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財団法人日本ユニセフ協会

世界の子どもたち

2003年7月2日掲載

大活躍の子ども議員たち:
おとなには教える責任が、子どもには学ぶ責任が
<ブルキナ・ファソ>


ブルキナ・ファソの子ども国会の議員たちは、たとえ相手がメディアであろうと、子どもの権利を訴える団体とであろうと、いつでもどこでも積極的で、熱意にあふれ、声が大きい。今週開かれた女子教育促進のための「2005年までに25カ国を」イニシアチブの打ち上げ式でも、子ども議員たちは目立っていました。
「子ども議員に選ばれたのは、2002年12月でした」と自慢気に語るのは12歳のジョナサンです。「子どもの差別をどうしてもなくしたかった。だから、子ども議員になったんだ」いつも笑顔を絶やさないジョナサンはすぐに手を差し出しては握手を求めました。「6歳のときに失明したけど、その後点字も覚えたから、読み書きはばっちりだよ。ここウガドゥグでは『視覚障害児のための学校』に通っているんだ。子ども議員になるには、選挙に当選しないと駄目なのだけれど、僕のときはほかに3人の候補がいた。僕が当選したのは、僕が話し好きで、子どもたちのために、何とかしたいという気持が強かったからだと思う。今、僕は『情報と動員のための委員会』の副議長なんだ。仲良しのムマ・カンディも一緒さ」

「私たちはみんな全国子ども国会の議員なの」14歳のムマ・カンディはジョナサンの肩を抱きながら言います。「2002年12月に選ばれて、任期は3年間。子ども国会には100人の子ども議員がいるんだけど、50人が女の子、50人は男の子。ブルキナ・ファソのすべての州から代表が出ているの。全部で45州あるけれど、それぞれに子ども国会があって、30人の議員がいる。男の子が15人、女の子が15人。…ということは、ブルキナ・ファソには1,450人の子ども議員がいるというわけ。みんな同じゴールに向かって頑張っているのよ。そう。子どもたちがみんな、自らの権利を行使して享受できるように、と」

「『2005年までに25カ国を』イニシアチブの打ち上げ式で、ブルキナ・ファソの大統領とユニセフの事務局長と一緒にスピーチをしたわ」と語るのは16歳のスワイブ。全国子ども国会の議長だ。「スピーチも大切だと思ったのだけど、具体的な行動がほしかったの。だから、このイニシアチブを支援するために全国の子ども議会、あるいは州レベルでの子ども議会で合意した4つの具体的な行動について発表することにしたの。その1、子ども議員が、おのおの、学校に行ったことのない女の子を必ずひとり学校に就学させること。その2、教育省の指定州に住む、困難な状況にある女の子たちの学費を支援するために、500,000CFAフランを私たちの財源から支援すること。その3、女の子に対する教師の性的虐待や搾取を予防するために、国や地方レベルで、意識向上キャンペーンを繰り広げること。その4、アフリカ中の子ども国会と情報交換して、どうしたら子どもたちを学校に通わせることができるか、経験を分かち合うこと。こんなことを発表したの」

「私は地方子ども国会の議長よ」と自己紹介したのは、愛想の良い10歳のハナ・マリーです。「私もいろいろな人たちと話すことができたわ。大統領やユニセフの事務局長、メディアの人たち、政府の役人、募金者たち、国連・NGO・市民社会・宗教界のリーダーや部族のリーダーたち。そして、もちろん子どもたちと。『2005年までに25カ国を』イニシアチブの打ち上げ式でのことよ。HIV/エイズの危険性について、子どもたちにきちんと情報を提供してほしいと訴えたの。おとなたちは、子どもに性の話をすると、逆に興味を持つからいけないと思っているらしいけれど、そんなことないわ! おとなたちが正確な情報を子どもたちに与えなかったらどうなると思う? 子どもたちはHIV/エイズのことを知らないまま大きくなってしまうのよ。あるいは、知るかもしれないけれど、命と引き換えにそれを知ることになるわ。おとなたちは、私たちに教える責任があるの。そして、私たちは学ぶ責任があるわ。おとなたちがきちんと教えてくれなくても、いずれは学ぶかもしれない。でも、それは命と引き換えになるの…」

