるころになると、学校の周りに若い女性や幼い子どもを抱いた母親が集まってきました。小学校の授業を終えた子どもたちと入れ替わり、女性が教室に入っていきます。夕刻からは、母親学級が始まります。
母親学級は、99年からユニセフが地域のヘルスワーカーと協力して始めたプロジェクトです。週に1度、サラエボ市内から担当の産婦人科医と小児科医がキャンプを訪問し、妊娠中の女性、幼い子どもを持つ女性を問診しています。母親学級では、妊娠、出産、育児に関する知識を普及するとともに、予防接種の実施、母子手帳の作成、出席した女性へのせっけん、シャンプーなど衛生用品が入った小さな箱の配布をしています。
また、女性を20人ずつ集めて4つのグループを作りました。グループが作成するリストに基いて、ミルク、野菜、果物などをユニセフが提供したり、チェックリストで、子どものケアについてわからないことを確認しあったりします。
ロマの女性は、これまで病院へ行く習慣がなく、避妊の知識もありませんでした。平均出産回数は5−7回、10代前半で子どもを産む例も多く、ときには母娘が同時に妊娠することもあります。女性の平均寿命は45歳−50歳。ロマの男性の平均寿命55−60歳と比べると10年も短いのです。
ユニセフは、難民キャンプで暮らす女性と子どもたちが最善のケアを受けられるよう支援をしています。ブレザの難民キャンプで開かれている母親学級がモデルケースとなって、今年、ボスニア・ヘルツェゴビナの帰還難民のためにプロジェクトは広がっていきます。
|トップページへ|コーナートップへ戻る|先頭に戻る|