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ブルンジ:慢性栄養不良とのたたかい【2013年6月17日 ブルンジ発】
ジャクリーヌ・バングリナマさんは、子どもたちの様子から、子どもたちがひどい空腹であることをわかっています。2ヶ月の娘はおっぱいから離れず、2歳の娘と4歳の娘は1日1度の食事のふかし芋をとりあってけんかをし、7歳の息子は空腹のまま学校に通っています。 ■猛威をふるう“慢性栄養不良”医学雑誌『ランセット』で、5歳未満児死亡数のうちの、約310万人が栄養に起因する病気で亡くなっているとの最新の研究が発表されました。アフリカの多くの国では、栄養不良のうち、特に慢性栄養不良と発育阻害の問題は、ほとんど理解されていません。深刻な衰弱や栄養性浮腫といった症状が出る急性栄養不良とは違い、慢性栄養不良は身体や知能の発達に、長期的に影響を与えます。 ■5歳未満の子どもの2人に1人は慢性栄養不良アフリカ東部に位置するブルンジ。わずかな国土に800万人以上が暮らしており、人口密度が高く、人口の90%が農村部に住んでいます。農家が点在する集落を除き、ブルンジは2012年の世界飢餓指数で120カ国中、最も数値が高い国のひとつでした。5歳未満の子どもの58%が慢性栄養不良と報告されており、この数値も世界で最も高い数値のひとつです。 ジャクリーヌさんのような状況は近くのいたるところで見られます。とても質素な家で自作農家として生計をたてています。 ■慢性栄養不良が引き起こす社会経済的負担
慢性栄養不良が及ぼす社会経済的負担は甚大です。ブルンジは世界的に見ても最も貧困率が高く、国民の8割が1.25米ドル以下で生活しているといわれ、国連開発計画(UNDP)による人間開発指数(HDI)は、187カ国中178位です。 ブルンジ共和国 第二副大統領 デオーギデ ルレマ氏は「栄養不良が引き起こす経済的負担は年間1億2000万米ドルにものぼるのです。もし、この金額を経済成長や持続的な開発に関わる分野に投資できれば、国がもっと発展できるのです」と、栄養不良がもたらす影響の大きさを語りました。 ■栄養不良の削減のための横断的な取り組み2012年7月、ブルンジは「スケールアップ栄養イニシアティブ(SUN)」に参加し、大きな一歩を踏み出しました。このイニシアティブは、世界の栄養問題に取り組むために、民間、省庁、国連機関が共同で取り組んでいるもので、ブルンジは、2016年までに慢性栄養不良の割合を58%から48%まで削減を目指します。 ヨハネス・ウェディング ユニセフ・ブルンジ事務所代表は、より統合された取り組みを行うこと、高官レベルでの政治的課題として取り組む必要性を訴えてきました。「社会全体が、栄養問題は深刻な問題であること、ともに取り組む必要があることに気づき始めました。成果を出すには、共同で取り組まなければなりません。省庁や団体、教会、地域の組織などが共に取り組み、家庭へと支援を届ける必要があるのです。」 ■有効な地域主導の取り組み
内戦が終わった2005年以降、ユニセフの支援のもと、ブルンジ保健省は地域主導で急性栄養不良への治療を確立することに取り組んできました。啓発運動と栄養価の高い治療食の導入の成果があって急性栄養不良の罹患率は6%にまで減少しました。同様の取り組みを、慢性栄養不良に実施する予定です。 ソフィー・レオナルド ユニセフ・ブルンジ事務所 保健・栄養部チーフは「多くの母親が急性栄養不良の検査に子どもたちを連れてきています。この機会に、子どもの育て方や乳幼児の発育といったことを母親に教えることもできますし、収入を得るような活動や初歩的な農作業を指導することもできます。いろいろな活動の“入り口”として活用できるのです」と述べました。栄養問題が“静かな緊急事態”と呼ばれ、栄養のみの問題と捉えられていた状況は変化しており、いまや社会に広範な影響を及ぼす緊急の課題と位置づけられています。 ■12日間の研修が「希望」を生み出す栄養状況の検査を受けたところ、ジャクリーヌさんの子どもたちは低体重で、年齢に対して身体が小さいことがわかりました。ジャクリーヌさんは地域で行われている、健康と指導に関する12日間の研修を紹介され、栄養価の高い食事や衛生習慣、そして家族計画などについて学んでいます。地域で選ばれたボランティアが先生です。 ジャクリーヌさんは、研修を受けただけで、子どもたちの食事の問題が解決するわけではないことを知っています。しかし、地域からのサポートを受けられるようになり、研修で正しい知識を学んだことで、子どもたちが健康になれると希望を抱いています。
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