「子ども議員たちはみんな積極的です」と語るのはユニセフのブルキナ・ファソ事務所『参加とコミュケーション』担当官のモデステ・ヤメオゴです。「ユニセフは、社会問題省を通して、子ども議会に資金的援助をしています。もちろん、技術的にも専門的にも支援しています。彼らの本当の意味での参加を促進したいから。子ども国会の本部には、コンピュータ、電話、インターネットを提供し、子どもたちが世界中と情報がやりとりできるようにしています。こうやっていろいろなことを学んでほしいのです。図書館の本も、HIV/エイズから子どもの権利まで、広範囲な題材の本を取り揃えて寄付しましたし。ユニセフのベルギー国内委員会からは、遊びのための学習ゲームなども送られています。子どもたちには遊ぶ権利もありますからね」

「ユニセフは、子どもの権利について、国レベルでの意識向上キャンペーンを展開できるよう支援してくれています」14歳のティティは言います。「そうは言うものの…すごく難しいんです。州の数が多いし、それぞれの州で抱えている問題は違うし。例えば、北部では、子どもたちが家畜の面倒を見るために駆り出されているので、学校の生徒数が少ないのが問題なのですが、南部では、逆に、学校に行きたい子どもの数が多すぎて、学校が足りない状態なのです。リベリアやコートジボワールでは紛争が起きていて、ブルキナ・ファソにも悪い影響を与えているのですが、それも心配です。ユニセフが展開している『人間の保障による平和の構築と紛争解決』プロジェクトについて聞いたことがあるんですが、それにも参加したいと思っています。この地域に平和をもたらすために、ほかの子ども議員たちと、あるいはおとなの議員と一緒になって努力したいと思います」


ユニセフ事務局長と子ども議員とのQ&A:

ユニセフと世界銀行がウガドゥグで6月24〜25日に開催した「女子教育への投資」地域ワークショップの開会式と「2005年までに25カ国を」イニシアチブの打ち上げ式に出席したキャロル・ベラミーユニセフ事務局長。これらの行事の後でブルキナファソの子ども議員たちと話をする機会がありました。そのやりとりの一部を参考までに掲載します。

子ども議員(Q):

 昨日、あなたは西・中央アフリカでの女性教育を促進するための「2005年までに25カ国を」イニシアチブを打ち上げましたが、世界中の子どもを対象にしたイニシアチブというのはあるのでしょうか?

キャロル・ベラミー事務局長(A):

 ありますよ。今年5月22日に、国連子ども特別総会を開催しましたが、これは子どもについて国連が開催した初めての特別会合でした。総会では、世界中の子どもたちのために4つの優先事項が決められました。健康的な生活を促進すること、質の高い教育を提供すること、HIV/エイズと闘うこと、そして暴力、虐待、性的搾取から子どもを守ること。この4つの優先事項です。特別総会は、実際の行動に結びつけたという意味では、重要なイニシアチブになったと思います。

Q:

 戦争孤児やHIV/エイズ孤児に関して、ユニセフではどのようなことを行っているのでしょうか?

A:

 戦争もHIVも、残念なことに、世界中の人々に影響を与えるグローバルな問題ですね。でもどちらの問題もアフリカで一番大きな問題となっています。この根本原因を追求しなければいけませんが、そのためには戦争やHIV/エイズを減らす努力をしなければなりません。戦争はおとなに訴えかけてやめさせなければなりません。なぜなら、子どもに罪はなく、犠牲者なのですから。HIV/エイズですが、今、世界中の若者たちに、エイズの原因は何か、どうしたら防ぐことができるかを教えています。でも、知識だけではどうしようもないのです。若者たちは、その知識を行動に移さないと駄目なのです。HIV/エイズの感染やその影響を防ぐには、それ以上良い方法はないのです。現在、アフリカだけで何百万ものエイズ孤児がいます。こうした子どもたちが学校に行く機会を得られるように、差別を受けないように、面倒を見てくれる家族がいるように、保障すること。これが大切です」

Q:

 「2005年までに25カ国を」イニシアチブ以前に子どもたちを学校に行かせようと、キャンペーンを打ったことはありますか?

A:

 ええ、あります。調査結果では、親たちは子どもたちに学校に行ってほしいと願っているのです。でも、それを阻害する要因がたくさんあるんです。例えば戦争や貧困。親自身が学校に行っていないと、教育の重要性とか価値も分からない、そういう理由もあります。それでも子どもにだけは教育を受けさせたいと思っています。ケニアでは、すべての子どもについて、学費を無料にする措置をとりました。学費がタダになったのです。そうしたら、学校に行く子がすごく増えました。これは貧困とか学費が、子どもの教育を阻害する要因になっているということです。だからこそ、今朝、私は学費や基礎教育にかかる費用を廃止すべきだ、と言ったのです。これは子どもたちにとって大切なことだとユニセフでは訴えていますが、世界銀行もこれに賛成しています。

Q:

 世界中の子どもたちを助けるプロジェクトは、たくさんあるんですか?

