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財団法人日本ユニセフ協会

世界の子どもたち

<2003年5月14日掲載>

児童労働 
子どもたちの支援者に生まれ変わったジゼール
<ブラジル>


「児童労働」は一般的には、工場、鉱山、労働搾取工場、そのほか人を雇用する組織で働く子どもたちに使われる言葉です。でも、子どもたちが働いているのはこうした所ばかりではありません。家の中こそ、一番古い労働の場所で、子どもたち、特に女の子は、家事を行いながら、あるいはほかの人たちの家で家事をしながら育つことが多いのです。こうした女の子たちは、虐待に遭うことが多く、教育の機会もほとんど与えられないままになっています。

ジゼールの場合

ストリートチルドレンは、性的搾取の犠牲になることも多い。ジゼールはブラジルのベレムで家事労働者(メイド)として働いていました。初めて都会に出た彼女は、知らない人たちであふれかえる道と騒音に戸惑ったと言います。「ベレムに到着したときはほんとうに何も知りませんでした」とジゼール。「家の女主人にすべてを教わりました。物の名前、パンの買い方。習慣、食べ物、音楽…すべてが村の生活とは違っていました。ご主人の家にはたくさんの物や部屋があり、使い方が分からない電器製品もたくさんありました」ジゼールは、農村部の貧しい家の出です。でも、それが彼女の生まれた場所であり、村の人の顔も、地の利もみんな分かっていました。その故郷を離れることになったのは、家がますます貧しくなり、ついに父親が6人の子どもの面倒を見ることができなくなったからです。

ジゼールが都会に出たのは12歳のときでした。街のほうが仕事も、お金も、教育の機会もふんだんにあるはずだったからです。彼女は大きな家のメイドとして働き始めましたが、給料は悪く、自分自身の生活もままならないほどで、とても村の家族に仕送りはできませんでした。食べ物と言えば、食べ残しばかり。それもプラスチックの皿で食べる毎日でした。寝る場所は、床の上の毛布1枚。毎日、18時間労働。疲れ果ててしまい、学校に行く余裕などありません。運良く学校に行けたとしても、眠ってしまうのがおちでした。毎日家を掃除し、買い物に行き、お昼と夕食の支度をしているだけで1日が終わってしまい、とても宿題には手が回りません。「洗濯もしなければならないので、午後3時までは食事さえできませんでした。ほかにもアイロン掛け、寝る前の皿洗いなど仕事はきりがありません。…だというのに、起きるのは朝5時でした」

若いメイドを性的満足のために搾取するのは、働き先の人たち、そしてそこを訪れる人たちにとっても、当たり前のことのようでした。家族からすれば、売春宿に行くよりもましなことだったのです。ところが、ジゼールは12歳で妊娠してしまいました。そこで家から追い出され、生き延びるために、彼女は売春せざるを得なくなってしまったのです。「男はいろいろな約束をしたけれど、結局、私を捨てたわ」赤ん坊の父親について、ジゼールはこう語ります。ジゼールは売春をしながら3年間、路上生活をしました。その間に、彼女は2度目の妊娠をしたのです。

ユニセフが支援しているNGO「エマウス運動共和国」と連絡をとったとき、ジゼールは15歳でした。その時から彼女の生活は変わりました。職業訓練の一環として、玩具作りの研修を受け、後に、裁縫と刺繍の研修も受けました。そして、再度勉強を始め、ブラジル連邦貯蓄金庫から奨学金を得ました。小学校を終えた彼女は、今度は中等教育を修了するまでがんばるつもりでいます。

このNGOは、ジゼールが子どもと一緒に住める家を探してくれました。家の稼ぎ頭は彼女しかいません。ジゼールは徐々に、NGOとの連携を深め、困難な状況にいる子どもたちを支援するための活動に参加するようになりました。そして、自分と同じような立場の女の子たちを助けているうちに、新しいプロジェクトを立ち上げました。このプロジェクトは、「今の自分くらい素敵に」見せられるよう、「ほかの人たちを支援しよう」というものでした。今やジゼールはこのプロジェクトの主要な指導役となっています。

このプロジェクトは、中途退学した子どもや若者たちを学校に戻し、一度も学校に行ったことのない子どもや若者たちに、学校に行くチャンスを与えようというものです。対象は、主に、路上やマーケット、家などで働いている子どもや若者たちです。その多くが性的暴力の犠牲者で、多くの女の子が12歳までに1人か2人の子どもを産んでいます。

ストリートチルドレンのカウンセリングが行われている。「エマウス運動共和国」は、若者市民プログラムの一環として(ユニセフ・ブラジル事務所が展開しているプログラムの一部)、いくつかのプロジェクトのコーディネーションを担当しています。今まで、プロジェクトが支援した困難な状況にある子どもや若者の数は320人。その多くがジゼールと同じように、農村部のパラから州都ベレムに流入して行った人たちです。このプロジェクトでは、若者や子どもたちが、カポエイラ(武術とダンスを合わせたようなもの)、モダン・ダンス、民族舞踊、プラスチック・アーツ、操り人形作りなどに積極的に参加しています。サッカーやバレーボールなどのスポーツももちろんあります。こうした活動は日々行われ(夜も昼も)、週末も行われています。

このNGOは、現在、職業訓練、レクリエーション、社会活動に重点を置き、子どもや若者の創造性、責任感、自信を伸ばすのに役立っているのです。

2003年5月1日
ブラジル、ベレム<ユニセフ>

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