A:

 ありますよ。ユニセフは子どもの問題に関しては、リーダー的立場にあります。本部はニューヨークですが、ユニセフで働いている人のほとんどは現場で働いています。158カ国で仕事をしています。この中には開発途上国もありますし、戦争をしている国もあります。ユニセフは、保健、栄養、教育、子どもの保護、水と衛生、そのほかの分野で活動しています。どこの国でも似たような活動をしていますが、それぞれの国で最良の支援を行うために、ある程度、その国に適応する形で支援を行っています。例えば、西・中央アフリカでは、女の子が学校に行けるよう支援しています。モンゴルでは、男女とも学校に入学することはするのですが、男の子が途中退学してしまいます。そこで、モンゴルでは男の子をどうやって学校にとどめるかが問題になります。もう一つの例を挙げれば、保健の問題があります。アフリカのこの地域では、マラリアやポリオがまだ問題となっていますが、ほかの国々ではこれらの病気はもう存在していません。でも、逆に別の病気が問題になっていたりするのです。

Q:

 2015年までに目標を達成するために、具体的にはどんなイニシアチブを立ち上げるつもりですか?

A:

 そんなにたくさんのイニシアチブは必要ないと思いますよ。政府のリーダー、大統領、首相、そのほかたくさんの人たちが子どもとの約束をしてくれています。例えば、2015年までに子どもたち全員を学校に入れることを約束してくれました。また、2015年までに5歳未満児の子どもの死亡率を下げることを約束、同じく2015年までにHIV/エイズに感染している人の数を減らすことを約束してくれました。2015年までにきれいな水と衛生施設を使える人たちの数を増やすことも約束してくれました。ですから、約束や課題はすでにみんな存在しているのです。それを今度は子どもたちのために実施する努力が必要なのです。

Q:

 あなたは1995 年に事務局長になりました。子どものためにしたことを具体的に挙げていただけますか?

A:

 ユニセフ内部が良くなり、子どもたちのために効率的に仕事ができるようになりました。また、世界の子どもの権利を促進する機関として、ユニセフが主導的立場を保つようにがんばりました。ユニセフは国連子ども特別総会を通して重要なことを達成したと思います。というのも、こうしたグローバルな会合は、子どもたちが直面している問題と、その対処の方法について、世界にはっきりとした強いメッセージを送り出すことができるからです。
 残念なのは、1995年以来、世界がとても不安定になり、子どもたちのために積み重ねてきた努力が、戦争や不安のために台無しになっていることです。例えば、西・中央アフリカは、8年前は安定した社会だったのに、今では紛争や危機に直面したり、政情不安に陥っている国がたくさんあります。

 また、戦争ですが、前はケガをしたり殺されたりしたのは兵士でした。それが、今では子どもや女性たちが一番の犠牲者になっています。また、この頃では子どもたち自身が戦いに駆り出されていて、ユニセフは許しがたいことだと考えています。明るい面を見れば、ユニセフは、子どもや若者たちに、自分たちのことに関わる決定事項には、自らも参加すべきだと言ってきました。これはとても素晴らしいことだと思っています。そういう意味でも、みなさんにも、このまま子どもの権利を訴えるための活動を続け、それぞれのコミュニティ、それぞれの国、世界中で活躍を続けてほしいと思っています。私は、世界の政治家やリーダーたちに対して子どもの権利を訴え続けます。ですから、みなさんは、子どもたちのために声を出し続けてください。みなさんのような若者は、未来そのものなのですから。私はブルキナ・ファソには数日滞在するだけです。でも、みなさんは、毎日、ここにいらっしゃるのです。だからこそ、みなさんがこの国の子どもたちのために参加し、声を出して、それを人々に理解してもらうことが大切だと思います。みなさんの国の子どもたちがその権利を享受できるようにね。みなさんは、私を信頼してくださって結構です。私もみなさんのことを信頼しています。

Q:

 今日はお忙しい中、ありがとうございました。あなたが世界中の子どものためにがんばっていることはわかっています。ですから、ブルキナ・ファソでは、私たちが一生懸命に、子どもたちのために頑張りますので、私たちのことを信じてください。

A:

 ありがとうございます。みなさんの努力に感謝いたします。がんばって活動を続けてください。

2003年6月26日
ケント・ページ ユニセフ地域広報官(西・中央アフリカ地域)
ウガドゥグにて

以上

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